2020年にABEMAで配信され、新時代の性教育ドラマとして大きな話題を呼んだ『17.3 about a sex』。yoiで連載していたコミカライズ版『17.3 about a sex 〜私たちのリアル〜』がついに完結し、その記念として、原作ドラマ『17.3 about a sex』で主人公の清野咲良を演じた永瀬莉子さんと、女子高生の性に関する情報を監修した性教育プロデューサーの中島梨乃さんにインタビュー。ドラマや漫画で性を扱うことの意義や、作品にかかわるなかで感じたことなどを、熱く語ってくれました。
10代の私たちだからこそ、視聴者に伝えられることがある
——2020年9月から、ABEMAで配信されたドラマ『17.3 about a sex』。性行為を初体験する世界の平均年齢をタイトルに冠し、女子高生の性のリアルを描いた本作の第一印象を教えてください。
永瀬 内容を初めて知ったのは、オーディションに向けて届いた台本を読んだとき。正直、衝撃的でした(笑)。意味を知らない単語も多くて、役が決まったあとも自分に務まるかな? と不安のほうが大きかった。そんななかプロデューサーさんから、10代の私たちだからこそ視聴者に伝えられることがあると言っていただいて。作品の意図を理解できたのと同時に、ぜひ参加したい! という気持ちが強くなりました。
中島 私はドラマの企画段階で、脚本家の山田由梨さんから声をかけていただきました。性教育を広めるための活動をするなかで、いつかドラマを作りたいなと思っていたので、すごくうれしかったです。
それまでは、きちんと性を教育しない社会に対して不満ばかり抱いていて。性で悩んでいる人たちを扱ったドラマを作りたいと考える大人がたくさんいると知って感動したし、私が思っていたよりも社会は変化しているのかも、という希望も生まれました。
——高校生のときに、性教育を広める活動を始めたという中島さん。ご自身が性で悩んだことが、きっかけだったそうですね。
中島 はい。中学生のときに妊娠の心配を経験して、自ら性について学びはじめました。妊娠の不安を抱えていたときは自分で自分を責めていたんですけど、勉強するにつれて、本当に自分一人の責任だったのかな? と考えるようになったんです。
適切な知識を得る機会や、避妊具への手軽なアクセス、悩んだときに相談できる存在…それらの環境が整っていたら、自分が悩むことはなかったかもしれない。誰かが私と同じように悩んだときに、自分を責めなくていいような社会を作りたいという思いから、性教育の拡散活動を始めました。
——具体的に、どのような活動から始めたのですか?
中島 まず、Twitterのアカウントを作りました。当時、自分のまわりでもSNSを使って発信するのが一種のトレンドになっていて。これなら学生の私でもできる! と思い、自分の経験をもとに発信を始めたんです。
Twitterの反響が徐々に伸びるなかで、私の活動を知った学校の友人からも、多くの相談を受けるように。もともと性の相談に乗ることは多いほうでしたが、身近な環境だけでもこんなに多くの人が悩んでいるんだな、と実感しました。
リアリティを追求するために、現役女子高生に取材
——中島さんは『17.3 about a sex』を監修する際に、どんなことにこだわりましたか?
中島 ひとつは、女子高生のリアルを追求すること。脚本家の山田さんと初めてお会いしたときに、母親にコンドームを見つけられたことや、痴漢にあったことを当然のように友達に話していたことなど、高校生だったときの自分の実体験を赤裸々に伝えました。
それから、現役女子高生の友人にも取材をして、実際に流行っていることを教えてもらったり。今はコスメを買うなら『Qoo10』だ、とか。
永瀬 『Qoo10』のセリフを読んだときに、すごい! って思いました。情報が早いな、と。高校生役を演じる作品では“現実とちょっと違うな”と感じることが少なくないんですけど、『17.3 about a sex』の台本はまったく違和感がなかったです。
中島 本当ですか! うれしい。もうひとつは、エンドロールで流した性の豆知識。そのエピソードで取り上げた性のテーマを、産婦人科医の高橋幸子先生と一緒にわかりやすくまとめているんです。ほとんどの人は気づいていないと思うんですけど…。
永瀬 私は毎回、欠かさず読んでました! ためになる情報ばかりで、すごく勉強になりました。
中島 感激です。本当は劇中で詳しく説明したかったのですが、お勉強感が強まってしまうためにあきらめた情報がたくさんあって。そう言っていただけて、頑張った甲斐がありました。
実は、性教育をテーマにしたドラマの企画を喜ぶ一方で、演者さんの心のストレスを心配していたんです。撮影中、嫌な思いはしなかったですか?
