デリケートゾーン専用アイテムの普及とともに、ますます関心が高まっているデリケートゾーン=腟まわり(外陰部)のケア。最近は「デリケートゾーン」に代わり、「フェムゾーン」「フェムケア」というスマートな言葉も広がってきました。一足先に習慣化した人は、さまざまな効果を感じているようです。

でも、腟ケアって実際なんのためにするの? どんなふうにするのが正しい?…など、気になるポイントもいっぱい。そこで、「腟ケア」の意義や「腟マッサージ」の正しいやり方、人には聞けない腟ケアに関する疑問、そして最近大注目の「腟洗浄器」の使い方まで、フェムケアの極意を産婦人科医の八田真理子先生に伺いました!

八田真理子 先生

産婦人科医

八田真理子 先生

幅広い世代の女性の診療・カウンセリングを行う地域密着型クリニック「聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田」院長。著書に『思春期女子のからだと心 Q&A 資料ダウンロード付き』(労働教育センター)、『産婦人科医が教える オトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』(アスコム)ほか。

腟ケアは、自分の外陰部を見て触ることから!

「最近、腟ケアや腟マッサージという言葉をよく聞きますが、これは必ずしも腟そのものへのケアというわけではなく、腟を含む“外陰部”のケアのこと。いわゆるデリケートゾーン、フェムゾーンは、毎日触って優しくケアすることで、見た目も機能も変わり、いい影響がたくさんあるんですよ」と八田真理子先生。

外来で毎日多くの患者さんのフェムゾーンを診ている八田先生いわく、最近はVIO脱毛や腟ケアをしている人がとても増えているそう。その一方で、「自分の外陰部を見たことがない」という女性もまだまだ少なくないとか…。

自分のデリケートゾーンがどういう状態なのかを知るのは大切なこと。「恥ずかしくて見られない…」「これまで見たことがない」という人も、この機会に、手鏡などを足もとに置いて、フェムゾーンがどうなっているのか細部まで見てみましょう。

外陰部の名称説明イラスト

外陰部(フェムゾーン)の構造

外陰部(がいいんぶ)】
女性器のうち、外側に見えている部分の総称。デリケートゾーン、最近ではフェムゾーンとも呼ばれます。

恥丘(ちきゅう)】
恥骨の上側(お腹側)のエリアです。皮下脂肪が付いてふっくらし、通常は毛が生えている部分を指します。

大陰唇(だいいんしん)】
小陰唇を左右から包む柔らかくふくらんだ皮膚。陰毛が生えているのが普通です。汗腺や皮脂腺があるため、ニオイのもとになりやすい部分。

小陰唇(しょういんしん)】
大陰唇の内側にあるヒダ状になった皮膚のこと。弾力性、伸縮性があり、内側は粘膜。尿道口や腟口を覆って保護しています。性的に興奮すると少しだけ硬くなります。小陰唇の形や長さ、シワ、色などは人によって違い、左右非対称であるのも普通。

陰核(いんかく)】
クリトリスとも呼ばれ、左右の小陰唇が交わる部分に位置する突起のこと。普段は包皮に包まれています。血管と神経が集まっていて、性的興奮に反応して勃起します。

尿道口(にょうどうこう)】
小陰唇の内側にある、尿が出る穴。膀胱から続く尿道の出口のこと。排尿時以外は尿道括約筋の働きで閉じていて、尿が漏れない仕組み。「尿道」と言われたりしますが、正しくは「尿道口」です。

腟口(ちつこう)】
文字どおり腟の入り口のことで、尿道口の真下に位置します。一般的に「腟」と呼ばれていますが、正しくは「腟口」。腟口から続く筒状の内部が「腟」で、いちばん奥は子宮につながっています。月経のときに経血の通り道に、出産時には産道になります。

会陰(えいん)】
腟口と肛門のあいだの部分を指します。皮膚は薄く、出産時にはここが伸び広がりますが、時には切開されることも。出産前後には「会陰マッサージ」が推奨されていますが、日常的にも血流を促すためにマッサージしたほうがよい場所。このエリアは人によって広さにかなり差があります。

肛門(こうもん)】
正確には外陰部ではありませんが、フェムゾーンという場合にはここまでを含みます。

腟ケアって、誰にでも必要なもの?

