2013年に映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』で華々しく俳優デビュー。2014年にソロアーティストとして歌手デビューを果たして以降、第一線を走り続けてきた大原櫻子さん。デビュー10周年イヤーを迎え、これまで歩んできた道のりの“光と影”を表現したミニアルバム「スポットライト」を8月30日にリリースしました。二足のわらじをはいてかけ抜けてきたこの10年、どのように心と体に向き合ってきたのか——。オープンに語り明かしてくれました。
困難にぶち当たったときこそ“やっちゃえ精神”で乗り切る
――デビュー後、歌手活動はもちろん、ドラマや舞台に立て続けに出演し、多忙を極める日々を送っていたと思います。壁にぶつかったとき、どのように心と向き合っていたのでしょうか。
大原さん:私は小さい頃から竹を割ったような性格なので、いい意味で開き直ることが得意なんです(笑)。だから昔も今も、壁にぶつかったときは、「これを乗り越えられたら、私、めっちゃカッコいいじゃん!」「この試練に向き合うという選択肢しかないのなら、思いっきり楽しもう!」と考えて、スパッと気持ちを切り替えるようにしています。
あと、デビューしたての頃からつらいときは、きちんとまわりの人に甘えるようにしていました。というのも、その当時に支えてくれていたスタッフさんから、「人に甘えることって難しいことだけど、ちゃんと甘えてね!」と声をかけていただいたんです。その言葉のおかげで、心に余裕が生まれて、つらいときはきちんとまわりに助けを借りられるようになったし、泣きたいときはちゃんと泣けるようになりました。
――この10年間でさまざまな経験をされたと思います。“辛いときは人に甘えるようにしていた”とのことですが、これまでを振り返り、大原さんにとって最も大変だった時期はいつですか。
大原さん:この10年でいちばん辛かった時期…。もちろん大変な時期はあったのですが、もう過ぎたことだし、“人生のいい糧になった”と、ポジティブにとらえられているからかあまり覚えていなくて(笑)。
“人生のいい糧になった”と思えている経験は、この業界に入るきっかけとなったオーディションに勇気を出して参加したことかな。大きな挑戦って恐怖心をともなうじゃないですか? それこそオーディションの場合は、人前に出て自分をアピールしないといけないから、 “怖い”って気持ちが自然と湧き出てきちゃう。でも、このときも持ち前の開き直り、というかポジティブ思考を発揮して、“やるからには、とことんやっちゃえ精神”を働かせて乗り切りました。
――気持ちの切り替え上手な大原さんでも、ライブや演劇など、ステージ直前はやはり緊張するのでしょうか。
大原さん:もちろん私も緊張はしますが、やっぱりここでも“やっちゃえ精神”を発揮していますね(笑)。あとは、ステージ前にストレッチをするようにしています。体の強張りがほぐれると、心も緊張もほぐれるので、フルパワーでステージに立つことができるんです。それと、“心の声”を聞くことも大切にしているかな。例えば、ステージに集中したいのに、それがどうしても緊張してできないときは、無理に集中しようとしない。そのときの心の声が求めていることに素直に従うようにしています。
“0か100か思考”をやめたら、ステージで出せるパワーがアップ
――最新アルバム「スポットライト」は、この10年間の光と影を描いている作品とのことですが、大原さんはステージ上でスポットライトを浴びて、普段の生活に戻ったときに孤独感を感じることはありますか。その光と影のコントラストの強さにどう対峙しているのでしょうか。
大原さん:言われてみるとデビュー当時は、ステージ後に「あれ? さっきまであんなにたくさんの人に囲まれていたのに……」と、言いようのない寂しさや孤独に襲われていたことがありました。でも、ある時にハッとしたんです。
それまでは0-100思考で、ステージ上を100とすると、降りてからを0にするという感覚でいました。でも50-50というエネルギーのかけ方もあると気づいて実践してみたら、ステージ上は「100でいよう」と力んでいたときよりも、心にゆとりを持ってその時間を楽しめるようになって。結果、0-100思考のとき以上に、ステージでパワーを出せるようになったし、終わったあとに、急激な孤独感に陥ることもなくなりました。
――“ある時にハッとした”とのことですが、心を消耗しないエネルギーの使い方に気づけた具体的なきっかけとはなんだったのでしょうか。
大原さん:コレという出来事はないけれど、演劇の仕事を通して、あらゆる先輩たちが、どうやって人生を歩んできたのかを聞いたり、仕事に向き合う姿勢を間近で見たりしたことが影響しているかなと。なかでも特に刺激を受けた方は、初舞台「The Love Bugs」でご一緒した岸谷五郎さんと、寺脇康文さん。お二人と本音で話す機会があったんですが、そのときに、ありのままの自分をさらけ出す勇気をいただいて。それからは、いろんなことに肩の力を抜いて取り組めるようになりました。
お二人の影響はもちろん、大学で出会った友人たちの存在も大きいかな。自分の“好き”をオープンにして、一生懸命に努力するみんなの姿は、ありのままで生きることが心と人生を豊かにする秘訣だと気づくきっかけになりました。
自分で責任を持って選択をすることが、心の安定につながる
――自分を大切にする術をよく知り、実践されていますが、忙殺されると心の声が聞こえにくくなることもあるかと思います。普段、どのようにして心のバロメーターを安定させていますか。
大原さん:最近、よく思うのは、他人から強制されてする仕事は心身ともに疲弊するけれど、自分で選択した仕事であれば、忙しくても楽しいし、むしろ元気になれるなと。だから、自分で責任を持って日々の選択をしていけば、心のバロメーターは安定すると思います。
私は数年前に個人事務所を設立したんです。友達に、「そんなことも自分でやっているの?」と驚かれるくらい、事務作業に追われて泣きそうになる日もあるけど(笑)、自分で選択して、責任を持ってやりたいことができている今、すごく楽しく生きられていると思います。
大原櫻子 mini ALBUM「スポットライト」8月30日発売!
通常盤【CD】¥2,420
2013 年の俳優デビュー、2014 年の歌手デビューからそれぞれの10 周年となり、まさにその「10 周年イヤーの始まり」となるミニアルバムが発売! 今作タイトルには、俳優人生と歌手人生の10 年間で起きたさまざまな出来事の表側の部分、その裏側に隠れた苦難や努力の道のりの中での「光と影」、と言う2 つの意図が込められています。
取材・文/海渡理恵 撮影/森川英里 ヘアメイク/木内真奈美(Otie) スタイリスト/佐野夏水 企画・編集/木村美紀(yoi)