原宿のカリスマ読者モデルとして活躍した10代から一貫して好きなスタイルを貫き、独自の世界観を発信し続けるpecoさん。ファッションはもちろん、弾けるような笑顔とポジティブマインドで、多くの人を魅了しています。インタビュー前半では、pecoさんの生い立ちから振り返ってもらい、ポジティブのルーツを探りました。

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モデル

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1995年6月30日生まれ、大阪府出身。原宿のカリスマ読者モデルとして人気を集め、多数の雑誌やテレビに出演。2018年7月に第1子の男児を出産。2023年に自身がデザイナー・プロデューサーを務めるファッションブランド「Tostalgic Clothing」をローンチ。2024年、初のエッセイ『My Life』が出版された。

私はこれが好き!と思える存在が、自分を強くしてくれた

peco インタビュー 笑顔

——幼い頃からファッションに夢中で、大好きなファッションに携わるために大阪から上京したことを機に、芸能界で活躍するようになったpecoさん。エッセイ『My Life』でも、ご自身の好きなスタイルや世界観についてたっぷり語られていましたね。pecoさんにとって「好きなもの」とは、どのような存在ですか?

peco:すごく単純ですが、私をハッピーにしてくれる存在です。ファッションはもちろん、ディズニー、バレエ、それから“人と違う”ことなど、「自分はこれが好きだ!」って思えるものが、自分にとって味方のように感じられて、自分を強くしてくれました。

わかりやすく言うと、学校で何か嫌なことがあっても、「でも私にはバレエがあるし!」とか、「私にはファッションがあるし!」とかって思える。それは今も変わらず、落ち込みそうなときも、好きなものがあるという事実が自分を支えてくれています。

——“人と違う”ことが好きだからこそ、誰かと服や持ち物がカブらないようにしたかったとか。人とは違っていることで目立ったり、ネガティブな意見をぶつけられることを恐れる人もいると思いますが、そういった経験はありますか?

peco:思い出せる範囲では、まったくないんですよ。確かに当時、めちゃめちゃ派手なカッコをしていると、ジロジロ見られることはありましたね。でも私にとって、人の視線は快感でしかなくて。「可愛いもんね、見ちゃうよね!」みたいな気持ちで、堂々と歩いていました。そんな性格だから、イヤミを言われても、褒め言葉として受け取っていたのかも(笑)。

私を否定しなかった両親のおかげで、伸び伸びと育ってこられた

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——昔から、自己愛に満ち溢れていたんですね! 

peco私は両親に一度も否定されずに育ったのですが、大人になって、その影響の大きさを感じています。小学5年生でピアスの穴を開けさせてくれたり、高校生の頃に金髪にしたいと言ったときも、一切否定せずに、うまいことやる術を一緒に考えてくれたり……。すごくありがたかったし、そのおかげで伸び伸びと大人になれたのだと感じています。

だから私も、息子の希望を絶対に否定したくないし、できる限り叶えてあげたい。息子が“今日ここに行きたい!”と言ったとしたら、その日は無理だったとしても、なるべく近い日程で実現させることを心がけています。

——伸び伸びと育ちながらも、pecoさんは他者に対しても気遣いの心がある方…という印象があります。

peco私、めっちゃワガママなんですよ! こんなことを自分で言うのは恥ずかしいけど、中高では友達に「姫」って呼ばれていましたから(笑)。自分の思い通りにならないと気が済まなかったし、人のために意見を曲げるなんて考えられませんでした。私が世界で一番のプリンセスって、信じて疑わなかった。息子が生まれてくるまでは、誰よりも何よりも自分が大事!な人生でした。

ただ、ワガママでいることと、人に迷惑をかけてまで好き勝手やることの違いは、幼い頃から理解していたとは思います。小学4年生のときに、クラシックバレエの先生が信じられないくらい怖くて、オーディションで勝ち取った舞台の役を降りたいと言ったことがあるんです。

その時、いつもは何でも受け入れてくれるお母さんが、「自分で出ると決めたのだから、舞台を終えてから辞めなさい」と、初めて自分の願いを叶えてくれなかった。この経験のおかげで、自分の決めたことに責任を持つ大切さを学びました。

子どもができた今も、私は世界で一番のプリンセス!

