悩むのは自分と向き合っている証拠。モデル・佐藤ありさの等身大の今【インタビュー前編】_1

私たちをひきつけてやまない笑顔と華やかな存在感で、モデルとして輝かしいキャリアを築いてきた佐藤ありささん。毎月のようにファッション誌のカバーを飾り、多忙を極めていた最中の2016年7月に結婚を発表。翌年7月に第一子を出産し、その2カ月後にはパートナーが本拠地とするドイツに移住。そんな劇的なライフステージの変化をたどってきた佐藤ありささんの、約3年ぶりのメディアインタビューがyoiで実現しました。

10代の頃からモデル活動に邁進していた日本を離れ、ドイツで迎えた家族との新生活。そして、コロナ禍により思っていたモデル活動がほとんどできなかった3年間。自身の近況について多くは語ってこなかった彼女が明かしてくれたのは、「ありのまま、今の私を知ってほしい」という率直な思いでした。妊娠、出産、海外移住を経て向き合いつづけてきた、自身の体と心の変化。そして、今も変わらず大好きなモデルの仕事への情熱。決して平坦ではなかった道を、体と心の揺らぎのなかで進んできた、佐藤ありささんの笑顔の内に迫ります。

モデル

佐藤ありさ

1988年9月20日、北海道生まれ。2005年『ミスセブンティーン 2005』を受賞し、モデルデビュー。『Seventeen』『non-no』『MORE』と数々の女性誌でカバーを飾るトップモデルとして人気を博し、女優やタレント活動にも活躍の幅を広げる。2016年7月に結婚、2017年に長女を出産してドイツへ移住。2021年に長男を出産。

悩んでばかりの日々で心がけたのは、心が追いつかない自分も否定しないこと

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ドレス¥101,200・コート¥231,000/HARUNOBUMURATA(ともにTHE WALL SHOWROOM)03-5774-4001 ブーツ/スタイリスト私物

――3年以上ぶりというメディア出演。そして、ファッション誌ではなく、体・心・性をテーマにしたyoiに出演されることになったことについて、率直な気持ちを教えてください。

家族という守るべき存在ができたことやここ数年のコロナ禍の影響もあり、私のなかで体と心の健康は今まで以上に大きいテーマになってきていました。そして、家族と過ごすドイツで経験したロックダウンは、社会とのつながりが断絶されたような不安や孤独感のなかで、“体と心はつながっている”ということを改めて気づかされる経験でもありました。だから、モデル活動ができなかったこの3年間は、日々感じたことや考えたことをメモしたりして、いつか機会ができたら話したいと思っていたんです。そんなタイミングで、yoiから声をかけていただいて運命的なものを感じましたし、自分にとっても新しいジャンルに挑戦できるのがうれしかったです。

――日本でモデルとしてのキャリアを大きく開花させていたさなかにドイツへ移住する決断に至った背景には、どんな思いがあったのでしょうか。

夫と将来のビジョンをとことん話し合ったうえで、私が決断したことでした。モデルという仕事は私にとってこのうえなく楽しくて大好きな仕事でしたし、その思いは当時も今も変わりません。だからこそ結婚した当初は、夫はドイツで、私は日本で、お互いの夢に向かって全力でした。でも、妊娠して、子どもが生まれたことで、やっぱり家族一緒に過ごしたいという思いが私のなかで強くなったんです。夫は私がモデルの仕事をどれだけ大事にしているか知っていたので、別々の場所で暮らすという選択肢も提案してくれましたが、私が一緒にいたくて。

一度日本を離れてしまえば、今までのようなモデルとしての活動やキャリアの積み方ができなくなる、そう甘くはないと頭ではわかっていたけれど、「今はこうしたい」という自分の決断を信じて、支えてくれていたまわりの人たちにも自分の言葉で説明して納得してもらいました。マネージャーさんも「どこにいても、ありさが幸せになってくれるなら」と言ってくれて。逆に、「これからどうやって生きていくかは自分次第」という覚悟もできました。

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――生活の拠点をドイツに変えたことで、ご自身の考え方や生き方にどんな影響や変化がありましたか?

ささいなことから大きなことまで、悩むことはたくさんありました。もうドイツには約5年住んでいますが、違和感がなくなってきたのはほんのこの1、2年です。そもそも育児も初めてなのに、家族や友達など身近な人がそばにいない。言葉の壁もあり、食文化もまったく違う環境のなか、最初は戸惑うことばかりでよく落ち込んでいました。でも、少しずつ「自分で努力すればどうにかなることから始めよう」と気持ちを切り替えて、育児の合間に語学学校に通ったり、手料理を工夫したりしてアクションを起こすようになりました。

でも、当時も今も心がけているのは「無理やり頑張らない」ということ。さまざまな問題にぶつかったときに、理屈では「頑張ればどうにかなる」ことでも、心がどうしても追いつかないことってあるんですよね。なんとかしなくちゃとわかってはいても、心を奮い立たせるには案外時間がかかったりする。だから、悩んでしまう自分も、体や心が追いつかない自分も否定しないで、自然と「始めてみよう」と思えるまで待つのも大事かなと思っています。悩むこと自体が、自分に向き合ってる証拠だと思うから。

まわりに助けを求める力も大事だと気づいて変わった、人とのかかわり方

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――実際に、今ドイツでの生活はどのように過ごしていますか?

