時代のトレンドをキャッチしながら数々の印象的なルックを手がけるメイクアップアーティストたち。彼らが今とらえる“かわいい”に迫り、その真髄を因数分解する人気連載。今回はこのたび活躍のステージをNYに移し、新たな一歩を踏み出したばかりのmod’s hair岩田 美香さんが登場。
【岩田さんが考える“かわいい”メイクアップのヒント:1】90年代を思わせるシアーな質感を甘く見せずにシャープに仕上げる

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シャツ¥96800・ブラ¥66000/ともにカナコ サカイ info@kanakosakai.com シャツの下に着たシースルートレンチコート¥101200/H3Oファッションビュロー(カルラ スペティック)03-6712-6180 スカート¥52800/ザ・ウォール ショールーム(フェティコ) 050-3802-5577
「自分の中の“かわいい”はたくさんありますが、ベースとなるのは90年代後半から00年にかけてのパリやNYのランウェイ。あの頃のプラダ、ヘルムート ラング、マルティーヌ シットボンといった当時のシックなトレンドを牽引していたメゾンのルックやヴィジュアルが、私にとって“かわいい”の原点になっていると思います。無駄なものを削ぎ落とした90年代のモードを前提に、そこからどうエッジを効かせるか、どんな面白みを持たせるかを考え、私なりの“かわいい”を構築しています。
今回のメイクアップでも、最初のルックは90年代らしいシアーな質感を軸としたもの。一般的に90年代のメイクというと、ベージュの陰影で作る引き締まった表情やマットな質感で仕上げるルックを想像しがちですが、私の中ではちょっと違って。あの時代を思い起こすと、サテンのパープルや繊細に光るベージュ、淡い青みのピンクなど、 ちょっとケミカル感のあるシアーなパステルがイメージされるんです。今回もそういう異質なテクスチャーをメイクに漂わせたいなと思いました。なのでチョイスしたカラーは、目元も口元もサテン質感の淡い色。それらを丸いフォルムで入れると甘い印象になってしまうので、アイシャドウはスクエアに入れたり、切れ長に見えるアイラインを入れたり、唇のエッジを立てたり、シャープな見え方を意識しながらメイクしました」(岩田さん、以下同)
【岩田さんが考える“かわいい”メイクアップのヒント:2】オーバーめのオレンジリップとギミックを加えたアイメイクで気持ちロックな印象に

タンクトップ¥49500/カナコ サカイ info@kanakosakai.com ボディスーツ¥35200/ザ・ウォール ショールーム(フェティコ) 050-3802-5577

タンクトップ¥49500/カナコ サカイ info@kanakosakai.com ボディスーツ¥35200/ザ・ウォール ショールーム(フェティコ) 050-3802-5577 スカート¥20130/アモーメント cs@amomento.jp レギンス¥30800(参考価格)/H3Oファッションビュロー(カルラ スペティック) 03-6712-6180
「シックな装いの中にヴィヴィッドな色を効かせたルックもまた、私の中では90年代を象徴するヴィジュアルのひとつ。今回トライしたのは、オーバーなリップラインが印象のオレンジリップ。ヴィヴィッドなリップというと、アイメイクは弱める方向に落ち着くと思うんですけど、そこにベージュの束感あるまつ毛と下まぶたの赤みブラウンのラインで少しだけロックなエッセンスを混ぜました。アイラインは下まぶただけでは物足りず、最終的には目尻にもラインをプラス。オレンジリップはリップライナーで上唇だけオーバーめに描き、ボリューミィに。今回使ったエルメスのリップライナーは発色が本当にきれいで、どこか蛍光っぽい見え方をするので、それが今回作りたかったヴィジュアルのイメージにぴったりでした。
私は洗練されたムードの中にちょっとした面白いアイディアが効いてると、“あっ、かわいいな”ってなるんですよね。“そこにそれ入れたんだ!”みたいな発見が心を動かすというか。だから自分がメイクを組み立てていくうえでも、そういったギミックをどう効かせていくかを常に考えながらヴィジュアルを構築していっています」
岩田さんの“かわいい”メイクとは:シックなメイクの中に若干のひねりを加えた、驚きと発見があるルック
――岩田さんが“かわいい”と感じる女性像ってどんな人ですか?
「個人的には骨格がちゃんとある人、シャープな輪郭とか鎖骨がきれいな体とか、そういう人を見ると“かわいいな、いいな”と思います。昔のグウィネス・パルトロウみたいな。でもあのかわいさって、日頃のメンテナンスが行き届いてないと出せない美しさでもあるし、年齢を重ねることで近づいてくる骨と肌との距離感によるものだったり……。なんかマニアックな話ですけど、要は私って“骨フェチ”なんだと思います(笑)」
――確かに90年代のメイクは、そういう骨格が美しい人ほど“映え”やすい気がしますね。
「そうなんですよ。やっぱりどこかメンズライクで削ぎ落としたファッションが似合う人、そこに自分の憧れがあって。自分自身がいろんなテイストを吸収した90年代、ヘア&メイクアシスタントから独立した00年代初頭に目にしたものが、今の自分の“かわいい”の礎になっている気がします」
――これからNYに渡って、新しいステージに進まれますね。NYで新たな経験を積む中で“かわいい”も変化していきそうですか?
「きっと変化していくと思います。ベースとなる世界観はあるにせよ、その中で見つけていくちょっとしたメイクのスパイスだったりひねりだったり、そういう引き出しがどんどん増えていったら嬉しいし、そのために新しいことにもどんどん挑戦したいなと思っています」
撮影/吉田 塩 ヘア&メイク/岩田 美香〈mod's hair〉 スタイリスト/田畑 アリサ モデル/Keqing Eng 構成・取材・文/前野 さちこ