2023年、第一子を出産した三原勇希さん。後編では、産まれてきた赤ちゃんを初めて抱いた時の感想から、想像以上につらかったという夜の授乳、プロサッカー選手である夫・犬飼智也さんと大切にしているコミュニケーションのルールまで、じっくり聞きました。

三原勇希インタビュー

三原勇希
三原勇希

1990年生まれ、大阪府出身。雑誌『nicola』モデルとしてデビュー。tvk「sakusaku」で4代目MCに抜擢されるなど様々な番組に出演を経て、現在は音楽、映画、スポーツとカルチャーに強いライフスタイルを多才に発信し、ラジオパーソナリティや番組MCを務める。プライベートでは、2023年にプロサッカー選手の犬飼智也と結婚を発表し、同年9月に男児を出産した。

“産後あるある”だと知るだけで気持ちがラクになることも

——妊娠中、産後が不安な時期もあったとおっしゃっていましたが、今はいかがですか?

いま産後4カ月になるのですが、妊娠中に心配していたことは、実際に経験してみるといい意味でもまったく違いました。“意外と、ちゃんと子育てできるんだな”という実感があるし、何より日に日に我が子の愛おしさが増していて、大変さや不安よりもずっと、幸せな気持ちの方が大きいです。もちろんスムーズではまったくなくて、毎日わからないことだらけでアタフタしてますよ! 産後まもない頃は、心配だらけだし眠りは浅いしで、毎晩のように悪夢にうなされてました。でも、産後はよくあることみたいです。

産まれてすぐの頃はまったくと言っていいほど眠れないと、散々まわりから聞いて知ってはいたつもりだったけれど、実際に経験するとめちゃめちゃしんどい。ただ、本当にしんどい時は誰かが助けてくれるし、少しずつだけど必ずラクになっていくし、なんとかなります。経験する多くのことが“産後あるある”だと知るだけで気持ちがラクになりましたね。

帝王切開の傷が治ったのは3カ月後。散歩で筋肉痛になり、ショック…

——緊急帝王切開での出産となり、体のリカバリーにも時間がかかったのではないでしょうか。

体力には自信があったからこそ、こんなに回復しないのか!と落ち込みましたね。産後2カ月が経った頃にランニングをしてみましたが、傷が痛んだため中断。なかなか痛みが引かず筋肉はなくなったし、慣れない授乳や抱っこで姿勢も悪くなってしまって。産後はじめて長く散歩しただけで、眠れないほど筋肉痛になった時は、さすがにショックでした。でも何年もお世話になっているトレーナーさんの指導のもと、リハビリ感覚でトレーニングを始めて、4カ月目の今は、痛みもなくしっかり動けるようになりました。

——運動をできるようになって、精神面での変化はありましたか?

すごく変わりました! 心も体もスッキリして明るくなれますし、久しぶりに目が全開になったと思います(笑)。運動量は重要じゃなくて、たまにでも、ほんの少しでも体を動かせるだけですごくリフレッシュできます。たまに夫と一緒に走る時間が、最近の楽しみのひとつです。走るペースは全然違うのに、喜んで一緒に走ってくれる気持ちがうれしいですね。

三原勇希インタビュー キャリア

働く夫が羨ましくて八つ当たり。卑屈な自分に、さらに落ち込む日々も

——パートナーとは、子育てについて、どのように話し合っていますか? プロスポーツ選手という職業柄、気を遣う場面も多いのでは。

出産前に話し合い、夫は体が資本の職業だけど、里帰り出産はせず、新生児の時から二人で育児をしようと決めました。夜間もこまめに授乳しなければならない期間は、夫がしっかり眠れるよう寝室を別にしています。彼は朝が早い代わりに帰宅する時間が早いので、赤ちゃんを任せて昼寝させてもらっています。また、生まれてから数週間は私の母親が家事などをサポートしてくれたので、本当に助かりました。


それらは事前にしっかり話し合っていたので、大きなストレスにはならなかったのですが…やっぱりイライラして当たってしまうこともありました。でも人間誰でも、睡眠時間がとれないしわからないことだらけの状況でそうなってしまうのは当たり前だよな、と今振り返って思います。

——イライラしてしまうのは、どんな時ですか?

もうこればっかりは体力的に大変な時期だからですし、誰も悪くないんですけどね。しいて言うなら夫は毎日、外に出て、いろんな経験を重ねているじゃないですか。“自分はずっと家にいてすごく大変なのに、いいなあ”と、卑屈になって拗ねちゃうことが、産後1〜2カ月の頃はありました。夫と同じように外出したい、というのではないし、子どもはいつでも可愛くてたまらないのですが、“あなたはいいよね”と感じてしまうことや、夫に当たってしまう自分自身が嫌で、それ自体が一番のストレスになっているような気がしました。でも子育てに慣れてきた今は、子どもとずっと一緒にいられて最高!と本気で思っています(笑)!

——パートナーに当たってしまったり、意見がぶつかってしまった際、どのように関係を修復していますか?

