今話題の漢方薬店『LAOSI』。代々木公園にほど近い、渋谷区の神山町にある店舗では、令和のくすりやこと、店長の松浦さんが漢方初心者にも優しく教えてくれるのだとか! 季節の変わり目の時期は、寒暖差などで体調をくずしやすいとき。今まさに心身の不調に悩まされている人も少なくないのでは? そこで今回は、松浦さんに季節の変わり目に多いお悩みから、おすすめの漢方薬を教えていただきました!
漢方薬店『LAOSI』店長・薬剤師
北海道生まれ。漢方薬局を営む両親のもと、幼い頃から漢方が身近な環境で育ち、自身も薬剤師の道へ。薬剤師として多くの病院や調剤薬局に勤務。2021年から縁あって『LAOSI』の立ち上げに参画。養生や漢方によるセルフケアをより身近にするべく、店頭に立つ日々。最近ではインスタライブや商業施設でのPOPUP、音声メディアでの発信など活躍の幅を広げている。
季節の変わり目に起こる体調不良の要因
松浦さん:中医学では、立春・立夏・立秋・立冬の前の18日間である季節の変わり目のことを「土用(どよう)」と呼びます。土用は、胃、膵臓、十二指腸、脾臓を総合した消化器全体である脾(ひ)を司っていて、土用の期間は“胃腸がとても弱りやすい時期”でもあります。
季節の変わり目に体調をくずしやすい人は、まず胃腸の働きが弱くなってしまうことから栄養がとれずに風邪を引く、抵抗力が落ちてしまう傾向が多くみられます。土用の期間は、特に胃腸を重点的にケアしてあげることが大切ですよ。
『LAOSI』を訪れるお客さまで多いお悩みは?
松浦さん:その人によって千差万別ではありますが、特に多いお悩みとしては、睡眠や肌荒れ、目の疲れ、生理のお悩みがありますね。女性のお客さまでは体に不調があるものの、それが更年期によるものなのかがわからず、病院でホルモン治療をされる前に『LAOSI』へいらっしゃるという人も。実際に見てみると、更年期の一歩手前という人から、更年期はまったく関係なくて別の原因があった…なんてこともあります。
秋バテ(食欲不振、疲れが取れない、やる気が出ない、抜け毛)におすすめの漢方
補中益気湯(ほちゅうえっきとう) 煎じ薬・エキス剤/LAOSI
松浦さん:夏は「心(しん)の季節」と呼ばれ、たくさん心臓を動かして血液循環を促し、体に熱がこもらないように汗をたくさんかいて体温を下げるという季節。実は汗というのは、結局は血液であり、汗をかくことで血液がどんどんどんどん消費されてしまう。さらに、目を酷使したり、女性の場合は生理があるので、余計に血を消耗するわけです。実際は、血を消耗しすぎて枯渇している状態の人がほとんどなんですよ。血がなくなることによって栄養不足が起こるので、血を補ってあげるのがベストです。
それにはやはり、胃腸のケアから。胃腸ケアでよく使用するのが、胃腸の働きを補って英気を養うお薬の『補中益気湯(ほちゅうえっきとう)』です。また、「心の季節」という文字の如く、精神面にもとても関係があります。急激な暑さやゲリラ豪雨によって、自律神経が乱れやすく、心理的負担から不安感やメンタルも不調が。そこで胃腸の働きを補いつつ、血の補給もしてくれる「加味帰脾湯(かみきひとう)」もよく出ますね。
中医学では、血液の栄養分は、体中の臓器を行きわたったあとにその余りが髪の栄養分として使われることから、「髪は血の余り」と捉えています。そのため、髪のお悩みには、腎を補う補腎薬もおすすめです。
頭痛や肩こり、めまい、倦怠感におすすめの漢方
松浦さん:漢方は対処療法ではなく、不調の原因を探り、それを取り除いていく“原因治療法”のひとつです。なので、頭痛の場合は、ただ単体の症状で診て痛みをとるのではなく、熱がこもったことで引き起こされているのか、それとも血の巡りが停滞しているのか、または、低気圧などによって水分代謝が乱れて脳がむくんだことなのか、不調のもとにフォーカスしていきます。
また、肩こりは大体血の巡りが原因になっています。だからといって、誰もが血の巡りをよくする漢方薬を飲んでしまうのは危険。血が少ない人が血の巡りをよくする漢方を飲むと、のぼせてしまう場合があるので、肩こりの場合は血を補う胃腸のケアをしながら、運動や入浴などで血流をよくしましょう。水分補給も忘れずに。
倦怠感の場合は、やはり胃腸ですね。胃腸でエネルギーをつくれるように、秋バテで登場した『補中益気湯(ほちゅうえっきとう)』がおすすめです。
胃腸や吐き気・下痢におすすめの漢方
松浦さん:胃腸の不調が、食べものによって消化能力が落ちていることなのか、食べすぎなのか、またはお酒を飲む機会が多くて胃に熱がたまっているのか、たくさんの要因が考えられますよね。また、女性は冷えのお悩みも多いので、冷えやストレスによって低下した胃の働きをケアしてくれる「安中散(あんちゅうさん)」もおすすめ。
水分がたまって逆流性食道炎のような状態のときによく使うのが、「六君子湯(りっくんしとう)」です。下痢や腸など水分代謝が悪くなっている場合は、体の働きを高めて余分な水分を排出する「五苓散(ごれいさん)」を使用します。
