ミュージカル『ウェイトレス』で、夫婦関係や予定外の妊娠に悩み、現状を変えたいと願うヒロインに扮する高畑充希さん。これまで自身を救ってきた大切なものや、対等な人間関係を築くコツ、そして人生で大きな影響を受けているご両親について語っていただきました。

20代の頃は旅が自分を救ってくれていた

──お忙しい日々をお過ごしだと思いますが、高畑さんは普段どのように自分を癒していますか? また、現状を変えたいと感じたときに自分を取り戻す方法は?
高畑さん:うちには猫が2匹いるのですが、帰宅して暴れ回っている姿を見ると、どんなに疲れて帰っても、「なんでもいいや!」って思えるんです。毎日すごく癒されていますね。
今いる環境がよくないと感じたときには一人旅へ出かけます。知らない人しかいない土地でいろんな冒険をするとワクワクだけが残るから、20代の頃は旅が自分を救ってくれていたと思います。
ニューヨークのブロードウェイやイギリスのウエストエンドにミュージカルを観に行ったり、古着屋巡りをしたり。まったく計画を立てずに電車に乗って、行けるところまで行ってみたりもしました。
──旅先で失敗した経験は?
高畑さん:もちろんうまくいかなかったことはたくさんあります。空港で名前を呼ばれたり、カートに乗せられたり……(笑)。人はそれを失敗と呼ぶのかもしれないけれど、私にはその概念が若干欠けているみたいで。「え、めっちゃウケる」「おもろ!」みたいになっちゃうんです。
だから舞台も好きなんでしょうね。映像作品に出ている俳優さんからは「舞台って緊張するでしょ」「セリフ飛んだらどうするの?」と言われることがすごくあって。
私はセリフが飛んだことはあまりないのですが、歌詞が飛んだことは何回もあるし、飛んだときは自分で作詞して、「ドヤ!」って顔で歌っていたら意外とバレなかったりします(笑)。舞台に出ない時間が続くと息ができない気持ちになるくらい、私にとっていちばん好きな仕事だなと感じています。

芯を食った話ができる友達は限られている
──ジェナはウェイトレス仲間とのあけすけなガールズトークの中で励まし、励まされていきます。高畑さんは、ご自身の悩みをお友達とどのようにシェアされていますか?
高畑さん:ちょっと嫌なことがあったときやグチを言いたいときは、オチのある話として面白く話します。あまり深刻にはなりたくないから、お酒を飲むときの肴にしちゃいますね。
ただ、ほとんどのことにあまり悩まないから、普段は本当に相談をしないんです。 考え方がドライな部分もあって、大抵のことは「なんとかなる」と思っているし、3日たっても覚えていることってそんなにないというか。「生きていればそれでいい」と心のどこかで思っているから、悩みづらいのかもしれないです。
本当にたまりにたまると「もういい!」と勢いですべてを更地にしたくなっちゃうタイプで。3〜4年に一回くらい、本当に悩んだときは、親友に「ちょっと聞いてくれ」と話をします。
親友は私と同じくらいサバサバした性格なので、客観的な意見で私の勢いを一度止めてくれます。仕事柄、知り合いは多いけど、芯を食った話ができる友達は限られているので、年々その存在の大切さを感じています。
──ドライな性格ということですが、誰かに依存したくなることは?
高畑さん:本当にないですね。もちろん一時的に寄りかかったり甘えたくなることはあるけど、その関係がずっと続くことはなくて。一人っ子だし15歳で上京しているので、自分で機嫌が取れちゃうんです。
相手に頼ったり甘えたりする感情の比率って、あまりにバランスが悪いとガタガタしてきちゃうじゃないですか。女子校時代から一人でも平気なタイプだったので、依存するよりも逆に依存されることが多かったかもしれません。
友情のバランスが悪いと思ったら、傷つけないように相手に伝えて一度距離を置くようにしていました。それで友達が減ることはなかったし、ちゃんと気持ちを言葉にしていたので、わりとストレスフリーでいられた気がします。

父はどっしりとして大胆。母はすごく心配性
──その性格は誰からの影響ですか?
高畑さん:精神的に影響を受けているのは父ですね。私に見せる姿はすごくどっしりとしていて、いろんなことに対して大胆。会社を経営していて大きな出来事を動かさなければいけないのですが、「失敗してもなんとかなるだろう」っていう精神の人だから、落ち込むこともないんです。
自分が作品の座長をやるようになってからは特に、そんな父の姿に影響を受けています。
逆に母はとっても心配性。私の更地にしたくなる癖についても毎回心配されます(笑)。ただ、何かを育てたり、面倒を見たり、誰かのために尽くすことはすごく上手な人。
父のようなメンタルを自分の中にすごく感じつつも、これからは母みたいな細やかな優しさに影響を受けていけたらいいなと思っています。
ミュージカル『ウェイトレス』

4月9日(水)〜4月30日(水)
東京(日生劇場)、愛知、大阪、福岡にて上演。
出演:高畑充希、森崎ウィン、ソニン、LiLiCo、水田航生、おばたのお兄さん/西村ヒロチョ(Wキャスト)、田中要次、山西惇
脚本:ジェシー・ネルソン
音楽・歌詞:サラ・バレリス
原作映画製作:エイドリアン・シェリー
オリジナルブロードウェイ演出:ダイアン・パウルス
製作・主催:東宝/フジテレビジョン/キョードー東京
共同製作:バリー&フラン・ワイズラー
カーディガン¥88000、ブラウス¥86900、スカート¥121000、ベルト¥38500/すべてN21(IZA)、イヤリング¥32450/Soierie(ソワリー)、リング¥47300/MAYU(MAYU SHOWROOM)
撮影/SAKAI DE JUN ヘア&メイク/小澤麻衣(mod's hair) スタイリスト/菅沼愛 取材・文/松山梢