長田杏奈さんの連載「ゆるぱわめんとコスメ」特別編。今回は長田さんの知人でもあり、『DEPT Company』代表でアクティビストとしても活動するeriさんがゲスト出演! 環境問題の現状にと、身近なことから始められる選択について、eriさんのご自宅でお話を伺いました。

DEPTカンパニー代表のeriさん

COP26を通して肌で感じた危機感

長田:いつもSNSでeriさんの活動を拝見しているのですが、去年はCOP26に参加されていましたよね。そもそもCOPってどんなイベントなんでしょうか。

eri:COPは世界中の政府関係者や、環境問題の研究をしている人が気候変動について話し合うために開かれるカンファレンスです。私のようなアクティビストたちは直接その会議に参加するわけではなく、外で「ちゃんとやってくれ〜!」とデモをしたりして働きかけるんですが、去年はスコットランドのグラスゴーで開催されたので、それに行ってきました。

長田:日本での気候変動に対するテンションと、海外のアクティビストのテンションに違いは感じましたか?

eri:全然違いますね〜。日本でのスタンディングやデモって、「すごく限られた人が声を上げている」という印象が強いけれど、向こうは人種や年齢、バックグラウンドを超えて、いろんな人が「みんなで声を上げている」という感じ。音楽やアートを交えながら、自分たちの表現として楽しんで声を上げていて、日本でもそういうことができたらいいなと思います。

長田:日本だとどうしても、“こういう活動をしているのって若くて意識が高い人”みたいな距離を感じるときがあって…。

eri:でもこの問題って、実は誰一人、関係ない人はいないんですよ。「気候正義」という言葉があって、今日本は二酸化炭素の排出量が世界でもトップクラスだけれど、まだ直接被害を感じている人は少ない。一方で、例えばツバルという国は今気候変動の大きな被害にあっているけれど、その国はほとんど二酸化炭素を排出していない。簡単に言うと、そうした不平等について考えましょうというのが気候正義なんです。私も頭ではこの不平等を理解していたつもりだったんですが、COPで実際にツバルの人に会って、「愛する自分の国がなくなったら僕はどうしたらいいんだ」と言われたとき、「あ、私たちがこの人の国を沈めているんだ」と本当に思ったんですね。日本にいると、これってなかなか感じられないことだから、もっと伝えていかなければいけないな、と。

今すぐできる2つのアクションとは?

DEPTカンパニー代表のeriさん

長田:何も考えずに便利な生活をしていると、やっぱりじゃんじゃん二酸化炭素を出してしまうわけで。私たち個人にできることって、どんなことがありますか?

eri:まず、家の電気を再生可能なエネルギーに変えていくことですかね。

長田:たしか、そういったアクションを表す単語がありましたよね…?

eri「パワーシフト」です! エコバッグとかマイボトルって、つい持ち歩くのを忘れちゃうこともあると思うんですが、電気の共有先なら一回変えてしまえば、何も考えなくても毎日毎秒地球環境に貢献できる。オンラインですぐ登録できるし、工事もいらない。うちも100%再エネにしていますが、「この人のこの畑で電気ができているのか〜」とか「あの太陽でできているんだな」と日々感じています(笑)。

長田:生産者さんの顔が見えるんですね!

eri:それから、私はお肉を極力食べないようにしています。好きな言葉ではないけど「家畜」を育てるためにすごくたくさんの温室効果ガスを排出しているんですよね。それから「環境フットプリント」という言葉があって、これは、なにかの製品や食品が作られたところから運搬、廃棄されるまでの化石燃料の消費量の多さを表すんです。食べ物が自分の目の前に来るまでにどのくらいの距離を、どんな運送手段を使って運ばれてきたのかを考えて、できるだけその距離が近いものを選んでみる。そんなふうに、自分の食生活を今一度見直してみるフェーズに来ているなと思います。

長田:菜食主義の中にはヴィーガンやペスカタリアンなどいろいろな人がいると思うのですが、それでいうと今、eriさんは食事をどんなふうにされているんでしょうか?

