俳優・小林聡美さんのエッセイには、小林さんが好奇心の赴くままいろいろなことにチャレンジし、世代を問わずさまざまな友人たちと交流を持つ様子が綴られています。インタビュー後編では、そんな小林さんに「友達付き合い」や「人間関係」についてのヒントをお聞きしました。

 小林聡美

俳優

小林聡美

1965年東京都生まれ。1982年『転校生』(大林宣彦監督)でスクリーン デビュー。以降、ドラマ、映画、舞台などで活動。執筆も手がけ、著書多数。2024年には歌手として初コンサートに挑戦。放送中のドラマに『法廷のドラゴン』(TV東京)、2月から『ゴールドサンセット』(WOWOW)が放送予定。

中学校の友人との年1回のごはん会は大切な機会

小林聡美 ポートレート インタビュー 友達

──小林さんのエッセイを読んでいると、長年のお友達と旅行や習いごとを楽しまれているエピソードがよく出てくる印象があります。

小林さん でも、しょっちゅう会う友達ってそんなにいないんですよ。距離感も大人になってきたというか。日常的にベタベタしているわけではないけれど、ちょっと思い出したときにメッセージを入れてみたりして、ゆるく付き合いが続いている友達が多いかもしれないですね。

──女性は20代後半から30代にかけて結婚・出産などでライフステージが変わる人も多く、yoi読者からも、仲のよかった友人に気軽に連絡がしづらくなったという声をよく聞きます。小林さんは、お友達と長く交流を続けるために何か意識されていたりしますか?

小林さん 30代って特に、それぞれの生活がいろいろと変わる時期だから、友達とも疎遠になりがちな年代かもしれないですね。私の場合もそうでした。でも、もうずっと昔から、中学校のときの友達のグループで必ず1年に一度決まった時期にごはんを食べるって決めてるんです。お店を選ぶ人も毎年、交代で替わるようにしていて。

1年に1回ってちょっと七夕みたいですけど(笑)、忙しく働いている友達も多い中で貴重な機会だし、昔よりも共感し合えるものが大きくなってきて、毎年会うのが楽しみなんです。

共通のセンスがある人とだったら、年齢関係なく友達でいられる

小林聡美 インタビュー 俳優 ポートレート 人間関係

──小林さんは、日々の生活やお仕事の中で人間関係に悩むことはありますか? 「苦手だな」と感じる人が身近にいたりお友達と意見がぶつかったりしたとき、どのように対処しているか聞きたいです。

小林さん たとえば、相手が仕切りたがりで自分がそれにイラっとするのだとしたら、その人に仕切られるようなシチュエーションをつくらないようにするとか、そういう工夫はするかもしれないです。基本的には相手は変わらないから、自分が変わるしかないんですよね。

ずっと仲のいい友達でも、「なんか最近、私、この子にマウントとられてる……?」みたいなことが続いたりするときってありませんか? そんなときは、相手もいまちょっと疲れてるのかな、と考えるようにしてます。そこで結論を出そうとは思わず、そっと距離を置いたりするかも。

──縁を切ろうとしたりはせず、すこし距離を置いてみるんですね。

小林さん そうですね。普段は気も合うし優しい相手なんだけど、どうも最近はうまくいかないな……なんてときは、ちょっと時間を置いたらまた何か変わるかもしれないじゃないですか。友達とはいえあんまり相手に依存せず、弁えた付き合いができたらいいなとは思っています。

──小林さんには、世代の違うご友人も多いですよね。大学に通われていたときの若いお友達や、89歳のお友達と旅行をされたこともあるとのことですが、世代の違う友人との付き合い方には気を遣う人も多いと思います。何か意識されていることはありますか?

