仕事、友情、妊活etc…20代後半から30代のyoi読者には、モヤモヤの種がいっぱい。簡単に解決することではないけれど、マンガを読んでちょっと心が軽くなったらうれしいですよね。『女子マンガに答えがある』などの著書で、マンガを通して生き方のヒントを提示してきたトミヤマユキコさんに、読者から寄せられたお悩みに効く“処方箋”のような一冊を選んでいただきました。
お悩み:大人になってから、地元の幼馴染と話が合わなくなってしまった
「26歳です。友人と話が合わなくなってしまったことに悩んでいます。幼稚園からの幼馴染は、みんな地元で就職していて、私だけ上京しています。話が合わないなと感じたのは社会人になってからです。実家暮らしで結婚も考えている地元の友人たちと、東京で一人暮らし、恋愛話は無いもののある程度キャリアアップに向けて仕事をしている私、といった形で、ライフステージや環境のズレがここに来て大きく違うように感じてしまい、話が合わないなと感じることが多くなってしまいました。もちろんどちらがよい悪いではないと頭ではわかっているものの、なんとなく自分のほうが偉い・努力していると感じてしまう自分も嫌になるし、こうした違和感からこの友人たちと疎遠になりつつある状態にも悩んでいます。せっかく仲のいい友人だったのに疎遠になるのも悲しい反面、今は積極的に会いたいとは思わない状態をどうしたらいいのでしょうか」
トミヤマ’s 処方箋:高松美咲著『スキップとローファー』
高松美咲著『スキップとローファー』(講談社)
STORY
過疎地から東京の高偏差値高校に首席入学した岩倉美津未。勉強こそできるものの、過疎地育ちゆえに同世代とのコミュニケーション経験がとぼしく、そのうえちょっと天然。そんな「みつみちゃん」のまっすぐさが、本人も気づかないうちにクラスメイトたちをほぐし、ハッピーにしていく青春物語。
人間関係は、同質性だけでなく異質性に目を向けるともっと楽しい
トミヤマさん:住んでいる場所やライフステージの違いなどによって、仲のいい友だちと人生のある時点で話が合わなくなる経験ってあるあるだと思います。私もありましたが、若いときほど目の前のやらねばならないことに集中してしまうし、他人のことまで気にしているヒマがないんですよね。だからすれ違うし、食い違う。マンガをおすすめする前に、人生の先輩として言わせていただくと、あまり今の状況にあまり絶望しないでほしいです。年齢を重ねて子育てや仕事に余裕が生まれたら、お互いのライフスタイルの違いを面白がれて、またフラットに話せるようになることが多いので。
でも、今のモヤモヤを解消したいですよね。文面を読む限りだと相談者さんは、地元が一緒とか、小さいときから一緒にいるとか、「同質性」で友達かどうかを判断しているように感じました。つまり、同質性を持っていない人とは友達になれないと考えているのではないかなと。でも、それって本当でしょうか。世の中には、生き方や考え方が違っても、仲良くなれる相手がきっといるはずです。
現在26歳とのことですが、ライフステージの変化が激しい20代後半から30代に突入する前に、“自分と相手の違いを面白がる練習”をしておくとよいかなと思います。まったく似てない誰かと、お互いの違いを受け入れて、友達になる経験ができたら、同質性をもって友達になった人との間にズレが生じたときも、うまく軌道修正できる可能性がありますよね。そこで、高松美咲先生の『スキップとローファー』をおすすめしたいと思います。
大人になっても号泣! 心洗われる青春物語です
この作品で描かれる、まったくタイプの異なる女子高生たちが仲よくなり、共に支え合い、切磋琢磨しながら生きていこうとする姿が素晴らしい! 特に、バラバラの個性への向き合い方が上手なみつみちゃんから、“違うこと”の受け入れ方や、折り合いのつけ方、面白がり方を学んでみてください。
私が開催しているマンガ講座でこの作品を紹介すると、50代の方が泣きながら読んでいるということも。どうせ高校を舞台にキラキラした恋愛を描いた少女マンガでしょ…と思うかもしれませんが、騙されたと思って読んでみてください。本当に心が洗われる作品ですので。
何度も言いますが、友達とはいずれまた話せるようになります。40〜50代ぐらいになると、若いときよりもずっと深い話ができたりもするはず。今の強烈なモヤモヤは一過性のものだととらえていただいて、このマンガを通して“違いを面白がる準備”をしつつ乗り越えてほしいと思います。
撮影/井手野下貴弘 取材・文/海渡理恵 企画・構成/木村美紀(yoi)