eri:ヴィーガン(完全菜食主義者)の他にも、魚介類は食べる人をペスカタリアン、基本的に菜食主義だけれどその場に応じてフレキシブルに選択する人をフレキシタリアンといいます。私は卵や乳製品もとらないんですが、お土産でクッキーをいただいたとして、それを捨てるかって言ったらそうではなく、ありがたく頂戴するのが私のチョイスなので、それはフレキシタリアンに入りますよね。今はペスカタリアン・フレキシタリアンです。

長田:そういった方法ならいろんな人が取り入れやすそうですね。

eri:そうそう。「ミートフリーマンデー」という言葉を聞いたことある人もいるかもしれませんが、月曜日はお肉を抜いてみよう、という日なんです。まずは「午前中は動物性を抜いてみよう!」とかでもいいから、自分で決め事をつくってみるのもいいかもしれないですね。

長田:イベントっぽくて楽しくできそう!

菜食生活4年、eriさんが体感した変化

DEPTカンパニー代表のeriさんのご自宅のお花

eri:私は菜食を始めてから4年になりますが、もう以前の食生活には戻れない…。今は肌の調子もよくて。

長田:eriさん、めちゃくちゃ肌がきれいですよね! 近くで見てもまったく毛穴がない。でも日本でヴィーガンをやろうとすると、お店とかデリバリーとか、なかなか選択肢がない気がする

eri:日本で完全菜食ってけっこう難しくて、だから私もペスカタリアンというチョイスに甘んじているんですが…。肌の調子以外に感じた変化だと、とにかく快便になる! 最初は頭が冴えるらしいと聞いて始めたんですけど、菜食を始めてから便秘知らずになりました。始めて半年くらいはけっこう厳格に動物性食品を絶っていたんですが、ある日久しぶりに、動物性食品が入ったスープを飲んでみたんですよ。そしたら体が急に重く感じて。そのときに、「今まで菜食のおかげで体が軽くなってたんだ!」って気がついたんです。

長田:ちなみに、できるだけ近い場所で作られた食品を選ぶ、地産地消という話がありましたが、今、コスメ業界でもそういった動きがあるんです。別の産業で余ってしまった地産の原料を良心的な価格で買い取って国内でコスメをつくるとか、容器をリサイクル原料から生産したりとか。私もコスメに関してはちょっとフレキシタリアンというか、このブランドは志がいいとか、原料がいいとか、容器や使い心地はどうかとか、その場その場で納得して選べたらいいなと思っています。

どんなに小さな買い物も「投票」と考えてみる

長田杏奈さん

長田:ところで、「買い物は投票」という言葉を最近よく聞くのですが。

eri
「バイコット」「ボイコット」というのがあって、「ボイコット」は日本語でも「不買運動」っていう単語があるけれど、「バイコット」は、応援したい企業やブランドの製品を買って応援して、それが意思表示につながるという考え方なんです。さっき話したパワーシフトもバイコットの一つで、私は火力発電とか原発に賛成していないけど、そこにお金を毎月払っていたら、それをサポートしていることになりますよね。だから、自分の持っているお金をどういうふうに使うかを考えて、どんなに小さなお買い物でも「まあいいや」とならずに、悩んで買うのが大事っていうこと。

長田:「うーん…」の時間が大切ってことですよね。

eri:そうそう。私の場合、ネットショッピングでは、カートに入れて一週間くらい放置します。そうすると、大体は購入意欲がなくなる(笑)。なるべく衝動買いしないようにしてるんです。あとはリサイクル品を選んだり。実は、うちのこのソファーもメルカリで買いました。テレビもオーブンも全部古いもの。

長田:洋服だけじゃないんだ!

eri「自分にとって何が贅沢で何が心地よいか」っていう定義が完全に変わってきた感じはしますね。

eriさんおすすめ。コスメでの投票先は?

DEPTカンパニー代表のeriさん

長田:では、今回はゆるぱわめんとコスメ連載の特別編ということで、コスメでのeriさんの「投票先」をお伺いできればと思います!

eri:はい! 最近出合ったおすすめがあって、『瑞健』の100%セサミオイルです。全身のマッサージとしても使えるし、顔や髪の保湿にもOK。私はこれで膣マッサージもしてます。ウコン入りの「ほっとオイル」もおすすめ!