デリケートゾーンを洗う女性イラスト

フェムゾーンについて詳しく理解したところで、では、ここをケアするとどんないいことがあるのでしょうか?

フェムゾーンは、顔と同じだと思いましょう。きちんと見て触って、毎日その状態を確認しながら清潔に洗う。そして質のよいケアアイテムを使って保湿したりマッサージしたり…。大切にケアするほど、中からうるおい、弾力が生まれ、見た目もきれいになります。

専用ソープで優しく洗い、オイルなどでマッサージすることによって、皮膚や粘膜にうるおいを与えて血流をよくするのがフェムゾーンのケア、つまり『腟ケア』です。ナプキンやおりものシートによるムレやかぶれ、かゆみ、ムズムズ、気になるニオイなども、日常的にここをお手入れすることで改善されると思います。

外陰部ばかりでなく、マッサージの刺激によって骨盤底筋群や腟の中まで活性化されるので、生理痛や生理不順、おりものの異常なども改善されやすくなりますね。腟内の善玉菌であるデーデルライン桿菌が増え、性感染症リスクを下げる効果も期待できるかもしれません。

出産経験がある人は、出産時に腟が伸びたり骨盤底筋が緩んだために尿もれすることが多いのですが、骨盤底筋に刺激が与えられて腟の緩みや尿もれの改善に。また、閉経前後に乾燥、かゆみ、黒ずみ、性交痛がある人には、保湿や腟マッサージといった腟ケアが効果的です。腟ケアをしつづけたことで、冷えが治ったという人も少なくありません。骨盤の下側から血行をよくすることが、体全体のめぐりをよくすることにつながるんです」(八田先生)

なるほど! 出産経験者や更年期世代だけでなく、生理のトラブルや冷えに悩んでいる人にも腟ケアは有効なんですね。 

腟マッサージの基本は正しく洗うことから

注目が集まるばかりの「腟ケア」や「腟マッサージ」。産婦人科医の八田真理子先生は「大切にケアするほど、うるおい、弾力が生まれ、見た目にもきれいになります」といいます。例えばその効果はというと…
●ナプキンやおりものシートによるムレやかぶれ、かゆみ、ムズムズ、気になるニオイの改善
●生理痛や生理不順、おりものの異常などの改善、性感染症リスクの軽減
●腟の緩みや尿もれの改善
●閉経前後の乾燥、かゆみ、黒ずみ、性交痛の緩和

こんなにも多くの女性特有のトラブルが改善すると聞けば、ぜひやってみなくては! そこで、具体的な腟ケア&腟マッサージの方法を八田先生に教えていただきました。

産婦人科の外来で、幅広い年齢層のフェムゾーンと日々向き合っている八田先生。最近の傾向は、ケアしている人といない人、フェムゾーンが健康な人と案外そうではない人など、同じ年代でも個人差が大きいことだそう。

「おりものシートをずっとつけていたり、きついガードルやジーンズが食い込んだりして、腟まわりが真っ赤になっている人がいます。また、締めつけの強いスパッツで運動している人の中には、フェムゾーンが蒸れたり擦れたりしてニオイやかゆみを感じていることも。

また、小陰唇などに恥垢という垢がたまっている人も少なくありません。これらがニオイやかゆみなどトラブルの原因になっているのに、市販のクリームなどを使い続けて悪化させている人もいます。

いずれの場合も、腟まわりにダメージを与えないように気を配ったり、ケアする習慣がないんですね。毎日きちんと見ながら洗って、優しくマッサージしながら保湿する。それだけでいいんです。今はデリケートゾーン専用のソープやオイルがたくさん出ていますね。顔やボディケアと同じように、気に入ったものを探してみてください」

【デリケートゾーンの洗い方】大切な部位だから、優しくなで洗い

●デリケートゾーン専用ソープを用意!
まずは、入浴時に使うデリケートゾーン専用ソープを購入しましょう。ソープにもオイルタイプや泡で出てくるものなどいろいろありますが、弱酸性タイプのものであればOKです。

