「yoi」の人気連載「SELF-CARE RELAY」では、リレー形式でバッグの中のセルフケアの愛用品をご紹介いただきます。前回のYUNO TAKEMURAさんがバトンを渡したのは、インディペンデント雑誌『HIGH(er)magazine』編集長やクリエイティブディレクターとして活動するharu.さん。自分を安心させてくれる“おまじない”アイテムがたくさん詰まっているという、バッグの中身は...?

Vol.12 『HIGH(er)magazine』編集長/クリエイティブディレクター・haru.さん

haru.さん HIGH(er)magazine 目線あり

haru. /ハル●1995年生まれ。幼少期と高校時代をドイツで過ごしたのち、2015年に東京藝術大学入学。同年に『HIGH(er)magazine』を創刊。“同世代の人と一緒に考える場を作る”をコンセプトに企画・編集・制作に携わる。大学卒業後の2019年6月、株式会社HUGを設立し、代表取締役に就任。コンテンツプロデュースとアーティストマネジメントの事業を展開し、新しい価値を届けるというミッションに取り組む。

haru.さん HIGH(er)magazine プロフィール 笑顔

マガジンの編集長やクリエイティブディレクターなど、さまざまな肩書きを持つharu.さん。とにかく仕事が好きとあって、時間を忘れて頑張りすぎてしまうことも。ただ、会社を設立してからは、自分だけでなく一緒に働く仲間たちのケアについても意識するようになったと言います。


haru.'s Self-Care Rules

1. ドラマより地味なルーティンが好き
2. 隙間時間には手を動かす
3. 心身の不調は事前に報告する

バッグの中身はこんな感じ

haru. HIGH(er)magazine バッグの中身 セルフケアアイテム

「インパクト大のバッグは、知人のスタイリストさんが教えてくれた、渋谷のセレクトショップ『RADD LOUNGE(ラド ラウンジ)』で購入したもの。イギリスのミュージシャン『APHEX TWIN(エイフェックス・ツイン)』のレコードジャケットがデザインされています。見かけによらず、収納力もあるんですよ。バッグにつけているのは、韓国のブランド『GROVE(グローブ)』のぬいぐるみで、昨日、原宿のポップアップストアで出合いました。黄色が大好きなので、つい選んでしまいます。スマホケースには、先月亡くなったおばあちゃんと撮った、ポラロイドを入れています」

仕事は人対人。定型文じゃないコミュニケーションをしたい

「2019年に会社『HUG(ハグ)』を立ち上げてからは、コンテンツのプロデュースやアーティストをはじめとしたさまざまなお仕事をしていますが、どんなときも自分の軸にあるのは、やっぱり『HIGH(er)magazine(以下、ハイアー)』だと思っています。

ハイアーは、私の生きている半径5mとか10mの世界、つまりは私や私のまわりにいる人の『生活』を形にしたもの。だから、シンプルに言ってしまえば、人生そのものが反映されているんです。『take me high(er)』という聴くマガジン感覚のポッドキャストもやっていて、よりリアルタイムで今の自分を発信できている感覚があります。

仕事をする上でいちばん大切にしているのは、コミュニケーションかもしれません。もちろん、最終的にいいものをつくるということは大前提なのですが、その過程で、誰も置いてきぼりにされなかったか、ちゃんとみんなが言いたいことを言えたか、みたいなことをよく考えるんです。結局仕事って、人と人の関係で、どんなに大きな企業との仕事でも、窓口になってくれるのは一人の人間。だから、目の前のその人が本当に手応えを感じる仕事をしたいと思っているんです。例えばメールの文章ひとつにしても、現場で見た風景や感じたことを一言でも入れると、温度が生まれるじゃないですか。私自身、そういう定型文じゃないメールに心動かされたりするから、小さなことだけど心がけるようにしています」

haru.さん HIGH(er)magazine 目線なし

憧れの人の言葉を携えて、「理想」を思い出す

「編集という仕事に興味を持ったきっかけは、高校生のときに読んだ、林央子さんの著書『拡張するファッション』でした。ファッションと聞くときらびやかで表層的なイメージがあって、好きだけど自分が入り込める世界ではないかもと思っていたんですが、林さんのこれと決めた取材対象に対して、長い年月をかけ、淡々と向き合う姿勢に『こんなふうにファッションと向き合えるんだ』と感動して」

「わたしと『花椿』」 林央子 ステッカー 「NCT」 テヨン アクリルキーホルダー お守り haru. HIGH(er)magazine

(左)「わたしと『花椿』」(DU BOOKS)ビブリオテーク購入特典ステッカー(中)「NCT」テヨンのアクリルキーホルダー(右)おばあちゃんの折り鶴

林さんの著書『わたしと『花椿』』の各章のタイトルの言葉を記したステッカースマホケースに入れたり、バッグに入れて持ち歩いたりしています。目に入るたび、なりたい自分を意識できるのって、いいですよね。