「ありがとう」と「ごめんね」はどんな時もきちんと、1日に何度も言うようにしています。妊娠中から、お互いに気をつけていることのひとつですね。ちょっとしたことでも感謝し合うと気持ちがよくなるし、すぐに謝ると引きずらなくて済む。それだけで、だいぶいい関係を築ける気がします。お互いに言いやすい空気を常に保つようにしてますね。


そして私自身が、しっかりリフレッシュすること。近所を散歩したり、お風呂に入りながら本を読んだり、好きな音楽を聴いたり。子どもが生まれてから、些細なことに幸せを感じ、楽しむのがうまくなった気がします。世界の見え方も、発言する時の視点もかなり変わりましたし。

三原勇希インタビュー 出産

産後に世界を見る目が変わると、キャリアの考え方も変わった

——視点の変化について、具体的に教えてください。

子どもを産むまでは気付かなかった道の段差とか、音の大きさ、周囲の人との関わり方…全ての物事への感じ方が変わりました。そういう発見や学びに満ちた毎日なので、SNS等で発信する内容も以前とは変わったかもしれません。

——お仕事の幅も広がりそうですね!

まだできることを少しずつ受けている状況ですが、すでに求められることが変わってきた実感があります。今回のお仕事もそうですが、母親としての経験や意見を活かした仕事に挑戦できることは楽しみのひとつです。


また、浅野美奈弥ちゃんと立ち上げたランニングコミュニティ「GO GIRL」も、プログラムの幅を広げるべく模索している最中。結婚や出産を経てライフスタイルが変わっても、好きなことを続けられる!というメッセージを発信できるようなコミュニティに進化させたいね、と話しています。

——妊娠を知った際、ライフスタイルが変わることへの不安を感じたとおっしゃっていました。実際に多くの変化があったと思いますが、それについては現在、どのように感じていますか?

好きなことをできる頻度も時間も確かに減りましたが、「今まで通り」にできなくても全然いいんだ、という気持ちです。それに、最高に好きなこと=「子育て」が爆誕しました! これは自由人だった自分にとってまったく想像していなかったことで、人ってこんなに変わるものなんだな、と自分でも驚いています。仕事に関しても、本当にやりたいことだけ、家族にとって無理のないように全力でやる。それを持続していけるなら、母親になった自分にとって、ベストな生き方なのかなって。


かつては、楽しいことは全部やりたい!という性格でしたが、いい意味で、がむしゃらさが無くなったような気がしますね。出産する前は「諦め」だと想像していたことも、「いい変化」だと思うようになりました。

三原勇希インタビュー 母

お母さんだって一人の人間。強い時もあれば、弱い時もある

——妊娠を公表した際の投稿では、「強くなりたいと思った」という言葉が印象的でした。現在も、そう感じていますか?

それまで背負ったことのない責任を感じて、頑張らなきゃ!という気持ちもあったし、アクティブでパワフルな母ちゃんになりたいとも思っていたし(笑)。いろんな意味で、強くなりたかったですね。でも実際は、子どもを産んでさらに泣き虫になり、体もヘナチョコ。全然強くなれていない気がしますけど、毎日学びの連続ではあるので、成長してはいるんじゃないかな!?

母親になって感じた変化のひとつが、自分の母親を一人の人間として見るようになったこと。昔は母の機嫌が悪い姿を見るのが好きではなかったけど、母の大変さをほんの少し体験してからは、“そりゃそうだよね、お母さんにだって疲れる理由もあるよね”と思ったというか。同じ目線で、育児の悩みを共有できたのも不思議な感覚でした。母として見られるのもうれしいけど、母である前に、一人の人間ですから。強い時もあれば、弱い時もあるよね、って思うようになった。

——妊娠・出産に不安を感じている人に向けて、どのような言葉をかけたいですか?

一緒に頑張りましょう!かな…? まだまだ親としては新米ですし、正直に言うと、次から次へと不安は絶えません。私も絶賛、腰がいつ壊れるのか心配でたまらないし(笑)。でもそんな時はいつもまわりの人の優しさを感じられるし、子育てをしていると、それを何倍も上回るほどの楽しみができました。子どもがどんな性格に育ち、どんなことをして、その時々に私はどんな感情を味わうのか…想像するだけで泣けちゃいます。そして何よりも、我が子は本当に可愛くて、毎日幸せすぎます!

結婚しかり出産しかり、まわりの人がすごく喜んでくれて、それを見たら私もすごくうれしくなって。新しい喜び、愛情、仲間と出会い、私の人生はより豊かになりました。昔の私には想像もできなかった自分がいるから、本当によかった。心から、そう思います。

カーディガン¥126,500/ピリングス(ピリングス info@pillings.jp) リング¥9,900/ニナ・エ・ジュール(ショールーム ロイト 03-6859-8112)

撮影/岡本俊 スタイリング/藥澤真澄 ヘアメイク/蔵本優花 取材・文/中西彩乃 構成/渋谷香菜子