永瀬 まったくなかったです! 実際に演じるまでにスタッフさんとの話し合いの場をこまめに設けていただき、すごく意見が言いやすかった。しっかりコミュニケーションを取れたおかげで、とてもリラックスして撮影に挑めました。
あえて台本に知らない言葉があっても調べずに演じました
——撮影当時、演じたヒロイン・清野咲良(以下:咲良)と同じく17歳だった永瀬さん。役作りや演じるうえで、どんなことを意識しましたか?
永瀬 私自身が性について学校や友達間であまり話すタイプではなかったので、咲良にすごく共感できたんです。性の知識や意識という面では、咲良の親友の二人に比べて、等身大な女子高生に近いのかなって。そんな咲良が性を学んで成長していく過程をリアルに見せたかったので、あえて台本に知らない言葉があっても調べないようにしていました。
——本作は、咲良と親友二人との友情も大きなテーマのひとつ。親友の一人は他者に性的感情を抱かないアセクシャルの原紬(田鍋梨々花)、もう一人はオープンに恋とセックスを楽しむ皆川祐奈(秋田汐梨)。趣味も性に対する意識もバラバラでありながら、お互いを批判することなく受け入れ合う関係が素敵でした。
永瀬 すごく理想的な関係ですよね。いくら仲が良くても、特に性についての話題って、相手の反応を不安に感じてしまうもの。咲良も最初はそうでしたが、素直に話すことで悩みが軽くなり、二人との絆もより深まっていく過程がリアルだなと感じました。
中島 『17.3 about a sex』のように違うけど認め合い、信頼できる友情を描いた作品は、人間関係を構築する際にもいい影響を与えてくれるはず!
永瀬 私は自分と似ているキャラクターがいないと、その作品に感情移入できないことが多いんです。でも本作ではいろんな性格のキャラクターが登場するから、自分に似た感覚の人を見つけやすく、その人の視線で自分や他者を理解して受け入れる擬似体験ができる。同年代として、とても意義のある作品だと思います。
性に関心を持ったときに正しく学べる環境が大切
——親友二人を演じた田鍋梨々花さんと秋田汐梨さんは、永瀬さんが専属モデルを務める雑誌『Seventeen』のモデル仲間。本作での共演を経て、お二人との友情は変化しましたか?
永瀬 もともと仲良しでしたが、より信頼関係が深まりました! 撮影中は日々、お互いが感じたことを共有していて。汐梨ちゃんが産婦人科に行くシーンを撮影したあとは、「初めて診察の検査台に乗ったけど、すごく不安だった」と聞いて、婦人科検診について3人で話したりもしました。
その時々の感情を素直に伝え合うことで私はすごく気持ちがラクになったし、お互いをきちんと理解できた気がします。撮影が終わってからもずっと仲良しで、今でもよく遊んでいるんですよ。
——本作は、新時代の性教育ドラマとして大きな話題に。漫画化されたことで、今後どのような効果を期待しますか?
中島 もちろん学校で性教育を学ぶことは大切ですが、関心がないときに教えられても、自分ごととしてとらえにくいのがリアル。学校に行かない人もいますし、学校外で、自分の好きなタイミングや場所で取り入れられる本作の存在は、偉大だと思います。
ドラマと漫画それぞれに異なる魅力があるので、ぜひ両方見ていただきたいです! ドラマは友達と見るのも良いし、漫画は電車での移動中などにも読みやすい。選択肢が増えたことで、より多くの人に届くことを願っています。
性教育プロデューサー
2000年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部4年。性教育プロデューサーとして、ABEMAオリジナルドラマ『17.3 about a sex』の台本監修や、SNSでの性教育に関する発信活動を行なっている。
ABEMAオリジナルドラマ『17.3 about a sex』
初体験平均年齢=17.3歳だと知った女子高生3人組。その日をきっかけに彼女たちの"性の価値観"が揺らぎ始める。「実際、痛いの?」「そもそもセックスってしなきゃダメ?」「あのさ、みんな、1人でしてるの…?」「付き合って、キスして ーそれから…!?」本当は知りたいけど、誰も教えてくれないセックスのこと。初体験や避妊、生理、体型の悩みやセクシャリティなど、リアルで繊細な女子の本音を隠さず丸めず語り尽くす3人。日本で一番ティーンに観られているメディア・ABEMAが描く、女子高生のリアルな心情を描いた青春恋愛物語。
[永瀬さん]シャツ¥40,700・中に着たニット¥18,700・パンツ¥31,900/ミュラー オブ ヨシオクボ 03-3794-4037 その他/スタイリスト私物 [中島さん]すべて本人私物
取材・文/中西彩乃 撮影/tAiki ヘア&メイク(永瀬さん)/宮本愛(yoshine.) スタイリスト(永瀬さん)/伊藤省吾(sitor) 企画・編集/木村美紀(yoi)