特別なことはしていないですが、平日は5歳の娘を保育園に送ってから、日中はまだ1歳の息子との時間を過ごしながら家事を済ませて、娘が帰宅したら子どもたちに夕飯を食べさせたりお風呂に入れたり。子どもたちが寝たら、夫婦で今日のことやこれからのことを共有したり話したりする時間にします。

夫と協力して子育てしているので、コミュニケーションは欠かせません。保育園だけでなく習い事なども始めた娘と、まだべったり甘え盛りの息子、二人の子どもそれぞれに合わせた毎日のやりくりは、夫婦で何事も分担&共有しないと回りません。時には夫が子ども二人を連れ出して、私が一人の時間を過ごせるようにしてくれることもあります。週末は夫の試合を応援しに行ったりして家族と濃密な時間を過ごせるのは、ドイツに移り住んでよかったと思えることのひとつ。東京にいたら、もっと忙しなく過ごしていたかもしれないと思います。

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――パートナーをはじめ、まわりとのコミュニケーションで心がけていることはありますか?

夫とは結婚してしばらく遠距離生活の期間があったこともあり、日常生活のことから仕事の状況まで、できるだけお互いの考えを意識的に共有する習慣がついていて、それは今も変わりません。でも、思っていることをパッと伝えるわけではなく、ひと通り自分のなかで考えてから相談するようにはしています。これは夫に対してだけでなく、まわりの人とのコミュニケーションにおいていつも心がけていることです。

もともと私は感情が揺らぎやすいタイプ。先のことを考えすぎて不安になったり、焦ってしまったり、一人でもんもんと考え込んでしまったり…。でも、仕事でもプライベートでも、自分の思っていることを口にすることの大切さや、どうしても答えが導き出せないときはまわりに助けを求めることって大事なんだなと気づいてから、「私はこうしたいけど、どう思う?」というスタンスで相談するようになりました。

――まわりに助けを求めることができるようになったきっかけはありますか?

モデルとしてのキャリアを積んでいくなかで、まわりの人たちの理解や支えに恵まれているからこそ、自分の意思が実現できていると感じたことが大きいと思います。さらに、精神的な支えだけでなく、長男を妊娠する前にしばらく体調を崩してしまったときも、家族が支えてくれたおかげで乗り越えられました。娘が幼いながらに「私がいるから大丈夫だよ」と言ってくれたりして…。そばにいてくれる人への感謝を改めて感じるとともに、まずは自分自身が体も心も健康でいることが大切だということを身を持って知った経験になりました。

リフレッシュの方法は、汗をかくことと月に1回のセルフケアDAY

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――自分の感情の揺らぎを受け入れて、つき合い方を模索してきたんですね。

私の場合、理由もなくネガティブになるというより、物事に対してこの先どんな可能性が考えられるか、最悪の場合も含めたいろんなパターンを想定して、勝手に一人で疲れちゃうんです(笑)。でも、疲れた顔ばかりもしていられないので、積極的に日々の楽しみを見つけるようにしています。ただでさえ、ドイツは冬になると日照時間が短くなって、朝からどんよりした天気のことも多いので、体も心も調子が落ち込みやすい。だから、冬になると「もうすぐクリスマスマーケットだ!」とか考えてワクワクしたりしています。

――ほかにも、ご自身で心がけているメンタルケア方法はありますか?

運動すること! 家にいながらできることとしては、ロックダウン中に購入したランニングマシンで走ってリフレッシュしたり、『BIKIN YOGA CHANNEL』というYouTubeチャンネルでヨガをしたり。時間があれば、ジムに行ってホットヨガをしたりもします。気持ちのいい汗を流すと気持ちが切り替えられるんです。

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あとは、月に1回は「セルフケアDAY」と称して、心身ともに自分をいたわる日をつくれるように心がけています。夫が子どもの面倒を見てくれているあいだに、お風呂に入ってスキンケアからボディケアまでフルコースでやるんです。

ARISA’s SELF-CARE TIPS
1.   お風呂でヘッドスパ
バスソルトを入れた湯船につかりながら、『uka スカルプブラシ kenzan』でヘッドマッサージをします。そのあいだもつい考え事をしちゃうんですが、できるだけ自分のことにフォーカスするようにしています。

2.   ボディスクラブで全身角質ケア
角質ケアって、たまったものを削ぎ落とすケアなので、心のデトックスにも効果的。気になるかさかさをスクラブでつるつるにします。

3.   スキンケアは『タカミ』と『クラランス』を愛用
普段は忙しくてオールインワンアイテムに頼ることが多いので、ステップを踏んでスキンケアできるのは贅沢な時間。まずは『タカミ スキンピール』を全顔になじませて3分待ってから、『クラランス』の化粧水、美容液、クリームを。特に、美容液『クラランス ダブル セーラム EX』はお気に入りです。

4.   仕上げのボディ保湿
いつもはなかなか手が回らないボディケアも。『モルトンブラウン』の「1973 マンダリン&クラリセージ ハンド&ボディローション」の香りがすごくお気に入りでリピ買いしています。

いちばんの幸せは家族の笑顔を見ている時間

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――今、いちばん満たされる瞬間はどんなときですか?

家族の笑顔を見ているとき。自分のそばにいてくれる人たちの表情や、日々の光景が笑顔であふれていると、幸せで心が満たされます。モデルとしての佐藤ありさの印象を「笑顔」と言ってくださる人は多いですが、実生活で自分がどんな表情をしているかを自分で見る機会ってほとんどない。でも、まわりの人にも笑顔でいてほしいからこそ、自分も笑顔でいたいといつも思っています。

撮影/Sophie Isogai(kiki inc.) ヘア&メイク/河嶋 希(io) スタイリスト/小泉 茜 企画・文/高戸映里奈(yoi)