憧れの人といえば、K-POPアイドルグループ『NCT』のテヨンと、テンも。彼らの世界観を追求する姿勢、表現者としてすごく尊敬しているんです。アクリルキーホルダーは持ち歩き用。オフィスのデスクにはトレカを飾っています」

大好きなおばあちゃんの折り鶴

「保存用袋に入っているのは、おばあちゃんの折った鶴。お守りとして持ち歩いています。子どもの頃から仙台のおばあちゃんの家にはよく遊びに行っていたし、高校生時代は一緒に暮らしていたので、すごく距離が近くて。私の好きなものの多くは、おばあちゃんがきっかけだったりもして、私は彼女にたくさん影響を受けていると思います。

今でも覚えているのが、おばあちゃんの家に行って私が絵を描くと、翌朝おばあちゃんがそれに色を塗ってくれているんです。そこには二人だけのコミュニケーションがあったような気がします。そんな大好きなおばあちゃんが先月亡くなって。

おばあちゃんは、病室で暇だったのか、ずっと折り紙をしていたみたいで、折り鶴がたくさん出てきて。これはそのうちのひとつ」

ネックレスにTシャツ…自分を安心させる小さな呪文

haru.さん ネックレス HIGH(er)magazine

「ステッカーもそうですが、こうしてみると、私の持ち物には『言葉』が多いですね。たぶんこれは、私にとってはおまじないと同じなんです。自分の理想の世界って、なかなか簡単には実現できなくて、現実社会とのギャップにげんなりしてしまうこともある。そういうとき、この小さな言葉を見ては、『私の理想ってこういうことだよね』と思い出すんです。

『Higher』と『hug』の文字のネックレスは、祐天寺にあるセレクトショップ『studiolab404.com(スタジオラボ404ドットコム)』でオーダーメイドしました。『HIGHER』のほうは、メンバーとおそろいにしています。『TAKE ME HIGH(ER)』とプリントされたハイアーTは、この夏の最新グッズです。袖のメッセージは、『みんながみんな、人生の主人公だよ』ということを伝えたくて。私自身も『編集長なんて、自分で名乗っちゃえば良くない?』という気持ちでこの活動を始めているので。誰もが『自分なんかが』と思わずに、好きなことをできる社会になってほしいと常々思っています」

haru.さん TAKE ME HIGH(ER) TEE HIGH(er)magazine Tシャツ

TAKE ME HIGH(ER) TEE/HIGH(er)magazine 袖には、『私の人生における編集長は、私だから」のメッセージ

「私も頑張ろう」という気持ちになれる、opnnerのタトゥーシール

「友人の岩谷香穂ちゃんの手がける『opnner(オプナー)』のタトゥーシールも、小さくてかわいいお守りのような存在。友人が作ったものをそばに置くのは、『あの子が遠くで頑張っている』ということが、自分にとってすごく励みになるから。見るたびに、『私も頑張ろう』という気持ちになるんです」

opnner タトゥシール haru.さん HIGH(er)magazine

デビルのタトゥーシール/opnner(オプナー)(大きいほうのタトゥーはharu.さんの入れているタトゥー)

「ファッションは大好きなんですけど、私自身はユニフォームみたいに同じ格好をしていることが多いですね。夏はTシャツにデニム。暑くなる前は、『PETIT BATEAU(プチバトー)』のロンTばかり着ていました。本当に『無課金アバター』みたいな服装してるときが一番落ち着くんです(笑)。最初からそうだった、みたいな。それはたぶん、自分がその場の空気をかき乱したくないという思いがすごくあって。というのも、私の仕事は仲介者的なことであって、そこで何が起きるかということのほうが大事だし、興味がある。だからなるべく自分がノイズにならない状態でいることで、その場に起こる化学反応みたいなものがよりクリアに見えるような気がするんです。

一方で、“もの”に関していうと、場になじむかどうかはあんまり重要じゃないかもしれません。私は小さくてかわいいものが大好きなんですが、そのひとつひとつに自分が納得のいくストーリーがあることもすごく大切なのかなと思います。ケアアイテムにしても、アイドルもいれば、おばあちゃんの鶴もあるし、一見何でもアリに見えるけれど、全部私の納得したものたちだから、不思議と違和感なく同じ世界に収まっているんですよね」

手を動かす時間が最高のリフレッシュ。手作りポーチにはお気に入りのリップを

手作りの刺繍のポーチ リキッドリップスティック 7NaNatural ヴァイナル Byredo リップスティック(マット)チリ MAC カラースティック  haru. HIGH(er)magazine