●手指の腹で「前から後ろ」に優しくなで洗い
ソープを手でよく泡立てたら、そろえた指の腹を使って優しく洗います。基本は「前から後ろへ」。これは肛門に付いた大腸菌などが腟に入るのを防ぐため。気をつけたいのは、爪を立てたり強くこすらないこと。顔やボディと同じく「泡で洗う」イメージです。小陰唇は垢がたまりやすいので、外側・と内側をもれなく洗いましょう。

●拭くときもゴシゴシこすらない
フェムゾーンをきれいに洗ったら、清潔なタオルで軽く押さえて水分を拭き取ります。ゴシゴシこすったりはしないこと。顔の皮膚と同じく、優しく扱いましょう。

●腟の中は洗わなくてOK!
ここまできて「あれ? 腟内は洗わなくてもいいの?」と思った人もいるかもしれません。八田先生、腟そのものはどうすべき?

腟の内部には腟内フローラと呼ばれる細菌叢があり、常在菌である乳酸桿菌(にゅうさんかんきん)が腟内を守ってくれています。これが腟の自浄作用です。ある程度清潔に保つことは大事ですが、せっかくの作用を無駄にしないためにも、腟内は基本的には洗わなくてOKです。特に20代30代では、腟に指を入れることができない人も意外と多いので、無理に洗わなくてかまいません。どうしてもニオイが気になる場合や、おりものや生理が終わったあと腟内に残った経血を流したい場合は、軽く指を入れて洗ってもかまいませんが、過度に洗いすぎないように注意して。また、生理中は腟の自浄作用が落ちるので、腟内を洗ったりマッサージするのは避けましょう」

初心者でもできる腟マッサージ、具体的なやり方は?

腟マッサージをする女性イラスト

フェムゾーンのマッサージをするときは脚をしっかり開いて。立っている場合は片足を台に載せるのもおすすめ!

八田先生が今回、基本のマッサージとして教えてくださったのは、腟そのものではなく、腟のまわりのフェムゾーン、つまり外陰部のマッサージ。「20代30代であればうるおいも柔軟性も十分ですので、無理に腟内に指を入れてマッサージする必要はないと思います。更年期になって女性ホルモンが減り、腟の乾燥やかゆみ、性交痛などが出てきたら、腟の中まで保湿したりマッサージするなどのケアをおすすめします。その場合は週に2~3回を目安に」

●専用のオイルやクリーム、ジェルを使用
「腟マッサージ」は入浴時に体を洗ったあと、お風呂場や脱衣場で続けて行うのがスムーズ。デリケートゾーン専用のオイルやクリーム、ジェルなどを使って、外陰部全体をやさしくマッサージしながら保湿するイメージで行いましょう。さっぱりしたジェルやローションだとすぐに浸透してしまうので、オイルやクリームのほうがマッサージ向き。

●3本の指の腹で「大陰唇→小陰唇→会陰→肛門まわり」をマッサージ
用意したオイルやクリームを、利き手の人差し指・中指・薬指に取り、指の腹を使って次の要領でマッサージしていきます。
1)大陰唇を前から後ろへ向かって、優しくなでるように。
2)小陰唇は、指の腹でそっとつまむようにして、内側と外側をもれなく。
3)会陰をUの字になでながら、血流を促すように何度かマッサージ。
4)最後は肛門のまわり。軽くもみほぐす要領で。

フェムゾーンマッサージの手順

「腟のまわりだけマッサージするなら、そんなに難しくはないですよね? 毎日続ければ、この程度の簡単なマッサージでも十分に効果があります。顔のお肌と同じで、皮膚にうるおいと柔らかさ、弾力が加わるのはもちろん、かゆみやニオイなども激減します。腟の緩みが改善し、尿もれの予防にも。また、血行がよくなるので生理痛や血行不良から来る冷えなども改善するでしょう。

何より、顔やボディと同じように、毎日腟まわりを見て触って、フェムゾーンと向き合うことが大切。それは女性としての自分の人生を見つめることにもつながりますし、年齢を重ねても生き生きと輝くためにぜひ必要なことだと私は考えています」

忙しい毎日を過ごし、ついつい自分のフェムゾーンをおざなりにしている人も多いはず。少しでもゆっくり腟ケア、腟マッサージをする時間を持ってみませんか?