長田:アーユルヴェーダでよくごま油を使うけど、そういう感じなのかな?

eri:そうそう。しかもこれは国産なんです。今までは海外のオイルが好きで使っていたんですが、今はこちらの国産品を購入=“投票”しています。ごま油の匂いも、塗ったあとの酸化臭もしないし、サラサラで美容液みたい。お買い得の大きいサイズもいいですよ。

Sesame Oil(遮光ビン)110ml(R)¥1,276/瑞健

Sesame Oil(遮光ビン)110ml(R)¥1,276/瑞健(私物)

ほっとオイル ¥1,650/瑞健

ほっとオイル ¥1,650/瑞健(私物)

eri:あとは、『athletia』の「コアバランス オイル」。香りや使い心地はもちろん好きなんだけど、容器を回収していたりリサイクル素材を使っていたり、ブランドとしても環境問題に取り組んでいるんですよね。

長田:そうそう。店舗の建材も環境に配慮されているんですよね。地産地消の話にもつながるけど、athletiaって畑を持っていて、原料を日本で生産しているんですよ。いいサイクルを生み出せるように頑張っていて。中身もいいですしね。

コアバランス オイル ¥6,050/athletia

コアバランス オイル ¥6,050/athletia 0120-220-415

eri:ベース系だと、日焼け止めは『California Organic House』の「無添加ノンケミカル日焼け止め」がおすすめ。

長田:私たちが普段見る日焼け止めの姿とはだいぶ違いますね〜。

eri:そう。紙の容器に入っているんです。ちょっと茶色っぽく見えるんだけど塗ったあとはなじんで、「あ、肌きれい!」ってなるんですよね。多くの日焼け止めは、サンゴの生態に影響してしまう成分が含まれているんだけど、これはそれが入っていない。もちろんオーガニックでヴィーガン。ワンシーズンで使い切れる大きさなのもいいですよね。

無添加ノンケミカル日焼け止め ¥3,000/California Organic House

無添加ノンケミカル日焼け止め ¥3,000/California Organic House(私物)

eri:カラーコスメ系は、紙パッケージのこのリップを愛用してます!

長田:それ私も持ってます! マルチカラーになってて、チークや目元にも使えるんですよね。

eri:小さく見えるけど、普段使っている口紅と容量は変わらないんだそうで、プラスチックの容器を抜いて中身だけにするとこの大きさになるみたい。しかもレンガっぽい、いい色なんですよ〜。

3-in-1 メイクアップバーム ¥2,530/ Axiology Lip to Lid Balmies

3-in-1 メイクアップバーム ¥2,530/ Axiology Lip to Lid Balmies(私物)

eri:容器に関しては、シャンプーやコンディショナーもプラスチックフリーの固形タイプを愛用していますが、旅行のときも固形だと詰め替えたりせずそのままポーチに入れて持って行けるんですよ。

長田:身軽ですね〜。シャンプーバーって今、いろいろ出ていると思うのですが、中でもこちらの好きなところは?

eri:『minimal living tokyo.』で売っている「海藻シャンプーバー」は、パーム油フリーなんです。使い心地もよくてすっごく気に入ってる。本当は国産のものが欲しいんですが、なかなかなくて…。今、自分の会社でも作ってます! 

海藻シャンプーバー by No Tox Life ¥1,650/ minimal living tokyo.

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https://minimal-living-tokyo.com/pages/contact

長田:わー、発売されるのが楽しみ! ちなみに、パーム油に気をつけているのはどうしてなんでしょうか。

eriパーム油を生産するために、森林伐採がたくさん行われているんです。二酸化炭素を吸収する場所がなくなるのはもちろん、そこに住んでいる動物たちを殺してしまって生態系を壊しているので、今すごく大きな問題になっていいて。成分表示に「植物油脂」って書いてあるものはパーム油だから、なるべく使わないようにしていますね。あとは最近、メイク落としのコットンも、捨てるのがもったいないなと思って、繰り返し使えるものに変えたんだ。

長田:触ってもいいですか? ふわふわだ〜!

