お笑いトリオ・ハナコとして活躍の場を広げ続けている秋山寛貴さんは、実はいまでも人前が大の苦手だと言います。そんな秋山さんが、同じく人前が苦手というyoi読者から届いた4つのお悩みに回答。あらゆる人前シーンに関するお悩みに「どれもめちゃくちゃわかるな……」と頷きながら聞いてくださった秋山さん。芸人ならではのアドバイスを頂きました。
スピーチやプレゼンが苦手。大勢の前に立つときの緊張への対処法は?
【お悩みその1】パーティでのスピーチや職場でのプレゼンなど、たくさんの人から注目を浴びる場面があると緊張して動悸がしたり、顔が赤くなったりしてしまいます。頭が真っ白になってしまい、自分でも何を言っているかわからない状態で出番を終えることが多いので、大勢の前に立つときの緊張への対処法を知りたいです。
秋山さん パーティとか僕もめちゃくちゃ苦手なので、気持ちはよくわかります。実行しにくさレベルで言ったらマックスですけど、「とにかくたくさんパーティに出てみて、顔を真っ赤にすることに慣れる」(笑)っていうのは解決策としてひとつあると思うんです。緊張しているときの自分に慣れる。
人前に立って緊張してるときって、自分がどの要素に対して緊張してるかわからないじゃないですか。スピーチの場合、進行台本があることにも緊張するだろうし大勢の人が見ていることにも緊張するだろうし、自分を緊張させる要素が複数あると思うんです。だから緊張の原因を細分化していって、「これは知ってる段取りだ」って思えたら、ちょっとだけ緊張が減るんじゃないかなと思います。
僕も仕事でMCやラジオのパーソナリティーをするようになって、もともとは苦手だった台本読みや進行が少しだけ板についてきた感覚があるので、たぶんいまパーティとかで急に進行台本を渡されてもそこまで緊張しないと思うんです。やることがなんとなくわかっているから。
それから、スピーチやプレゼンの場合は、自分が喋っている映像を事前に録画してみるのも手かもしれないですね。僕もネタの録画はよく見返すんですが、自分の姿を見慣れておくだけでも緊張が多少和らぐと思います。映像に撮ってみたら自分の想像とは違う動きをしていることってよくあるので、思ってるより早口だなとか俯きがちだなとか、気づくことも出てくると思うんですよ。
客席からの見え方の印象が変わるだけで、緊張やプレッシャーの一因になっているであろう場の空気も少しよくなると思うので、録画は一度試してみてほしいですね。
人前で自分が主役になることに耐えられない。お祝いの場をどう乗り切ればいい?
【お悩みその2】結婚式や誕生日会、職場の昇進祝いなど、自分が主役になる場がとても苦手です。人に祝われる場面が苦手な人は、そういったシーンをどう乗り切ればいいのでしょうか?
秋山さん めっちゃわかるな……。人前は苦手だけど、一方でみんなが喜ぶ主役をちゃんと演じなきゃって思っちゃうんでしょうね。これは僕も解決していないというか、この方とまったく同じ地点に僕もいるかもしれないです(笑)。誕生日会とはいかないまでも、レギュラー番組のスタッフさんが誕生日にケーキを用意してくれたりすることがあるんですけど、可愛げのある喜び方ができないというか……。変に取り繕ってしまいがちですね、僕も。
でも、それを思い切って口にしてしまうというのはひとつのテクニックかもしれませんね。「リアクションが薄くてごめんなさい、でも嬉しいんです」とか、「いま自分でも何言ってるのかわからないです、頭真っ白になりました」とか、そういうことは吐露してしまったほうが場の空気がよくなる可能性が高い。緊張しているのがバレないようにちゃんとやらなきゃ、という真面目さで苦しくなることが多いと思うので、いっそ全部言ってしまうのはアリだと思います。
人前での失敗を後悔して眠れなくなってしまう……。対処法はある?
【お悩みその3】内向的なので、たくさんの人が集まる飲み会や職場のプレゼンなどがあった日の夜は、「自分はトンチンカンなことを言わなかっただろうか」「相手を不快にさせなかっただろうか」と不安と後悔で眠れなくなってしまいます。人前での失敗をあとから何度も思い返して悩んでしまう人はどうすればいいと思いますか。
秋山さん いや、これも本当によくわかるな……僕と同じタイプの人がこれほどたくさんいることにホッとしてます、いま(笑)。僕もそうですけど、失敗を思い返しちゃう性格自体はたぶん直そうとしても簡単には直せないと思うんです。
だから僕の場合は、人の集まる場にいた相手にもう一度会ったタイミングで、ひと言弁解するようにしてますね。ほとんどの場合、向こうは何も気にしてないんでしょうけど、自分が安心するために口に出します。「僕の最初の挨拶、たぶんオドオドしてましたよね?」とか、「この前僕、緊張で変なこと言ってませんでした?」とか。相手はおそらく「全然そんなことないよ、心配しすぎだよ」って言ってくれると思うんですけど、わざわざそれを伝えることでマイナスの印象になるケースは少ないと思うんです。たぶん、「あの時失敗しちゃったな……」という自分の気持ちの行き場がないのが一番ストレスになると思うので、その場にいた相手にもう一度会える場合は、口に出しちゃってもいいと思います。
会議や勉強会で司会をする機会が増えてきた。場の仕切り方のコツを知りたい!
【お悩みその4】管理職に就き、会議や勉強会などを仕切る場面が増えてきました。司会として、発言のタイミングや人の話をまとめるタイミングにいまだに悩んでしまいます。秋山さんは芸人さんとしてMCをしたり大勢の中で発言したりすることも多いと思いますが、話し出すタイミングや場の仕切り方などをどう意識していますか?
秋山さん 仕切り方って難しいですよね。大勢の芸人が出演しているライブで進行役をするときとか、僕もいまだに悩みます。いろんな芸人が喋り始めちゃって場がとっ散らかってしまったとき、自分なりに気の利いたことを言ってオチをつけようとしてるのに、周りに声量で負けてどうにもならないなんてことはこれまでにも何度もありました。進行がうまい人は、そこでひと言何か言うだけで場を仕切れるんですよ。でも、まず簡単には真似できないですよね。
そういう時、僕は2回くらい何か言ってみても場が収まらなかったら、すべてが終わるのをただただ待ちますね(笑)。あと、表情を曇らせて大きく両手を振る。それでちょっと笑ってくれるお客さんもいるし、芸人の誰かが気づいて「おい、秋山が悲しい顔してるぞ!」って流れを戻してくれることもあるので。だから悲しい顔をして周囲を心配させると、周りは笑ってくれるかもしれないですね。……これに関しては芸人しかできないやり方かもしれないですけど(笑)。
撮影/酒井優衣 スタイリスト/川崎英治 構成・取材・文/生湯葉シホ 企画/福井小夜子(yoi)