今だから知りたい「腟マッサージ・腟ケア」Q&A

腟ケア、腟マッサージなどともいわれる「フェムゾーン」(腟まわり)のケア。女性特有のさまざまな不調改善にも役立ち、世代を問わず必要なことはわかったけれど、すぐに始められる人、少し躊躇してしまう人と、年齢や環境によってもまちまちです。なかなか始められない人からの質問や素朴な疑問について、産婦人科医の八田真理子先生に回答いただきました!

Q. 家で一人になれる場所がない。どこでしたらいいですか?

お風呂の中や脱衣場、洗面所でするのはどうでしょう? お風呂から出るとき、軽く体を拭いてから保湿&マッサージを行うのがよいと思います。

Q. そもそもアソコを見たり触ったりするのが恥ずかしいのですが…

日本では古くから外陰部を“秘部”などと呼んでひた隠すべき場所のようにされてきたために、女性も自分のフェムゾーンを見たり触ったりはおろか、口に出すことさえ遠慮がちでした。そこから「デリケートゾーン」なんていう和製英語も作られてしまったんです。

そうした歴史的な影響もあって、スキンケアもメイクもすごく丁寧なのに、デリケートゾーンだけほったらかしな人が少なくありません。パートナーには見せているのに(あるいは、将来見せるかもしれないのに)、自分が見ないのはおかしいと思いませんか? まずは"自分の体を大切にすること"="自分の体に意識を向け、知識を持つ"ために、フェムゾーンをよく観察しましょう。そうすれば、徐々に恥ずかしさや抵抗感は薄まっていくと思いますよ。

フェムケアに悩んでいる女性イラスト

Q. ケアしているつもりなのにニオイが気になる!

外陰部を清潔に保ってケアしているのに気になるのは、おりもののニオイかもしれません。正常なおりものは酸っぱいニオイがしますが、生臭いような、いつもと違うニオイがする場合は、カンジダ腟炎や細菌性腟症の可能性もあります。早めに婦人科を受診してください。

Q. ムダ毛が多くて、うまく外陰部の肌に触れられません。VIO脱毛すべき?

VIOの永久脱毛は、私は必ずしも推奨はしていません。特にIゾーンをツルツルにするとかえって擦れや下着の張り付きが気になることも。人によって好き嫌いもあるでしょう。もしフェムゾーンの毛が気になる場合は、短くカットしてみては。ハサミが難しいようなら、VIO専用で安全な電動シェーバーもあります。トリミング用アタッチメント付きのものがあるので、初心者にもおすすめです。

Q. 触るとすぐ反応してしまうのが嫌なのですが…

それは正常なこと、まったくおかしいことではありません。感受性があるのはホルモンがめぐっていて健康な証拠。女性としての魅力でもありますから、むしろ自信を持ってください。

Q. 腟マッサージで性交痛が改善するって本当?

性交痛のほとんどは、腟のうるおい不足が原因といわれます。特に、女性ホルモンが急激に減少する更年期には、腟の乾燥や萎縮が起こるので、性交痛を感じる人が増えてきます。こうした腟の乾燥や委縮は、まさに腟マッサージで改善することが期待できます。この場合の腟マッサージは、オイルを使って腟の内側からまわりにかけてゆっくり揉みほぐすようにするのがポイントです。

Q. 腟内に指を入れるなんてとても無理!

性交経験のない人や、20代30代であれば腟のうるおいや柔軟性も十分なので、無理に腟内に指を入れてケアする必要はありません。ただ、40歳以上であれば、骨盤底筋のケアのために、腟ケアとともに「腟トレ」もしてほしいですね。今はシリコンや柔らかい素材の腟トレグッズも販売されているので、無理のない範囲でチャレンジしてください。

