つらい生理痛が楽になると噂の「IUS(以下一般名称:ミレーナ)」。セックスはできる? 相手に気づかれない? 何歳から何歳まで使っていいの? さまざまな疑問に、婦人科医の稲葉可奈子先生が回答してくださいました。
産婦人科医
●産婦人科専門医・医学博士。京都大学医学部卒業、東京大学大学院博士課程修了。東京大学医学部附属病院、三井記念病院、関東中央病院などを経て、2024年7月、東急プラザ渋谷内に「Inaba Clinic」(東京都渋谷区)を開業。産婦人科診療の傍ら、メディアや公演、SNSなどを通して、生きていく上で必要な知識や正確な医療情報の発信を行う。著書に『シン・働き方 ~女性活躍の処方箋~』(きずな出版)など。私生活では、双子含む四児の母。
みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト 代表
みんリプ!みんなで知ろうSRHR 共同代表
メディカル・フェムテック・コンソーシアム 副理事長
Live News α・Yahoo!・NewsPicks公式コメンテーター
Q1.ミレーナを入れたら誰かに気づかれる?
A1.自分から言わなければ、誰にも知られません。
稲葉先生:ミレーナを入れる子宮の入り口(子宮口)は腟の一番よりさらに奥にあり、ご本人でも簡単に触れる場所ではありません。その中にある小さなミレーナに、他人が見たり触れたりして気づくことは不可能です。ミレーナの下部には、抜くときのために柔らかい紐がついているのですが、タンポンの紐のように腟の外まで長く垂れ下がっているわけではないので、当然、下着や水着からはみ出してしまうなんてこともありません。
Q2.ミレーナを入れたままセックスはできる?
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A2.もちろんできます!
稲葉先生:子宮内膜を薄くしたり、排卵を抑制することができるので避妊具としても有能ですが、自分から伝えなければ、性交渉の際に相手に気づかれてしまうということはありません。万が一、パートナーの方が性行為の際に違和感を訴えていて......というような心配事がありましたら、婦人科へ相談してください。
Q3.ミレーナが外れたらわかる?
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A3.自分では気づかないかも。半年に一度は婦人科で確認を。
稲葉先生:普通に日常生活を送っていてミレーナが外れてしまうということはほとんどありません。入れた直後は、少し違和感を感じたりすることがあっても、ほとんどの方は一度入れてしまえば数カ月後にはその存在自体を忘れてしまうくらいなじんでいきます。
ただ、稀なことではありますが、例えば子宮筋腫などがあって子宮そのものが肥大化していてミレーナが抜けてしまった、経血量が多すぎていつの間にかミレーナが押し出されてしまったというケースもありますので、半年に一度くらいを目安に婦人科で経過観察はしていただきたいです。(経過観察の期間はかかりつけの婦人科の指示に従ってください)。
Q4.ミレーナをつけると生理が止まるって本当?
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A4.「なくなる、あるいは軽くなる」という理解が正しいです。
稲葉先生:ミレーナのように女性ホルモンのうちの片方であるプロゲステロン(黄体ホルモン)のみを含む薬は、2種類のホルモンを含むピルと異なり、排卵が完全に抑えられる方と、排卵が継続する方、どちらもいらっしゃるんです。なので、ミレーナを入れたら必ず生理が止まるというわけではなく、「すごく軽くなったけど毎月来る」「数カ月に一回になったけどたまに来ることがある」「もう全然来ない」というようにいろいろなパターンがあり、こればかりは実際に入れてみないとわかりません。
ミレーナを入れた直後は、装着の刺激でしばらく少量の不正出血が続きます。これは皆さんに共通することで、早い方だと数週間〜長くても数カ月経つと自然と治まります。
Q5.何歳から何歳までミレーナを使用できる?
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A5.生理が来ている方であれば何歳でも利用できます。
稲葉先生:月経困難症などの症状を抱えているのであれば、初潮から閉経まで、何歳であってもトライできます! ただ、ミレーナは婦人科の内診台に乗って器具を子宮まで挿入してつけるので、若い方で婦人科の受診が初めてだと、かなり抵抗感はあるかもしれません。
同様に年齢の上限もなく、5年ごとにミレーナの交換を繰り返し、自然と閉経するまで使用を継続することも可能です。そもそも生理は妊娠するためにあるもので、「絶対にないといけないもの」ではないので、今妊娠を望んでいる状態でなければ、自分の意思でコントロールすることに問題はありません。重い生理痛に悩む若い方だけでなく、もう妊娠を望んでいない、更年期の症状がつらいなど、上の世代の方にもおすすめです。
ミレーナを入れると生理が軽減したり止まったりしますが、ミレーナを抜けば、排卵が止まっていた方でも再開して妊娠が可能な状態になりますので、将来的に妊娠の可能性はあるけど今じゃない、という方でももちろん大丈夫!
「避妊リング」という初期の名称から、誤解や偏見を招くことがあるかもしれませんが、毎月の生理に何らかの悩みを抱えていたり、今、特に妊娠を望んでいる状態でなかったりする女性にはおすすめできる治療のひとつです。ただ、症状や病態によってはミレーナではない治療法の方がよい場合もありますので、まずはお気軽に産婦人科へ相談してください。
構成・取材・文/月島華子