(左から)手作りの刺繍のポーチ リキッドリップスティック ヴァイナル オーバーン/BYREDO カラースティック 01 ダイダイ/7NaNatural リップスティック(マット)チリ/MAC 

「去年、出張先で新型コロナウイルスに感染してしまい、12日間隔離生活を送ることになって。あまりにも暇だから刺繍キットを送ってもらったんです。

無心で手を動かしているとルーティンが生まれて、それがだんだん心地よくなっていって。おかげで隔離生活もまったく苦じゃなくなりました。今でも、隙間時間には刺繍だったり、何か少し手を動かすようにしたりしていて、それがすごくリフレッシュになります。このポーチも自分でつくったもの。大好きな黄色で『self love』と刺繍しました。

中にはリップを入れていて、今日は出番の多い3本を。『MAC(マック)』のチリは、高校生のときから愛用しているカラー。これも使いすぎで先が真っ平らになってしまっています(笑)。基本的にピンク系は選ぶことはなくて、『BYREDO(バイレード)』のオーバーンも落ち着いたブラウン系の色味です。『7NaNatural(ナナチュラル)』は、ブランドが実店舗へ展開する什器のディレクションをやらせていただいたり、一緒にイベント開催したりしました。この天然由来成分100%のカラースティックは目元や頬などマルチに使えるのですが、私はリップとして愛用しています」

haru.さん MAC リップ HIGH(er)magazine

仕事の合間に五島の時間を思い出す、リフレッシングミスト

「仕事をきっかけに出合うものは、それができるまでの過程とか背景を知っているから、自然と愛着がわきますね。オフィスなどで乾燥が気になるときにシュッシュとふりかけている『ON&DO(オンアンドドゥー)』のリフレッシングミストもそのひとつ。初夏に開く椿の若葉から抽出した成分を使っているので、若葉がとれたあとの数ヶ月しか販売されないんです」
 

ON&DO リフレッシングミスト スキンケア haru. HIGH(er)magazine

REFRESHING MIST 〈数量限定〉60mL /ON&DO

「『ON&DO』のための椿を育てている農園がある五島列島には、取材や撮影に何度も伺っていて。農園管理人の方が、日々愛情を注ぎ、丁寧に世話をされている2万本くらいの椿の木に囲まれていると、いい気の流れを感じるんですよね。五島のゆったりとした時間の流れもすごく好きで、このミストを使うたび、そんな椿農園の空気や五島のことをフッと思い出すんです」

全身の保湿に欠かせない、オーガニックシアバター

「このオーガニックシアバターも思い入れの深いアイテムです。『HUG』では、『ご自愛』をテーマにオリジナルプロダクツを販売しているのですが、そのひとつとして、西アフリカ・ブルキナファソにある「ビソンゴ」という女性組合とともにつくったのが、『EASY CARE BUTTER』です。売り上げは現地の女性に還元される仕組みになっています」

EASY CARE BUTTER haru, HIGH(er)magazine HUG

EASY CARE BUTTER 50g/HUG

「私はこのバームを、顔に、髪に、全身に使っています。手のひらで少し温めて溶かしてから乾燥の気になるところにたっぷり使います。髪の毛になじませると、しっとりまとまりやすくなるんですよ」

haru.さん HIGH(er)magazine ヘアケア 『EASY CARE BUTTER』

「ここで力を抜こう」。スケジュールは週単位で考える

「私、すごく自分のやっている仕事が好きみたいで。だから頑張ろうと思ったら、無理してでも頑張れちゃうところがあるんです。でも、仕事と生活の理想のバランスを見つけることはいまだに課題で、常々考えていますね。『ハイアー』も作りたいし。今は、週単位でスケジュールを組み立てることが多いです。この週は人と会う社交の週にしようとか、この週は制作に集中しようとか、カレンダーを眺めながら考えます。そうすると『ここで力を抜こう』ということも見えてくるんです。

1日の中では、メールをしたり人と会ったりするのは、頭の動く午前中か日中に。夜はできるだけスローにして、自分の時間をつくりたいと思っています。私、いつもオフィスから自宅の最寄り駅まで4駅分を歩いて帰るんです。その間にポッドキャストやラジオを聴いて、だんだん頭をオフモードにしていく感じ。その時間がすごく好きですね」

体と心の凪を保つ、日々のルーティン

「どちらかというと、感情の波は少ないほうだと思います。よほどのことがない限り、凪の状態ですね(笑)。淡々とやる作業や、ルーティンが好きなのも、そのためかもしれません。ドラマとか、全然いらないんですよね。だから実は恋愛も苦手意識があります。やっぱり心が乱されまくるじゃないですか。それにだんだん腹が立ってきちゃうんです。『私の平穏な生活を邪魔しないで』って(笑)。