腟トレは、骨盤底筋をしなやかに使えるようにするのが目的で、腟口、尿道口、肛門を締めたり緩めたりしてトレーニングします。これがちゃんとできているかを確認するには、腟内に人差し指の第2関節まで入れ「締まったり緩めたり」を自分で感じてみるのがいちばんよい方法。まずは、お風呂の中で、リラックスしながら少しずつ指を入れていく練習をしてみましょう。

お風呂で浴槽に入り、指を膣に入れてトレーニング

入浴中などに、人差し指の第2関節ぐらいまでを腟内に入れ、腟口がぎゅーっとお腹のほうに引き込まれる感じ(締める)、逆に押し出すように緩める感じを確かめてみましょう。

Q. 小陰唇を触りすぎると形が変になったり、大きくなったりしませんか?

なりません。性交時や性的に興奮したときに一時的に肥大することはありますが、すぐに元に戻ります。また、小陰唇の形や大きさは人によりさまざま。左右も非対称なのが普通です。小陰唇が小さくて閉じているほうがいいという説は、ファンタジーが好きな男性の勝手な思い込み。間違った迷信です。小陰唇のヒダは性交時にペニスを包み込む役割も果たすので、大きなヒダはむしろ魅力的だと思いますよ。

Q. 腟マッサージで外陰部の赤みや黒ずみも治りますか?

フェムゾーンが多少赤黒くなるのは、女性ホルモンの分泌による成熟した女性の証だと思います。黒ずみは、もともと持っているメラニン色素の量にも影響されます。また、下着のこすれや洗いすぎの摩擦による色素沈着には、デリケートゾーン用の黒ずみケアクリームなどを使うこともおすすめです。皮膚のターンオーバーの乱れによっても起こる黒ずみは、お手入れ不足ともいえるからです。保湿とマッサージで、外陰部のターンオーバーを促しましょう。

「腟洗浄で生理が早く終わる」ってホント?

腟ケアや腟マッサージと並んで、最近、注目を集めているのが「腟洗浄」「腟内洗浄」というワード。ドラッグストアでも腟を洗浄するアイテムがいろいろ並んでいます。「生理が早く終わる」「ニオイケアにいい」という声もある一方で、何度も使っていいの? デメリットはないの?…などなど、腟洗浄器には気になることもたくさん。産婦人科医の八田真理子先生に、腟洗浄器の正しい使い方や注意点を伺いました。

腟洗浄器のしくみ

おりものや腟内に残った経血などを、弱酸性のジェルなどを挿入することで洗い流すのが腟洗浄器のしくみ。防腐剤や香料などを使わない、乳酸菌を配合して腟内環境を整えるなど、商品によりさまざまな特徴があります。

「腟洗浄」とは文字通り、腟の中を洗うこと。市販の腟内洗浄アイテムは、おりものやデリケートゾーンのにおいが気になるとき、性交の前後に腟を清潔を保つために使うようすすめているものが多いようです。そもそも、腟内はこうした専用アイテムで洗浄するべきなのでしょうか?

「腟には自浄作用(自ら清浄する能力)があります。常在菌である乳酸桿菌(にゅうさんかんきん)が、ほかの細菌が繁殖しないよう腟の内部を守ってくれているんです。この大切な自浄作用を無駄にしないためにも、腟内は基本的には洗わなくていいと思います。

どうしてもニオイが気になったり不快感がある場合は、腟洗浄アイテムを使ってもいいでしょう。でも、頻繁に腟洗浄していると常在菌を落としすぎ、腟のバリア機能が低下してしまいますので注意が必要です」と八田先生。生理を早く終わらせるために腟洗浄をするという人もいるようですが…? 

