ドラマや舞台上で唯一無二の輝きを放つ、吉田羊さん。今では見ない日はないほど人気ですが、キャリアの転換期は30代、不安な気持ちになることもあったと言います。吉田さんの人生におけるターニングポイントや、俳優という仕事に対してのモチベーションの保ち方を伺いました。

吉田羊 俳優 ポートレート

吉田羊
吉田羊

俳優。福岡県出身。5人きょうだいの末っ子として育つ。大学在籍中に小劇場の舞台に立ち、デビュー。その後、演劇プロデュース集団「東京スウィカ」を旗揚げ。2008年NHK連続テレビ小説『瞳』の演技が俳優・中井貴一の目に止まり、映画やテレビドラマで活躍することに。第39回日本アカデミー賞助演女優賞、第24回読売演劇大賞優秀女優賞など受賞歴多数。著書に『ヒツジメシ』や、『ヒツジヒツジ』がある。

不安なときこそ「今の仕事を辞められるのか?」と自問自答する

吉田羊 インタビュー 映画

——俳優という仕事は体力的にも精神的にも大変なお仕事だと思います。モチベーションを保つためにされていることはありますか?

吉田さん:いまだ自分にとって自信作、代表作と呼べる作品がないんです。そういうものにいつか出合ってみたいという思いと、まだ見ぬ自分を見つけたい、という気持ちで頑張っています。英会話もそうですけど、そのためには今やれることをコツコツやるしかないと思っています。努力をした先に、自信作があるのかなと。

英語のほかには、今年こそ日舞に挑戦したいと思っています。20年くらい前に一度習ったことがあったんですが、3カ月ほどでやめてしまって……。着物が好きということもあって、改めて美しい着物の所作も身につけたい。日舞が踊れたらかっこいいですよね。

——「yoi」の読者は20代〜30代が多いです。30代というとまわりも含めライフステージが変わる時期でもあり、キャリアについて悩んでいる方も多いです。吉田さんはどのような30代を過ごされましたか?

吉田さん:30代で舞台から映像の世界に移行したので、私の人生のターニングポイントは30代にあったのだと思います。 小劇場の世界にいた頃は、お金にはならなかったけど、本当に楽しかったし、純粋に芝居することを楽しめていた時期でもありました。

なので、映像作品に出演させてもらえることになったときはうれしかったし、わくわくした半面、劇団を辞める決意をしたこともあり、痛みを伴う「ジャンプ」でしたね。

そのとき、俳優の先輩がかけてくれた「誰しもがこのチャンスを得られるわけではないんだぞ。それがお前のもとにやってきたということは、それは(映像の世界に)行くべきタイミングなんだ」という言葉は、どれだけ心強かったかわかりません。

それまでは俳優という仕事に対して、辞めたいなんて思ったことがなかったんですが、小劇場の世界を離れて10年以上経ってから、「はたして自分は俳優として必要とされているんだろか」という絶望的な感情が生まれてしまうことがあって。

今って、良くも悪くもSNSでさまざまな意見が可視化されちゃうじゃないですか。だからネガティブな感情にかきまわされてしまうことがあるんです。不安なときこそ、自ら否定的な意見を探しにいっちゃうこともあり、悪循環ですよね。

吉田羊 キャリア インタビュー

——キャリアを積んで、評価もされていて、ファンの方々もたくさんいらっしゃる吉田さんでも、不安に押しつぶされそうになってしまうときがあるんですね。

吉田さん:あります、あります。不安な気持ちに支配されそうになったら「じゃあ、俳優という仕事を辞められるのか?」って、自問自答するようにしているんです。そうすることで、辞めてしまうほど芝居を嫌いになれない、結局私は芝居が好きなんだという気持ちに向き合えるんです。

こうやって自分を鼓舞しながら「やっぱりこの仕事が好きだ!」という感情に気づけるうちはまだ大丈夫かな、と思っています。

元気でいるために「好き」という感情を尊重する

——吉田さんは着物や、食、旅など多くの趣味をもっていらっしゃいます。趣味を持つことは潤いのある暮らしにつながりますか?

吉田さん:趣味を持つことで、能動的に自分の人生を好奇心や好きなものでいっぱいにすることができると感じています。オンオフのスイッチにもなりますし、楽しみだけでなく目標になることもある。何より出会いが広がっていくのがいいですよね。想像していなかった扉が開いていくというか。

また、衣服も食も生きていくうえで必須な要素なので、その部分が豊かになっていくと、自然と日々の暮らしが楽しくなってくる感覚があります。

吉田羊 着物 趣味

——吉田さんご自身の溌剌とした姿に元気をもらっている方も多いと思います。趣味のほかに心身の健康のためにしていることはありますか?

吉田さん:自分の中にある好きという感情を大切にすることかなぁ。心が疲弊する物事とかかわるほど私の人生は暇ではないと考えるようにして、どっちが好きかな、どっちがワクワクするかなというのを判断基準にするようにしています。

体の健康という面でいうと、ランニングはずっと続けています。体を動かすと、気持ちがいいのはもちろん、脳が連動して思考が健やかになる感覚があります。

落ち込んだときは、散歩したり軽く走ったりして、頭をすっきりさせるんです。ランニングを続けていたからこそ、「心の健康は後からついてくる」と体感できました。

映画『パディントン 消えた黄金郷の秘密』

映画『パディントン 消えた黄金郷の秘密』吉田羊

5月9日(金) 全国ロードショー
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STORY
ロンドンでブラウン一家と平和に暮らしていたパディントンのもとに、育ての親のルーシーおばさんの元気がないという便りが届く。パディントンとブラウン一家がペルーへ行くと、ルーシーおばさんは失踪、里帰りは一転、彼女を探す冒険に。パディントンを待ち受ける「消えた黄金郷の秘密」とは?

ジャケット¥140800 ドレス¥140800/ともにHARUNOBUMURATA(ザ・ウォール ショールーム 050-3802-5577) リング¥171600、リング¥189200、ピアス左¥57200、ピアス右¥36300/Hirotaka Jeweiry(Hirotaka 表参道ヒルズ 03-3478-1830)

撮影/SAKAI DE JUN ヘア&メイク/井手真紗子 スタイリスト/石井あすか 取材・文/高田真莉絵 構成/渋谷香菜子