eri:すごく気持ちいいですよね! 化粧水をこれでつけたり、ふき取ったりして、そのつど洗う。使っていくほど、気持ちいい触り心地になってくる感じがします。完全に切り替えなくてもいいから、使い捨てのコットンと半分ずつ使ってみるとかね。

リユーザブル バンブーコットン ¥1,600/Two Trees

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https://twotrees.stores.jp/inquiry

洗濯、食器洗い、除菌もOK。ホタテパウダーが最高に万能

eri:コスメ以外でも、楽しくゴミを削減できたらいいなと思っていて、すごくおすすめしたいのがこちらです! これはホタテでできたパウダーなんです。

618 scallop powder ¥1,100/rerum nature japan

618 scallop powder ¥1,100/rerum nature japan(私物)

長田:ホタテですか…!

eri:そう。私はこれがないと生きていけないんだけど(笑)。もともとホタテの貝殻って産業廃棄物として山盛りに漁港に余っちゃっているそうで、それを使用したパウダーなんです。何がすごいって、洗剤の代わりになるんですよ。もちろんお洗濯もできるし、スプレーボトルにパウダーと水とエッセンシャルオイルを混ぜれば、トイレ、キッチン、洗面台、すべて掃除できる。このパウダーを一個買えば、その洗浄スプレーを300回くらい作れるんだって。いろんなアイテムがいらなくなるから場所も取らないし、すごい節約になりますよ!

長田:何かを我慢するっていうより、すごく豊かな感じがしますね。

完璧じゃなくていい。少しでも意識が変わった自分を誇りに思って

長田:最後に、環境問題を考えたい方におすすめのコンテンツをご紹介いただきたいのですが。

eri:本だと『ドローダウン 地球温暖化を逆転させる100の方法』です。気候変動の問題って、知れば知るほど「もう無理じゃん!」みたいな気持ちになりがちなんだけど、解決策までがしっかり書いてある本なんです。

『DRAWDOWNドローダウン― 地球温暖化を逆転させる100の方法』 ポール・ホーケン(著)江守 正多(翻訳)東出 顕子(翻訳)/山と渓谷社

『DRAWDOWNドローダウン― 地球温暖化を逆転させる100の方法』
ポール・ホーケン(著)江守 正多(翻訳)東出 顕子(翻訳)/山と渓谷社

eri:あとは、気候変動の問題そのものを知るためのコンテンツは、NetflixやYouTubeにもたくさんあるので、ぜひ見ていただければと思います! たまに「私、全然完璧にできていなくて」と言われれることがあるんですが、「できてないなとか、ペットボトル買っちゃったとか、罪悪感持ったんだよね? それってすごいことじゃない⁉︎」って私は思うんです。何も考えずに消費し続けるのと、たとえ買ってしまったとしても、気持ちの変化を感じられるのって大きな違いなんです。だからそういう自分をまずは誇りに思ってほしいと思います。

長田:とても勉強になりました。eriさん、ありがとうございました!

DEPTカンパニーeriさんと長田杏奈さん

撮影に入ってくるにゃんこ紋太郎くん

eriさんオススメのコンテンツ

『ザック・エフロンが旅する明日の地球』
地球の未来のために、今何ができるのか? 俳優のザック・エフロンが健康ライフの専門家、ダリン・オリエンと世界を旅し、健康で持続可能な生活様式を探求する。

 Netflix映画『ザック・エフロンが旅する明日の地球』

 Netflix映画『ザック・エフロンが旅する明日の地球』
独占配信中

『地球の限界: "私たちの地球"の科学』
失われゆく地球の生物多様性。それでも危機は回避できる。デヴィッド・アッテンボローと科学者ヨハン・ロックストロームが、未来を救う実現可能な方法を探る。

Netflixシリーズ『地球の限界: "私たちの地球"の科学』

Netflixシリーズ『地球の限界: "私たちの地球"の科学』独占配信中

eriさんと小野りりあんさんが主催するPeaceful climate strike のYouTubeチャンネル

SHOP LIST
athletia 0120-220-415
minimal living tokyo. https://minimal-living-tokyo.com/
Two Trees https://twotrees.stores.jp/

撮影/小林真梨子 取材/長田杏奈 企画・文/種谷美波(yoi)