「腟洗浄器で洗うことができるのは腟内のみで、月経時に経血の出る子宮内まで洗浄する効果はありません。月経の終わり頃というのは腟内に残った経血が少しずつ出ている状態ですので、腟内洗浄を行うことでその残血を洗い流せるため、月経の期間が少し短くなるといえるかもしれませんね。

とはいえ、生理を早く終わらせたいからと頻繁に腟内洗浄を行なって、必要以上に常在菌を落とさないように気をつけてください。ちなみに、現代のような生理用品がなかった時代には、多くの女性は経血を自分でコントロールできていました。月経の最後に出る茶褐色の血液も、訓練して自力でキュッと出していたんです。まさに“腟トレ”ですね」

腟洗浄アイテムは、ビデやシャワーで腟内を洗うより安全!

腟内は外からの雑菌の混入を防ぐため、酸性(通常pH値が3.8~4.5)の状態に保たれています。例えば、腟内をお風呂のシャワーで洗うとして、使う水道水のphは5.8~8.6で中性付近。それに加えてボディソープ(弱アルカリ性)が腟内に入れば、酸性であるはずの腟内環境が中性や弱アルカリ性に傾きます。きれいに洗ったつもりでも、むしろ腟内環境のバランスを乱してしまうという結果に…。

「家庭にある温水洗浄便座の“ビデ”を頻繁に使っている人がたまにいます。性交の前後や月経期間、ひどい場合は排尿のたびに外陰部と腟をビデで洗っている人も。職場や外出先などでも、日常的に使っていることもあるそうです。

ですが、ビデで洗うほど、腟内の常在菌は洗い流され、中性に偏っていきます。すると雑菌が繁殖しやすくなり、腟炎になるリスクも高まります。肛門は排便の際に温水できれいにしていいと思いますが、腟は洗わなくてもいいと思います。そもそも、タンクにためられている温水洗浄便座の水が必ずしもきれいとは限りません。雑菌だらけの水もあるかもしれないことを頭に入れておきましょう」(八田先生)

その点、市販されている腟洗浄アイテムは、腟内に挿入するため、医療機器扱い。腟内の環境を守るよう弱酸性のものがほとんどなので、安心して使用することができます。

腟洗浄器の使用法と使用の際の注意点は…?

■手指をしっかりと洗い、清潔にしてから使用しましょう。
■挿入する際の姿勢は「立つ」「横になる」「座る」いずれでもOK。楽な姿勢で。直立や横になっている場合はお腹方向にまっすぐ、中腰や座っている場合は斜め上45度ぐらいに挿入します。

腟洗浄器を使用する際のポーズ例

■腟に挿入する際は体の力を抜き、腟を傷つけないようにゆっくりと。
■商品によって、どこまで挿入するかや使用方法が異なるので、説明書をきちんと読むこと。
■液やジェルは、注入後に徐々に腟から出てくるので、下着を汚さないよう、おりものシートやナプキンを使用するのがおすすめです。
■洗浄のしすぎに気をつけましょう!

yoi編集部がピックアップ! 腟洗浄アイテム4選

●ゼリープラス メディカル

ゼリープラスメディカルの画像

ゼリープラス メディカル (3本入り/管理医療機器)¥1,320/ジェクス
https://www.jex-sh.jp/products/jellyplus/

●サラサーティ Clean

サラサーティ Cleanの画像

サラサーティ Clean (3本入り/管理医療機器)オープン価格/小林製薬

https://www.kobayashi.co.jp/brand/sarasaty/clean/

●インクリア

インクリアの画像

インクリア(3本入り/管理医療機器)¥1,320/ハナミスイ
https://hanamisui.jp/products/inclear/

●YES インティメイト・モイスチャージェル VM アプリケーター

【2023年 最新・腟ケア総まとめ】「腟ケア」「腟マッサージ」「腟洗浄」の正しいやり方は? ポイントと注意点を婦人科医が解説_13

YES インティメイト・モイスチャージェル VM アプリケーター(5ml×6個入り)
¥4,400/YES JAPAN https://www.organic-yes.com/

乾燥を防ぎ、保湿しながら肌を整えるデリケートゾーン用保湿ジェル。オーガニックのアマ種子やアロエベラが繊細な肌を乾燥から守る。腟の中に挿入し、自然なうるおいのように保湿してくれるアプリケータータイプ。

取材・文/蓮見則子 イラスト/ユリコフ カワヒロ