小林さん 無理に相手の世代観に合わせようとせず、プレーンな自分でいようとは思っています。もちろん、私より年上の先輩に対しては、後輩として失礼のないように心がけますが、必要以上に気を遣いすぎないというか。

私が大学に通っていたときの同級生たちはいま30代前半くらいなので、お母さんと子どもくらい歳が離れているんです。だから一緒に旅行に行って、自分だけ疲れちゃって歩けない、みたいなときは素直に「私はホテルで待ってるから行ってきて!」って言います。

世代によって知らないことがあるのは当然だし、友達だからといって、まったく同じものを見たりまったく同じ感情で盛り上がったりする必要はないと思うんです。無理をせずプレーンな状態でいても、何かを見て一緒に笑ったりすることはできると思うし、そういう共通のセンスがある人とだったら、年齢関係なく友達でいられる気がしていますね。

たくさんの友達をつくろう、友情を長続きさせようと考えすぎないほうがいいのかも

小林聡美 インタビュー ポートレート 友人関係

──歳を重ねるにつれ新たな友人がつくりにくくなってきて、人間関係が固定化してしまったり、友人との交流が減ったりすることに悩んでいる人も多いように思います。小林さんはそう感じられることはありますか?

小林さん ひとりで活動するのも好きなので、そんなに悩まないかな……。でも、友達っていろいろですよね。いまはあんまり会わないけど、ある時期だけすごく仲良くしていた友達だって大事な友達だし。たくさんの友達をつくろうとか、友情を長続きさせようってあんまり考えすぎないほうがいいのかもって思います。縁が残る人とはちゃんと残りますから、あんまり心配しすぎなくてもいいんじゃないかなって。

いくつになっても新しい流れってやってくると思うんです。いままで興味がなかったことに急に興味が湧いて、活動範囲や人間関係が広がったり。

──小林さんの場合は、たとえばどんなことに興味が湧いてきたのでしょうか?

小林さん 30代までは、ライブに行ったりすることってほとんどなかったんです。でも、40歳くらいのときにある曲を聞いて「生で聴いてみたいかも!」と突然思い、それから頻繁にライブに足を運んだりするようになって。30代までは自分がそんなタイプだって思っていなかったから、自分でもちょっと驚いたというか。

でも自分の趣味や本当の自分らしさが解放されていくのって、そのくらいの年齢からなのかもしれないって思います。20代や30代ってきっと、なりたい自分ややりたい仕事を追いかけるのに精いっぱいな年代だけど、40代くらいになると肩の力がちょっと抜けてくるというか。そのあたりからオリジナルの自分、素の自分にすこしずつ戻っていくのかもなって。

変わっていく自分を、その都度その都度楽しむ心持ちでいればいい

小林聡美 インタビュー ポートレート 全身

──40代はオリジナルの自分にすこしずつ戻っていく年代、というのはとても素敵ですね。

小林さん でも実際にそうだと思いますよ。それまでは、いま振り返ると自分にプレッシャーをかけてたかもしれないなって感じます。60歳がすぐそこまで見えてくると、さらに肩の力が抜けてきて「できないならしょうがないじゃん」って素直に思えるようになるというか。つらいときって、自分で自分を追い込んでつらくなっていた側面もあったんだろうなといまは思います。

──周りを見ていても、歳を重ねてより自由にいろいろなことを楽しまれている印象の方は多いですか?

小林さん そうですね。より個性的でいることが許される空気っていうか、お互いを認め合えるようになってくる気がするんです。みんなで力を合わせてひとつのことを成し遂げなきゃいけないようなシチュエーションが徐々に少なくなってくる分、それぞれ歩幅もばらばらになってきて、その人らしさが際立つのかもしれないですね。

友達との付き合い方や好きなことの楽しみ方って、年代によってどんどん変化していきますから。そのときの自分をその都度その都度楽しむという心持ちでいればいいんじゃないかしらって思います。あとは健康でいること!

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撮影/石田真澄 ヘア&メイク/北 一騎 スタイリスト/藤谷のりこ 構成・取材・文/生湯葉シホ 企画/福井小夜子(yoi)