2023年7月の自身のセクシュアリティの公表をきっかけに「一人でいることが怖くなくなった」と語る與さん。きっとそれは、心の軸が“他人”ではなく“自分”にあるから。ネガティブになりそうなときの対処法を含めた、自分との向き合い方について伺いました。
最近、一人でいることが怖くなくなった
――カミングアウト直後の2〜3カ月はメンタルの状態があまりよくなかったとお話しされていましたが、その当時のお話を伺ってもいいですか?
與さん もちろん。僕は普段は“人と会いたいタイプ”なんですけど、自分のセクシュアリティについてファンのみんなの前で伝えようと決めた後の、2022年の終わり頃から、約1年間はずっと人に会いたくなくて。不安とかプレッシャーとか、いろんな思いが自分の中に積もっていたんだと思います。
――その約1年は、どんなふうに過ごされていたんですか。
與さん プライベートでは本当に信頼できる友達としか会わなかったけど、旅行に誘ってくれたり、そばにいてくれたり、たくさんサポートしてもらいました。自分でも、心のどこかで「ずっとこれが続くわけじゃない」と思いながら生きていましたね。
そういう時間を経験したことで、自分と向き合う時間ってすごく重要だなと思うようになりました。最近、一人でいることが怖くなくなったんですよ。
――というと、今までは一人が苦手だったんでしょうか?
與さん そうそう。一人でいると「俺、大丈夫かな…」って考えちゃって。でも、いろいろな経験をして自信がついたのか、一人で過ごす時間も楽しめるようになりました。ゆっくり映画を見たり、本を読んだりする時間の大切さを実感しています。
他人と自分を比べる癖が抜けなかった20代
――セクシュアリティにまつわる課題はたくさんありますが、ようやく日本でも少しずつ変化の芽が生まれはじめています。そうした変化が、“当たり前のこと”として社会に根付いていくには、どんな視点や意識がカギになると思いますか?
與さん 「(LGBTQ+の人は)まわりにいない」ってよく言われるんですけど、絶対にいるんですよね。ただ言えていないだけで、絶対にいる。LAに住んでいると、知り合いや友達、家族や同僚など、LGBTQ+の人と関わったことがない人はほぼいないんじゃないかな。それぐらい身近にいることが普通だから、逆に特別扱いもされないし、「だから何?」くらいの感覚で、それが心地よいというか。
ストレートの方たちが「本当はまわりにいるんだ」っていう意識を持ってくれるだけでも、結構変わるんじゃないかなと思います。特に日本はセクシュアリティを言えずに生きている人が本当に多いので、そこを理解してもらえるだけでも救われる部分があると思いますね。
――今、苦しみや悩みを抱えている方たちにとって、與さんのあり方はひとつの希望だと思います。
與さん 僕がそうだったように、どうしても「自分が悪い」って思っちゃうんですよね。だからこそ、当事者の人には「あなたは何も悪くないし、自信を持っていい」ってすごく伝えたい。
今はSNSもあるから、どうしても誰かと自分を比べちゃいますよね。僕もグループの中にいたから、まわりの人と比べる癖がなかなか取れませんでした。とらわれなくなったのは、本当にここ最近かな。今は“普通”って何?って思うし、「他の人と違うから超ラッキー」ぐらいの感覚です。
――そう思えるようになったのは何かきっかけが? それとも徐々に変化しましたか?
與さん やっぱりカミングアウトしたことと、その前後に自分と向き合ったことが大きいかな。「自分は自分。誰かと比べることなんてできない」って思えるようになりました。でも、渦中にいるときってなかなか気づけないんですよね。
本当の自分を認めてくれる人が一人でもいれば大丈夫
――今は情報がありすぎて、「自分らしさ」みたいな言葉に良くも悪くも振り回されてしまう側面もある気がします。自分との向き合い方、心地よさの見つけ方を含めて、ぜひメッセージをいただけたら。
與さん 「自分らしさ」が何なのか、どこにあるのか、わからなくなりますよね…僕もそうでした。でも、自分を褒めてくれたり、本当の自分を認めてくれたりする人が一人でもそばにいれば「自分は大丈夫なんだ」って思えるし、僕はその人たちのおかげで人生が変わりました。一人では絶対にここまで歩めなかったと思います。
あとは、自分と合わない人がいるってことを知っておくのも大事かな。全員と感覚が合うわけじゃないし、自分と意見が合わない人も世の中にはたくさんいる。そう思うようにすると、何か言われても気にならないし、すごく楽になりましたね。
――自分の心の境界線を守るということも、大事なことですね。
與さん そうなんですよね。自分の境界線を守りつつ、自信が持てるようになると、まわりの人にも優しくなれる。そこも自分の中で変わったことのひとつです。今までは相手に期待しすぎて心が削られたり、自分と違う意見にイラッとしたりしていたけれど、自分のことも他人のことも含めて、いろんなことを許せるようになりました。相手を変えようとするのではなく、自分が変わるように心がけています。
――與さんが自分をケアしたいときに愛用しているものがあれば、ぜひ教えてください。
與さん アイテムっていうよりも、運動と自然の中で過ごすこと。ちょっとネガティブになってるな…っていうときは、サイクリングしたり、走ったり、ハイキングをしたり、とにかく体を動かす。一人で考え込んでしまうタイプなので、外で体を動かして1回忘れる時間を持つようにしています。
――考えすぎないように一度離れるのですね。心や体のウェルネスにまつわることで注目しているトピックや、心がけていることはありますか?
與さん まわりはブレスワークをやっている人が多いかな。ストレスが溜まっていたり、緊張したりしていると呼吸が浅くなって、そこから結構ネガティブな方向にいきやすいから、そういうときこそ呼吸を意識するといいみたいです。僕も、イライラしたときは一旦外へ出て、深呼吸をすることで気持ちを切り替えています。
写真/松岡一哲 スタイリング/SUGI(FINEST) アシスタントスタイリスト/Shiori Nagayama(FINEST)、 Sayaka Suzuki(FINEST) ヘアメイク/Maki Sato 取材・文/国分美由紀 構成/渋谷香菜子