「yoi」読者のみなさん、こんにちは。集英社yoiエディターズ、すばる編集部Kです。今回は、文芸誌「すばる」2024年1月号掲載の小説、石田夏穂さん「世紀の善人」をご紹介します。【集英社yoiエディターズリレーvol.13】

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集英社すばる編集部

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現在は文芸、すばる編集部に勤務。
偏食・運動嫌いと健康をなんとか両立させたい今日この頃。気分転換には水辺に行きます。

石田夏穂氏の新作小説!「世紀の善人」が掲載

「すばる」は文芸誌と呼ばれる雑誌で、小説、エッセイ、論考、対談、インタビューなどを掲載しています。毎月6日に刊行していますので、今後どうぞお見知りおきください!


なかなか文芸誌を手に取る機会は少ないと思いますが、読んでみると面白くて、中身がぎゅっと詰まったものばかり。yoiエディターズリレーの場を借りて、こんな連載・企画がありますよ~とご紹介していければと思います。今回は、「すばる」2024年1月号掲載の石田夏穂さんの小説「世紀の善人」についてです!

すばる すばる文学賞 本 雑誌 純文学 石田夏穂

1月号表紙はこんな感じ。今月は新年号、児童文学の特集です。

著者の石田夏穂さんは、2021年に『我が友、スミス』ですばる文学賞佳作を受賞し、デビュー。その後も続けて、小説作品を上梓され、賞の候補に選ばれています。


例えば、会社員がボディ・ビル大会に出場する、前代未聞の筋トレ小説として話題になったデビュー作『我が友、スミス』、冷え性の会社員が発見した驚きの「温活」方法を描く『ケチる貴方』、「会社に不利益になる人間を採る」ことで会社への復讐を始めた人事部社員『黄金比の縁』……など、ユニークな設定とその設定をひょいと超える驚きの展開が待つ作品たち。(好評発売中です~!)


作品に共通した魅力は、「働くひと」をものすごい解像度で描いているということです。なかでも、組織で働く会社員に対する観察眼はピカイチ。

若手社員の慟哭を刮目して見よ!

新作小説の「世紀の善人」のあらすじを紹介しますと、


三國造船、通称「サンゾウ」に勤める入社6年目の主人公・安井は、オフィスの雑事、コピー、スキャン、ファイリング、電話番、照明のつけ消し、応接室の予約、お茶出し、土産物の配布etc.が「必ず」自分のもとにやってくることに気がつく。ある日、各部署内で最も立場の弱い人間が集められた「サンゾウ労働組合」会合に赴くと、今期の組合目標が「メンタルヘルス」であると発表される。不調の兆候にいち早く気づくため、組合員は「チェックシート」を手渡され、職場の人を「よく見る」ことを義務付けられた。部署での扱いに疲弊した安井は「兆候」を求めるあまりに、職場の「サンゾウ」たちの観察を始め……。


 このように、ド直球の会社員小説となっています。旧態依然なオフィスで展開される、極限状態での「観察」劇。会社員であれば、もれなく全員何かしらの心当たりで、ドキっとなること間違いなしですが、会社員でない人にとっても、面白い。現代を生きるすべての人に、訴えかける熱量があります。このあらすじで、なぜ作品タイトルが「世紀の善人」なのか……興味を持たれた方は、ぜひお手に取って読んでみてください。