「生理がいつ来るかわからず不安…」「生理がずっと乱れていて、放っておいてはいけないと知りつつそのままに…」など、月経不順の不安を抱えている女性たちがたくさんいることが、読者アンケートからわかってきました。そこで、「婦人科を受診すべき月経不順は?」「どんな病気の可能性がある?」など、気になるポイントを3回にわたって産婦人科医の池田裕美枝先生に伺います。
*2021年2月に集英社女性誌10誌が読者約1万4000人を対象に実施したアンケート調査。

池田裕美枝先生のイラストによる、連載第27回の扉

池田裕美枝(いけだゆみえ)先生

京都大学医学部附属病院産科婦人科 産婦人科医

池田裕美枝(いけだゆみえ)先生

京都大学医学部卒業。市立舞鶴市民病院、洛和会音羽病院にて総合内科研修後、産婦人科に転向。現在、京都大学医学部附属病院の女性ヘルスケア外来ほかを担当しつつ、同大学大学院博士課程にて、女性の社会的孤立や月経前症候群による社会的インパクトなどを研究。日本産科婦人科学会専門医、日本プライマリケア連合学会認定医ほか。NPO法人女性医療ネットワーク副理事長。京都大学リプロダクティブヘルス&ライツライトユニット代表。ソーシャルワークプラットフォームKYOTO SCOPE事務局代表。一児の母。

月経不順とは? 正常な月経とどう違う?

増田:集英社女性誌による読者アンケートでは、月経不順の不安について、たくさんの声が寄せられました。

「月経不順でいつ来るかわからない、いつもハラハラしています。不安です」
「月経が始まってから8年がたちますが、まだ周期が定まらず、いつ来るかわからないので、ナプキンを持参していないバイト時など不安でしかたがない」
「月経の量や周期が正常なのかがよくわかりません。定期的に来ていると思ったら、そういえばしばらく来ていないなと思うこともあります」
「月経が1週間早まったり、遅くなったり、バラバラです。1カ月たっていないのに、次の月経が来たりすることもあります」
「月経不順で、1カ月以上、月経が来ないときがよくあります」
「月経が2カ月に一度、3日ほどで終わってしまいます。早く閉経してしまいそうで不安です」

こうした読者の声を見ると、月経不順とひと口に言ってもさまざまな悩みがあることがわかります。そもそも月経不順とは、どんな状態を指すのでしょう。どこまでが正常な月経で、どこからが不順なのでしょうか?

池田先生:私も若い頃に月経不順を経験していますので、皆さんが不安になる気持ちはとてもよくわかります。

月経不順とは、ご自身が予測しているとおりに月経が来ないことをいいます。日本産科婦人科学会が定めている正常な月経の定義は、下の表のとおりです。この範囲にある月経なら、卵巣がリズムよく排卵していると考えてよい、ということです。

【正常な月経とは】
月経周期日数* 25~38日
前月との周期変動 6日以内
月経期間 3~7日以内 
*月経周期日数とは、月経開始日から数えて、次回の月経開始前日までの日数をいいます。

池田先生「正常な月経」からはずれた場合でも、2周期にわたって異常が続かず、もとに戻る場合には問題ありません。卵巣は機械ではないので、時には理由なくリズムをくずすこともあるからです。

ただ、月経が遅れる原因として妊娠の可能性がある場合は、まず妊娠検査薬でチェックしてくださいね。また、定期的に子宮頸がん検診をしていなくて、性器からの出血が頻繁に起こるという場合には、早めに婦人科を受診してください。

月経不順にはいろいろな種類がある!

増田:月経の間隔が長く空いている場合だけでなく、月経が頻繁に来る場合も月経不順なんですよね。月経不順にも、いろいろな種類があるのですね。

池田先生:そうですね。月経が始まった日から次の月経までが24日以下で、1カ月に何回も出血しているものを「頻発月経(ひんぱつげっけい)、月経周期が39日以上空いている、つまり、月経がめったに来ないタイプの月経を「稀発月経(きはつげっけい)といいます。ほかに、月経が8日以上ダラダラ続く「過長月経(かちょうげっけい)もあります。



【女性ホルモンの変動と月経周期】

月経周期のグラフ

さまざまな月経不順、その原因は?

増田:「頻発月経」や「過長月経」のような、月経が多いタイプの月経不順と、「稀発月経」のような月経が少ないタイプの月経不順では、心配すべき原因が異なることがありますか?

