腸内環境の良し悪しがメンタルにも影響を及ぼすという、脳と腸の蜜月関係=“脳腸相関”。体のためにも心のためにも、腸をもっとキレイにするには? 腸内洗浄専門家の齊藤早苗先生に、毎日のセルフケアとして取り入れられる“腸もみ”について教えてもらいました。体の内側からだけでなく、外側からもアプローチすることで、より腸内環境が整いやすくなるのだとか!
腸内洗浄専門家
腸内洗浄専門家、インナー美人アドバイザー。看護師として大学病院などに勤務した後、アメリカで腸内洗浄の研修を受け、開業ライセンスを取得。20年以上にわたり、2万人以上の頑固な便秘やぽっこりお腹に悩む女性に、コロンハイドセラピーを施しながら、腸ヘルスケアの指導を行なっている。現在は対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座に勤務。(女性ライフクリニック銀座コロンハイドロセラピーHP (https://www.xn--pcka3d5a7l461rvl1bkkap56m.com/)
便秘を改善すると多幸感が上がる!?
――腸がよくなると脳にもいい影響が及ぼされ、毎日幸せな気持ちで過ごせるようになるのでしょうか?
齊藤先生:そうですね。腸の調子が悪いとその信号が脳に送られて、鬱々した気持ちが生まれたり、イライラしてしまうんです。腸の調子がよければその逆のことが起こるので、幸せな気持ちになれるんです。
――ちょっと極端な話かもしれませんが、便秘の人は快便の人よりも幸せを感じにくいということですか?
齊藤先生:そのとおり! 私のクリニックでは腸の機能や便秘の改善に特化した腸内洗浄を行っているのですが、来られる方は皆さん便秘でなんだか顔が暗いんです(笑)。でも腸内洗浄が終わると表情がすごく明るくなるんですよ! たった40分ほどの時間なのですが、便を出し切ったことで見違えるほど変わる。それは自分で腸を動かして便を出せたことによるスッキリ感に起因するところもあるんですよね。下剤に頼って便を出してもこのスッキリ感は味わえません。なので毎日きちんと自力で便を出せる人は、幸せを感じやすいと思います。
――自力で便を出すための手段として“腸もみ”は効果がありますか?
齊藤先生:もちろんあります。内側からのケアも大切ですが、腸もみを行うことで血行がよくなって腸が動きやすくなり、便が出やすくなります。
まずは毎日つづけてみよう! 基本の腸もみ
――なるほど。ぜひ基本的な腸揉みのやり方をおしえてください!
齊藤先生:ではいちばんベーシックで簡単なやり方をお伝えしますね。まずおへその上に右手を当てその上に左手を重ね、くるくる時計回りにマッサージします。実は腸というのは袋の中に入っていて、その袋のようなものをキュッと締めた場所と上行結腸・下行結腸だけが体にくっついていて、それ以外は離れているんです。そのくっついている場所がちょうどおへそのあたりにあるんですね。腸の動きが悪くなると内臓が下がってきて、ここにすごくテンションがかかってくるので、動きがよくなるようにほぐすという意味合いもあります。
まずはおへその辺りを小さく時計回りに10回くらい回し、そのあとは大腸をマッサージするために大きく10回くらい回してください。できれば朝起きた直後と寝る前の2回、毎日5分くらいを目安に行うのがよいですね。時間がないときは1分だけでもいいのでやるようにしてください。とにかく継続して行うことが重要です。軽い便秘や腸の不調であれば、これだけで改善される可能性は大きいです。
――どれくらいの力で揉むのがよいのでしょうか?