肌荒れやホルモンバランスの乱れにおすすめの漢方
松浦さん:中医学では、「皮膚は内臓の鏡」といわれ、顔のどこの部分が肌荒れしているかによって原因となる臓器が変わってきます。口まわりにトラブルがある場合は胃腸、おでこの場合は乳製品、甘いもののとりすぎ、フェイスラインの場合はホルモンバランスの乱れと考えられます。
ホルモンバランスの乱れからくる瘀血には、血の巡りを良くしてくれる「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」などがあります。肌トラブルの根本原因は人それぞれと考えられるので、まずは根本原因となるところをしっかりケアすることが先決です。(※桂枝茯苓丸が適用ではない方もいます)
不安・気持ちの浮き沈み・イライラにおすすめの漢方
加味逍遥散(かみしょうようさん)煎じ薬・エキス剤/LAOSI
松浦さん:メンタルと胃腸は深く関係しているので、気持ちが落ち込んだり不安感がある場合は、まず胃腸をケアをしてみて。秋バテにおすすめの漢方薬でも紹介した「加味帰脾湯(かみきひとう)」もよいですね。
そのほかにもイライラや不安感、疲れやすい人には、肝の働きを整えて気を巡らせてくれる「加味逍遥散(かみしょうようさん)」、モヤモヤがたまりやすく胃腸に不調を抱える人は、「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」も。
心身が弱ってなかなか眠りにつけない、眠りが浅いときは「酸棗仁湯」(さんそうにんとう)」もいいですね。あくまでも目安ですので、必ず薬剤師にご相談してお求めください。
漢方+食養生
松浦さん:皆さん体のためによかれと思ってやっていることが、実はNGだった…なんてことも多々あります。例えば、スイーツの代わりにナッツやハイカカオのチョコレートを食べているなんて話も聞きますが、実はこれらはものすごい油分なんです。またヨーグルトやチーズなどの乳製品もそう。サラダやフルーツの生ものや小麦など、消化に良くないものはたくさんエネルギーを消費するので、避けたほうがいい場合もあります。
胃腸が弱っている人は、黄色くて甘みのあるもの、例えば”かぼちゃ、とうもろこし、栗、ハチミツ”などを積極的にとってみてください。胃腸がよくなってくると同時に、甘いものもあまり欲しくなくなってくるはずです。こうした体の変化も面白いですよね!
人気の『LAOSI』漢方薬膳茶とは?
漢方薬膳茶(Power・Calm・Sleep・Warm) 各14包 各¥1380/LAOSI
・Power…高麗人参を高配合。疲れたときや気力がないときのサポートに。
(原料:高麗人参、紅茶(デカフェ)、シナモンバーク、ナツメなど)
・Calm…ハーブ、スパイスをブレンド。毎日のリラックスタイムに。
(原料:カモミール、ルイボス、ホーリーバジル、ジンジャーなど)
・Sleep…ヴァレリアンルートを贅沢に使用。ベッドタイムのお供に。
(原料:ヴァレリアンルート、カモミール、ラベンダーなど)
・Warm…香り豊かな7種のスパイスをブレンド。毎日の冷え対策サポ―トに。
(原料:紅茶(デカフェ)、有機ジンジャー、クミン、コリアンダーシードなど)
松浦さん:コーヒーやお茶に含まれるカフェインは、体内の水分を奪ってしまうばかりか、緊張状態を作り出してしまうんです。さらに、カフェインの作用によって血管が収縮して血流作用が悪くなってしまうので、できるだけカフェインは使いたくないのが本音。
『LAOSI』で人気の漢方薬膳茶は、“ハーブティ以上、漢方薬未満”がコンセプト。1年という開発期間をかけて、莫大なサンプルの中から0.01gグラム単位でブレンドの検証を徹底的に繰り返して誕生したお茶です。4種類のうち2種(Power、Warm)はデカフェの紅茶をベースに、ハーブティーの風味のもの足りなさから飲みごたえがないという人でもしっかり飲めるようにしたくて、茶葉をしっかり入れて風味豊かに仕上げています。
リラックスタイムにおすすめなCalmは、ルイボスティーをベースにしたもの。ルイボスティーは意外かもしれませんが、体をすごく冷やしてしまうものなので、『LAOSI』では鎮静作用として使います。そこにリラックス効果の高いハーブを配合することで、例えば夕方イライラしたり、仕事で疲れて神経が高ぶってきたりしたときなどにおすすめ。
Sleepはただただ、睡眠のみに特化しています。ヴァレリアンルートというハーブを配合しているのですが、これが安眠効果がものすごく高くて! 私はすぐ寝ちゃうタイプなので、Sleepの開発中は帰りの電車で起き上がれないくらいに眠っていたんですよ。そして、今でも途中で眠くなってしまうので、全部は飲みきれません(笑)。
『LAOSI』を訪れるお客さまの中には睡眠のお悩みを抱えた人も多くいらっしゃいますが、最初は漢方薬+Sleepという組み合わせからスタートして、最終的には皆さんSleepのみという例もすごく多いんですよ。ぜひ試してみてくださいね。
撮影/柳 香穂 構成・取材・文/木土さや