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——息子さんが誕生して、どのような心境の変化があったのでしょう。

peco息子が生まれるまでは、自分で自分を責めたことが一度もなかったんですよ。明らかに自分が悪かったとしても、心の中で他人のせいにしていました。わかりやすく言うと、椅子に足をぶつけたら、「こんなとこに椅子置いたの誰!?」って怒ったり(笑)。でもケガをしたのが息子だったときに、「ここに置いていた私が悪い!」って思うようになったんです。

自分が守らなきゃいけない、守りたい存在ができたことで、少し大人になれたのかも。ryuchellももちろん大好きだし、守りたい気持ちもあったけれど、それとはまた違って。こんなにも、自分ファーストじゃなくなるんだ!って驚きました。息子を守ることが自分にとっての幸せだから、そう言う意味では自分ファーストではあるんだけれど……息子が生まれる前とはまったく異なる感覚ですね。

——「世界で一番のプリンセス」を手放すことに、寂しさはありませんでしたか?

pecoこれまた恥ずかしいんですけど、今も手放してはいなくて。「世界で一番のプリンセスに、大切な息子ができた」という気持ちです(笑)。産後、自分自身やライフスタイルの変化などに悩まれる方も多いと思いますが、私はそういった経験が一切ない。ずっと、なんて可愛いママなんだろう!って思ってきました。

今ある幸せは当たり前じゃない。そう思うと今に満足できる

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——子育てをしていると、子どもから幸福感をもらう一方で、できなくなることが増える、といった声も寄せられます。ご自身の幸せの捉え方は、以前と比べて変化したと思いますか?

peco昔から、「もっとこうなりたい!」って感じたことが、ほとんどないんですよ。その時々の自分や状況に不満を感じたことがないから、ずっと満足しているし、ずっとハッピー。変わったことと言えば、自分がどれだけ幸せか、忘れずにいよう!という気持ちがより大きくなりました。息子という宝物ができて、その宝物が今ここに存在してくれているだけで、とにかく幸せで。当たり前に感じる毎日の幸せは、当たり前じゃないということを、つねに意識しています。

——当たり前じゃないと意識することで、目の前にある幸せをきちんと感じられるんですね。

pecoそうです! 以前から自分がどれだけ幸せか理解してはいたけれど、その理解がさらに深まりましたね。だから、本当に欲がないんです。口先だけじゃなくて、「今の自分でいいやん!」ってずっと思っているし、もっとこうなりたい、本当はこうしたい、みたいな願望がまったくない。

——自分の幸せを実感して、今の自分に満足したいと思っている人に向けて、pecoさんならばどんな言葉をかけますか?

peco私自身、毎日していることなのですが、今この瞬間の自分がどんな状態であれ、「十分素晴らしいしパーフェクト!」と思ってほしいです。例えば、憧れるアイドルのような体型になりたいと感じていたとして、そこを目指す前に一度、「今の自分でバッチリ、最高に可愛い!」って自分に言ってあげる。素直に思えなくても、無理やりにでも信じ込むことが大事だと私は思います。

そう思ってからなりたい自分に向けて何かを頑張るのと、今の自分じゃダメだから変わらなきゃって気持ちで頑張るのとでは、全然違うはずだから。前者のほうが、頑張っていく過程も楽しめるし、最終的なハッピー度も絶対に大きくなると思うんです。

それは見た目だけの話じゃなくて、他人を羨ましく感じて自分を変えようとするとき、すべてに当てはまりますよね。自分と誰かを比べて、羨ましい誰かを目指してしまうと、結局なりたい自分にはなれない。自分の思い描いている方向に進むためには、まず、自分のことを認めることが大事なファーストステップだと思います。

撮影/久野美怜 ヘア&メイク/megu 取材・文・構成/中西彩乃 企画/木村美紀(yoi)