齊藤先生:そんなに強く押さなくても効果はあるんですよ。シャカシャカさするだけで皮膚の感覚を通して神経のほうに届くので。慣れてきたら、腸もみする前にお腹を触って状態をチェックすることもプラスして行なってみてください。毎日自分のお腹に触れることで、硬い場所がだんだんわかってくるんです。そこに大概、便がたまっているので、ちょっと強めに押すのもいいですね。ただあまりにもお腹が痛いのに我慢してグリグリと押したり、道具を使って押すのは危険です。あくまで手を使って優しく、摩ったり撫でたりしてください。
出そうで出ないときに効く腸もみは?
――どれくらい続けたら便通は改善されるのでしょうか?
齊藤先生:毎日出るけれどスッキリしない、お腹が張ってぽっこりしているといった悩みであれば、基本のやり方を数日続ければ効果が感じられると思いますよ。それからトイレに入って力んでも出づらい出口便秘のような状態の場合、便座に座って出す姿勢になったら、恥骨とへその間にゲンコツを並べて置いて前屈して5秒キープして5秒休む、というのを数回繰り返してください。出そうで出ない人の多くは、腸が垂れ下がって動きが弱くなっているんです。だから力んだところで便がたまっている場所に力が加わらないので、手を当てて前屈して腹圧を上げることで出やすくなるんです。
頑固な便秘を改善する腸もみは?
――頑固な便秘の人は違ったやり方があるのでしょうか?
齊藤先生:そうですね。トイレでさする腸もみをやるのが効果的だと思います。先ほど紹介したものに加えて2つ紹介するので、組み合わせてやってみてください。
まずは腸全体を刺激する腸もみからお伝えします。トイレに座り、出す準備をしたら、息を一度吸い、吐きながらギュッと左に捻ります。そこで深呼吸を10回します。吐きながら正面に戻り、次は右側も同じように行います。これをもう1セット繰り返し正面に戻ります。次に腰に手を当て、グッと腰を後ろに引いて、骨盤が倒れるようにしたら5秒間キープしてください。元の位置に戻したら、お腹が伸びるように前傾姿勢になり5秒間キープし元の位置に戻します。これを3回繰り返してください。
齊藤先生:次に紹介するのは、仕事が忙しくて晩ごはんが21時を過ぎてしまったり、夜更かしをして胃腸に食べ物が残っている方にオススメの腸もみです。トイレに座り、出す準備が整ったら、自分の内臓を手のひらで挟んでいきます。まずは肋骨の下あたりにある胃を、両脇腹から中央に向かって寄せるように挟んだら5秒間キープします。おへその少し上、おへそ、下腹も同じように行います。これを2回繰り返します。もし挟んでいるときに便意がきたら、その場所を挟み続けてください。
それでも治らない便秘…薬は使ってもいい? おすすめの食事は?
――便秘の人は薬に頼りがちですが、薬を飲むことは腸への負担になりますか?
齊藤先生:負担はかかりますが、4〜5日出ないときに放置しておくと腸が伸びてしまうので、薬は賢く使ったほうがいいとは思います。ただ腸は黙っていても動く場所なので、止まってしまうこと自体が異常事態ではあるんです。原因は人によって違いますが、いちばん大きいのは食事ですね。何を食べているのかはもちろん、いつ食べているのかというのもすごく重要です。消化管には動くリズムがあるので、それに合わせて食べないといけないんです。それから運動も重要です。ただ運動が苦手な人は代用として、腸揉みをするのは効果的ですね。
――腸にとってベストな食事のタイミングをぜひ教えてください!