池田先生「正常の基準より月経が多い場合」には、まず、子宮体がんや子宮頸がん、ポリープなどの病気がないかをまず確かめる必要があります。また、「正常の基準より月経が少ない場合」は、妊娠の可能性を否定できたら、今度は女性ホルモンが少なすぎないかを確認する必要があります。

以下に、「正常の基準より月経が多い場合」と「正常の基準より月経が少ない場合」の考えられる原因についてまとめてみました。

【頻発月経や過長月経など、正常より月経が多い場合】
「貧血」になっていないかを調べるために、早めに婦人科を受診しましょう。体を巡る赤血球が足りないことを貧血といいます。正常範囲の月経でも、女性は血液を毎月失っている分、貧血になりやすいのです。正常より出血の日数が多いのであれば、なおさらです。貧血は、頭痛や動悸、疲れやすさの原因になり、ひどい場合は心不全を起こします。

正常よりも月経の回数が多かったり期間が長い場合は、まず、採血をして貧血チェックをします。最近では、貧血にまでなっていなくても、鉄不足であることがメンタル不調に影響することがわかっています。あわせてフェリチン値(体の貯蔵鉄の値)もチェックしてもらうようにしましょう。

私たちは、性器出血があると「月経かな?」と思いますが、腟から出る出血は、子宮体部から出ていることもあれば、子宮の入り口や腟のびらんや傷から出ることもあります。正常よりも多い出血があるときには、こういったなんらかの病変からの出血ではないかどうかをチェックすることも大切です。婦人科での検査で、病変からの出血ではないことが確認できたら、「排卵障害」という診断になるかもしれません。

リモート取材中の池田先生

京都在住の池田先生。リモートで画面越しにインタビューさせていただきました。

【稀発月経など、正常より月経が少ない場合】
月経周期が2〜3カ月以上空く場合です。もし性交渉があって月経がなかなか来ない、という場合には、躊躇せずに市販の妊娠検査薬を使ってください。異所性妊娠(子宮の外に着床してしまうこと)という場合もあり、気づくのが遅れると命にかかわることがあるためです。

妊娠していないことが確認できたら、婦人科で月経不順の原因を調べることをおすすめします。多くは「排卵障害」が疑われると思います。「排卵障害」の中でも、エストロゲン分泌が少ないタイプの月経不順だと、将来的に骨粗鬆症になりやすくなってしまうので、治療をすすめられることが多いと思います。


増田:「正常より月経が多い場合」と「正常より月経が少ない場合」、どちらも「排卵障害」と診断されることがあるのですね?

池田先生:そうなんです。月経回数が多くても少なくても、「排卵障害」と診断されることがあります。それは、月経(出血)が起きていれば必ず排卵しているとは限らないからなんです。「排卵障害」とは、卵巣が正常に働かなくなり、月1回の排卵が規則的に起こらない状態のことをいいます。排卵せず、月経が何度も来てしまったり、全然起こらなかったり、といろいろな状態がありえます。

そもそも、排卵したときに月経が起こるのは、排卵させるために卵巣から出ている2種類の女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)に、子宮が反応するからです。きちんと排卵していれば、2種類の女性ホルモンがリズムよく分泌されて、妊娠に備えて子宮内膜が分厚くなります。しかし妊娠しないと、その子宮内膜が全部剥がれてリセットされます。これが月経です。

でも、きちんと排卵ができていないと、2種類の女性ホルモンのリズムがくずれて、子宮内膜が中途半端に壊れてダラダラ出血したり、子宮内膜が本来のように分厚くなれなくて出血が起こらなかったりするのです。これが排卵障害があるときの症状です。

様子を見ていい月経不順と、放置してはいけない月経不順

増田:月経不順の人は、子宮体がんや子宮頸がん、ポリープなどの病気や貧血の可能性、女性ホルモンのリズムがくずれる排卵障害の可能性など 、背後に隠れた病気があれこれ考えられるので、迷わずに婦人科を受診したほうがいいということですね。ちなみに、様子を見ていい月経不順と、特に放っておいてはいけない月経不順について教えてください。

池田先生:月経が始まってまだ数年以内の10代のうちは、月経周期が安定していない人がほとんどです。初経から3年くらいは多少不順でも様子を見てもいいと思います。でも、貧血が心配な方や、出血を止めたい方は、ぜひ気軽に婦人科を受診してください。性交渉の経験のない方に、無理に内診をすることはありません。

初経から3年以上たっている人なら、「1回も正常な月経周期で月経が来ない」「ここ数カ月、月経がない」「月経不順に当てはまるような月経周期が3回続く」などがあったら、婦人科を受診してください。

私たち産婦人科医が月経不順でまず心配するのは、年齢にもよりますが、子宮体がんや子宮頸がん、ポリープや感染症など、病変による出血がないかどうかです。2年に1回の子宮がん検診を受けていない方で、月経不順がある場合にはぜひ受診していただきたいと思います。

月経不順で婦人科を受信する目安は

池田先生:月経不順は、健康な女性でも起こることがあるものなので、軽く考えてしまう人もいますが、お話ししてきたように思わぬ病気が見つかることもあります。月経不順を長い間、放置しないこと。これは、皆さんの健康のためにぜひお願いしたいと思います。婦人科医は女性の健康のパートナーですので、気楽に相談にいらしてください。

増田:ありがとうございました。次回は、生活の中でできる月経不順の対処法について、引き続き、池田先生に教えていただきます。

増田美加

女性医療ジャーナリスト

増田美加

35年にわたり、女性の医療、ヘルスケアを取材。エビデンスに基づいた健康情報&患者視点に立った医療情報について執筆、講演を行う。著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』ほか

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