『Call Me Maybe』『I Really Like You』などの世界的大ヒットを経て、さらなる進化を続けるカナダ出身のシンガーソングライター、カーリー・レイ・ジェプセンさん。4年ぶりとなるジャパンツアーのため来日したカーリーさんに、ニューアルバム『The Loveliest Time』への思いや、ご自身の心と体のケアについて伺いました。

カーリー・レイ・ジェプセン Carly Rae Jepsen 来日 The Loveliest Time

カーリー・レイ・ジェプセン

シンガーソングライター

カーリー・レイ・ジェプセン

カナダ、ブリティッシュ・コロンビア生まれ。ジャスティン・ビーバーのレーベルと契約後、2012年には全⽶No. 1シングルとなった大ヒット曲『Call Me Maybe』をリリース。2015年には、この年ビルボードジャパンで年間洋楽1位を獲得した『I Really Like You』を収録したアルバム『Emotion』をリリースし、サマーソニックにも出演。今年6月にはシングル『Shy Boy』、7月にはアルバム『The Loveliest Time』を発売。

孤独な時間も幸せな時間も、どちらか一方だけでは成り立たない

――大の日本好きで知られるカーリーさん。コロナ禍を経て、昨年『SUMMER SONIC 2022』で3年ぶりに日本のステージに立ちました。久々に日本にいらしていかがでしたか?

カーリー スケジュールに「日本」と書かれているだけで喜んでしまうくらい日本が大好きで、去年と今年はボーイフレンドも一緒に連れてきました。世界中を回れる状況になったことはもちろんうれしいですが、なかでも日本に行けることが特に幸せですね。

――昨年リリースしたアルバム『The Loneliest Time』は、「孤独」がテーマの内省的な作品だったと思います。それとは対に、今年7月28日にリリースした『The Loveliest Time』は、とても明るいムードが漂っていました。

カーリー 『The Loneliest Time』と『The Loveliest Time』は、姉妹作品と捉えてほしいんです。“Loneliest Time=孤独な時間”も、“Loveliest Time=楽しい時間”も、単体ではうまくいかないし、どちらの時間もあるからこそ、成り立っている。そんな思いで、対になるような作品を作りました。

“Loneliest Time=孤独な時間”は、この数年のパンデミックの期間に全世界が体験していた、寂しい期間を示しています。でもそういう時間があったからこそ、自分の中にいろいろな反応や変化があったと思うんです。例えば、いつもの自分なら絶対にしないようなことにトライして、失敗したり恥ずかしい思いをしたり…。

――まさに、『The Loneliest Time』に収録されていた『Beach House』という曲では、カーリーさんがマッチングアプリを使ったときの体験を描いていましたよね。

カーリー そうそう。でもそこでのいろいろ面白い経験があったから、すべてが無駄ではなかったなって。一方で“Loveliest Time=楽しい時間”は、現在のことですよね。ようやく世界が開けて、みんなが孤独を感じていたときに描いていた「こういうことをまた体験したい」という思いが実現できるようになってきた。

「自然は芸術を模倣する」「芸術は自然を模倣する」というような言葉がありますが、まさにそんなイメージで、自分が創造していたことが現実になったなと感じています。

大切な人とつながることがメンタルケア。多忙な中でヘルシーな心と体を保つ秘訣

――ここからは、カーリーさんご自身のセルフケアについてお聞きしたいと思います。アーティストとして世界中の人をエンパワーする一方で、自分自身が落ち込んでしまったり自信を失ってしまったりしたときは、どのように心と体のケアをしているのでしょうか?

カーリー 忙しすぎる日々が続くと、人生やキャリアのことを考えて、圧倒されてしまうような感覚になることもあります。そういうときは、瞑想を取り入れるようにしていて。自分の心と体をゆっくりと一体にしていくイメージです。

例えば、大きなショーなど緊張する瞬間の前には、時間をとって瞑想し、「どういうショーにしたいのか」「みんなが何を求めているのか」を落ち着いて考えます。そうすると、自分自身からいいエネルギーを発することができるんです。

それから、たまには甘いものをたくさん食べること。私はお砂糖が大好きだから(笑)。

カーリー・レイ・ジェプセン Carly Rae Jepsen 来日 ユニバーサル・ミュージック

――体のケアはいかがでしょうか? ライブなどでエネルギーを使って、すごく疲れてしまうこともあると思うのですが。

カーリー そうですね。いろいろな国に行くので、時差の問題はいつもあります。でも、どんなに体が忙しくても、心に余裕さえあれば乗り越えることができると思っているんです。だから、できるだけ大好きな人たちとつながって気持ちに余裕を持つことを大切にしていて。

――余裕を持つために、実際に取り入れている習慣はありますか?

カーリー 例えば、ライブの開始前にはメンバーと心を通わせる時間を取って、「シークレットハンドシェイク」をするとか…。これは、みんなで手を重ねて、狼のように遠吠えをしながら腕を上げるルーティンなんです(笑)。そのあとは、メンバー一人一人と声を掛け合うようにしていますね。

自分の嫌なところがあったら、その代わりに好きなところを3つあげる

カーリー・レイ・ジェプセン Carly Rae Jepsen 来日 メンタルケア

――yoiの読者のなかには、他人と自分を比べてしまったり、理想の自分と現実の自分の差に落ち込んでしまうという声も聞きます。それでも前を向いて進んでいきたいと思っている方々に、カーリーさんならどんなメッセージを伝えますか?

カーリー 私がこんなに深い質問にお答えしてもいいのかしら…。でもやっぱり、自分と他人を比較することはすごく危険だと思っていて。“自分は人と違うからこそ、ユニークな存在である”と考えるのがいいと思います。他人と違うところこそ、素晴らしい。

私が子どもの頃、「自分の〇〇が嫌だ」と呟いていると母が必ず、「嫌な部分があってもいいから、その代わりに自分の好きなところを3つ必ず言いなさい」と言ってくれていたんです。そうすると、嫌なところが目についたとしても「髪の毛は好きかな」「そばかすは気に入ってるな」と、自分の好きな部分が浮かび上がってくる。“人と違う面を見つけるのは、とても美しいことだ”と気がつくことができるんです。

“自分が自分のいちばんの応援団である”ということを忘れないでほしいですね。

カーリー・レイ・ジェプセン Carly Rae Jepsen 来日 The Loneliest Time

取材・文/岸野恵加 撮影/山本恭平 企画・編集/種谷美波(yoi)