女性アイドルの健康課題をテーマにした著書『アイドル保健体育』を上梓している振付師の竹中夏海さんは、2児の出産を経た今年(2024年)2月、子宮内避妊システム「IUS」(以下一般名称ミレーナ)を装着。実行するまでの経緯と、装着から半年が経った現在の実感をお聞きしました。
ピルをやめてミレーナを選んだ理由
──ミレーナを知ったのはいつ頃でしたか?
竹中さん:私は若いときから生理が重いうえ、PMSに加えて生理中〜生理後にも頭痛があり、月の半分以上が体調不良といった具合。藁にもすがる思いで28歳からピルを服用してきました。
ミレーナの存在を知ったのは2020年頃です。著書『アイドル保健体育』の執筆にあたり、産婦人科の先生にお話を聞く機会が重なったときに、「なにやら子宮内に入れて生理痛を軽くするものがある」と。
さらに、愛聴している宋美玄先生のポッドキャストにも何度かその名前が登場していたんです。そこで聞いた「ミレーナを入れれば経血量を抑えながら閉経へとスムーズにシフトできる」という話がまさに理想的で、その頃から試したいと思い続けていました。
──実際にミレーナを入れるまでの経緯を教えてください。
竹中さん:ミレーナに出会う少し前、35歳を超えて妊活を始める際に一度ピルをお休みして、第1子・第2子を授かりました。第1子の出産後に生理が再開したときもすぐにミレーナのことが頭の中に浮かびはしたのですが、あまり間を空けず2人目を望んでいたこともあり、そのときは見送ることに。でも生理の再開が予想以上に早くてげんなりしましたし、出産直後で膣が広がっていたり、骨盤底筋のゆるみによる子宮下垂の影響もあったりしたせいか、産前から使っていた月経カップが下りやすくなってしまうしで、もう早くミレーナを試したくて試したくて。第2子を産んでからは、今か今かと待ち構えているような状態でした。
ベストタイミングと夫の「いいじゃん!」
──リスクやデメリットでミレーナを入れるか迷った部分はありましたか?
竹中さん:初期の不正出血と、定期的に婦人科に通う手間がかかること、それから、PMSには効かないということは理解していました。でも、生理を軽減するために毎日ピルを同じ時刻に飲まなくちゃいけないストレスと天秤にかけたらミレーナが圧勝で、あまり迷いはありませんでした。
産婦人科の受診頻度は、私の場合は、装着1年目は小刻みに1カ月後・3カ月後・6カ月後・1年後と決まっていて、もうすぐ3回目の受診のタイミングがやってきます。2年目以降は年1回でよくなると聞いています。
定期健診は、内診台に座って先生にミレーナの位置を確認してもらうだけで、痛みはまったくなく、いつもすぐ終わります。最初のうちは不正出血など何かしら不安なことが出てくると思うので、個人的には決まったタイミングで検診があると先生に相談しやすく、心強いと思っています。
──ミレーナについて、ご家族やご友人に相談はされましたか?
竹中さん:「夫から“自分の妻の体によくわからない器具が入っているのは嫌だ”とミレーナを否定されてしまって......」という相談を受けたことがあるのですが、自分の体のことなんですから、大前提として入れる・入れないは主体的に決めていいと思っています。
ただ私の場合はまもなく40代に入るということもあったので、 第2子の出産後、まずは夫と「3人目についてはどう考えてる?」という話をしました。「年齢的なことや私の意見は一旦脇に置いて、正直に、どう?」って。
そうしたらそのときは、夫にも私にも積極的な「欲しい」気持ちがないね、と確認できたので「それじゃあ、先のことはわからないけど。もしかしたら、やっぱり3人目にトライしたい、最後の最後にもうワンチャン!みたいになるかもしれないけど。私、今度こそミレーナ入れようと思ってるんだ」と伝えました。以前からミレーナの装着願望を伝えていたこともあり、夫も「いいじゃん!」と言ってくれました。
待望のミレーナ装着当日
──実際の施術はどうでしたか?