パートナーも私に似たタイプで、自分のやるべきことやルーティンをすごく大事にする人。だから、お互い全然干渉しないんです。昨日の夜ごはんも、それぞれに好きなものを食べていましたが、それが普通だからありがたいですね」

haru.さん HIGH(er)magazine 横顔

「日々のルーティンが乱れているときは要注意だと思っています。例えば寝る時間や起きる時間がバラバラになっているとか、オフィスからの帰り道、4駅分歩けていないとか。そういうときは、やっぱり余裕がなくなっているということだから、生活を整えようという目安にもなります」

おまじない的フラワーエッセンスと、リラックスしたいときのCBD

「ちょっと落ち込んだり、モヤモヤしたりするとき、おまじない的にフラワーエッセンス入りのスプレーをふりかけています。これは『ハイアー』のメンバーであり、大事な友人が『これ、持ってなよ』とプレゼントしてくれたもの。

CBDオイルは寝る前に使うことが多いですね。感情の波は少ないタイプではありますが、制作中となるとけっこう感情が高ぶってしまうこともあって、その興奮状態を落ち着かせるのに役立っています。舌下に垂らすもののほかにベイプタイプも持っていて、仕事の合間の休憩に吸ったりもします」

アバンダンススプレー パシフィックエッセンス CBD OIL DROPS PASO haru. HIGH(er)magazine

(左)アバンダンススプレー 10ml/パシフィックエッセンス(右)CBD OIL DROPS 750mg LEMON /PASO

つらさはわかり合えないけれど、ただ隣にいることはできる

私、その人の『めっちゃいいやん!』という部分を見つけて、さらにその生かし方を勝手に考えるのがすごく好きなんです。まわりには繊細な人も多いんですが、『あなたはあなたのままで完璧だよ』という気持ちが伝わっていたらいいなと思いながら言葉にして伝えたりもします。

ただ、伝えることは大切だけど、何かつらさや痛みを抱えているときは特に、“ただそばにいる”ということも、すごく力になると思っているんです。

そもそも心の内側にあるつらさって、本人にしかわかり得ないもの。私自身がそもそもそんなに自分のことをさらけ出したりしないし、きっと、みんなのつらさや痛みも、私が完全に理解することはできないと思っています。でも、聞く耳を持ったうえで、『私は隣にいるよ』『あなたはそのままそこにいていいよ』という気持ちがあればいいんじゃないかな」

haru.さん HIGH(er)magazine デニム

体調や心の状態が優れないときは、事前報告

「落ち込んだり悩んだりしても、それをあんまり人に話したいと思わないのは、まわりにいる大事な人たちが、自分のことで悲しんでいる姿を見るほうがつらいからというのがあります。ただ、だからこそ事前に報告するようにも意識しています。これは会社を立ち上げてからより意識するようになったかもしれません。

最近、膣に違和感を覚えて病院に行ったところ、忙しさが続いていたせいか免疫が落ちて、膣に雑菌が入っていることがわかって。そのときも会社にいたメンバーにはその通り説明しました。体調や心の状態についてあらかじめ伝えておくことで、作業も分担しやすくなるし、いざというときに休みたいというのも伝えやすいかなと思って。たった4人の小さな会社なので、それぞれの役割があって、やっぱり誰か一人でも欠けると影響が大きいし、大変なんですよね。みんなそれをわかってくれているから、かなりプライベートな報告を聞いても、『わかりました』という感じで全然戸惑わないし、なんなら自分がハマってる健康アイテムを紹介してくれたりするんです(笑)」

「木」のような場所でありたいって、思うんです

「社会の中で、個人で戦うのが難しいときもあると思うんですよね。特にフリーランスのアーティストが企業や組織を相手に、傷ついたり落ち込んだりする場面もたくさん見てきたので、私たちの会社はその間に入って盾になるような役目をできたらとはずっと思っていて。そもそも、マイノリティ側の人たちが傷つかないように気をつけなければいけない、というのは変な話で、それは特権のある側が意識するべきことだと思うんです。相手にリスペクトを持って接するということはもちろん、例えば、研修を受けるとか、情報を得る、学ぶということも、とても大切だと思います」

haru.さん HIGH(er)magazine  アップ 笑顔

「『木』みたいな存在になりたくて。勝手にどこかから動物とか鳥とかがやって来て、雨よけになったり、木陰で休むことができたり、なんとなく居心地のいい場所。そういう人や場所になれたらいいなと。そう思うようになったのも、私自身がこうして一緒に会社をやっている仲間がそばにいてくれること、『一人じゃない』と思えていることが大きいと思います。いつだって一緒に戦える相手がいるって、すごく心強いことですよね」

撮影/長田果純 取材・文/秦レンナ