竹中さん:私は最初、第2子出産後2回目の生理が終わってから1週間後、つまり経血が全部出終わってから婦人科を受診したのですが、そのときはすでに子宮内膜に厚みがあって入れられなかったんです。ミレーナは入れるタイミングが大切で、体が次の生理の準備を始めてしまっているときに入れても出てきてしまうことがあるらしく。「次の生理が来て4日目ぐらいにもう一度来てくださいね」と言われ、2度目の受診でようやくミレーナを入れることができました。
施術は2、3分で、本当にあっという間に終わりました。産後すぐで子宮口がちゃんと開いていたこともあり、痛みもまったくありませんでした。麻酔の有無を選択できるクリニックだったのですが、産後4カ月ということを伝えたら「余裕ですね!」と。経産婦は麻酔不要な方が多いみたいです。
施術後は、ワクチンなどと同様に少し気持ち悪くなることがあるので、20分ほど休んで様子を見てから帰宅するよう言われました。すると装着した直後から、普段の生理時にもあるズンとした重い腰の張りと、ズキズキした頭痛がありました。市販の痛み止めを飲んでも効かず、まるで「血が出てないけど生理中」というような症状が2〜3日続いたんです。入れた直後はあり得ることだとわかってはいましたが、実際に身に起きると「ラクになるために入れたのに、これはいつまで続くんだろう」と不安な気持ちに。数日後無事治まったときはホッとしました。
──費用はいくらかかりましたか?
竹中さん:領収書を見たら、保険適用で自己負担額は11000円でした。これで5年保つので1年あたり2200円くらい。以前にピルを処方してもらっていたときは年間3〜4回婦人科を受診して、その都度1万円くらいかかっていましたので、年間の出費は4万円前後。費用がピルの20分の1と考えると、ミレーナのほうが断然お得です!
装着から半年。劇的な変化を実感!
──装着から半年が経った現在の生理はどのような状態ですか?
竹中さん:ミレーナ装着後からこれまでに生理は計3回ありました。最初の生理は「いつも通り」というかんじで、劇的な変化はなかったんです。強いて言えば今までより痛みは軽かった気がしますが、出血量の体感は変わらず、頭痛もあって。「ミレーナ入れたはずなのになぜ......」と。
変化を感じたのは装着後2回目の生理前。これまでほとんど誤差のなかったルナルナの生理予測日から4〜5日も遅れて2回目が来たんです。しかも、そのときは最初から血がほとんど出ず! 月経カップもナプキンも使わず、吸水ショーツだけで過ごせましたし、生理期間自体も短くなって、4日程度で終わってくれたんです。これまで毎回しんどかった最初の3日間が、急にまるっとなくなったかんじです。
3回目までの間はもっと長く6週間くらい空いて、そのときも生理なのか不正出血なのかはっきりしないくらいのレベルでした。トイレに入ったとき、ほんの少しトイレットペーパーに血がついていたので、それから吸水ショーツにはき替えて十分間に合いました。今はまだいつ生理が来るのかわからない不便さはありますが、経血量自体が少ないので急に始まっても慌てずに済みますし、常にナプキンを携帯しておく必要もありません。
吸水ショーツがメガネなら、ミレーナはICL
──いいこと尽くしですね!
竹中さん:本当に、生活が劇的に変わりました!
生理への対処法を、視力を補うものに置き換えて考えるとわかりやすいかもしれません。例えば、はくだけでいい吸水ショーツは、かけるだけでいいメガネと同じ。毎日取り外しできる月経カップはコンタクトレンズ。そうするとミレーナはICL(眼内コンタクトレンズ)でしょうか。どれも試すまで・慣れるまでに不安や違和感がありますが、一度なじんでしまえば手放せなくなるくらい便利なものですよね。
私は今のところ体内にあるミレーナに違和感はなく、肌荒れなどのトラブルもなく、「生理に縛られない生活ってこういうことなんだ、最高!!」状態です。5年ごとの交換を繰り返して閉経までフェードアウトを目指しています。
構成・取材・文/月島華子