齊藤先生:夕飯を遅い時間に食べると胃の中に物が入った状態で寝ることになるので、腸を掃除する動きが起こりづらくなってしまいます。寝る4時間前までには食事を済ませるのがおすすめです。胃の働きは個人差が大きいので、寝るときに小腹がすいている状態。理想はグ~ッ! と胃が鳴るくらいです。ほぼ空腹の状態ですね。人間は日中活動をして夜に休むようにできているので、寝ている間に腸の掃除をするんですよ。胃と大腸の間にある6メートルくらいの細い管では、日中食べたものが分解されてドロドロになった液体の養分を吸収し、残りカスを大腸に送る動きをしています。ただ、夜遅い時間に何か食べてしまうとこの動きが起きづらくなってしまい、朝になっても便ができていない状態に陥ってしまうのです。
それからS状結腸という便がたまる腸は、ある程度便の容量がたまってくると、重さで直腸の方にうんちが落ちるようになっているんです。それが起きず、便のかさが足りない状態だと、いくらお尻の先っぽにうんちがたまっていても出ないわけですよ。S状結腸や直腸がいちばん動きやすい時間帯は、朝起きてから1時間以内と言われているので、そこで朝食をとるのも重要です。胃は司令塔なので、食べ物が入って胃が動くと全部の腸がずるずると動くんですよ。
――仕事で夜遅くに疲れて帰ってきてドカ食いし、朝起きておなかがすいていないから食べないなんていうのは…最悪のパターンですね(笑)。
齊藤先生:そのとおりです(笑)。小腸の中に未消化物が停滞しているので疲れが取れないし、イライラする状態が続くことで、腸だけでなく脳にも悪影響を及ぼします。そういう食事パターンに陥った場合、腸マッサージはもちろんだけど、週末にプチ断食をするのがおすすめです。まず土曜日の夕食を抜き、胃の中を空っぽな状態にして、小腸に残っている未消化物を大腸に送れるようにします。日曜は起きて1時間以内に朝食を食べれば、お通じが来やすくなるので、ぜひやってみてください。
さらにスッキリ! 腸内洗浄で腸内環境をリセットするのも効果的
――腸をキレイにするということに関しては、腸揉みより腸内洗浄の方が効果が出やすいのでしょうか?
齊藤先生:そうですね。毎日スッキリと快便な人は腸内環境が整っているのでやる必要はありませんが、それ以外の人は腸内洗浄をやってみる価値はあると思います。自分で腸内環境がいいか判断する簡単な方法は、まずトイレに入ったときに力まずにつるんと排便できるか、次に便を出したあとにお腹がぺたんと凹んですっきり感があるか、それからおならや便が臭くないかということですね。
――腸内洗浄は具体的にどんなことをするのでしょうか?
齊藤先生:私の勤務しているクリニックでは、まずおなかに対してどういうお悩みを持っているかを最初にうかがい、解決するための方針を立てます。その後、食事のパターンや生活習慣のパターンから腸の状態を問診させていただき、腸内洗浄に入ります。そして腸内洗浄をしている間に、腸の形や動き方から不調の原因を特定します。また腸内の細菌のバランスを整えるのもすごく重要なので、プロバイオティクスを一緒に飲んでいただくことが多いですね。これは腸を動かすのに特化した菌です。それを飲みながら食習慣や生活習慣を2、3個変えるだけで腸の動きがよくなるので、体験した方は皆さん驚かれます。
――へぇ! 何回やれば効果が出るのですか?
齊藤先生:腸内環境を一気にリセットできるので、ほとんどの人は1回で感じますよ。下剤を何年も使い続けている人でも4〜5回やれば実感できると思います。腸内洗浄することで腸内の老廃物が取れると血行がすごくよくなるので、終わった直後に肌の色がツートーンくらい明るくなったり、潤った感じに変わりますよ。さらに継続的に腸内細菌のバランスを整えることで、老廃物の交換が進んで代謝がよくなり、お肌の水分量が上がって乾燥肌が改善されて毛穴やシワも目立たなくなったりする効果も期待できます。それからむくみが改善されるからなのか、利用者さんからは顔が小さくなったり、お尻や脚が細くなったと言われることも多いです。
――いいこと尽くしですね!
齊藤先生:そうなんです! 先ほど腸揉みのときにお話した、腸が下がって便秘になっている人は、腸内洗浄をすることで腸が柔らかくなって便がスルスル出るようになり、ズボンのサイズが3つくらい下がったりすることもあるんですよ。それからメンタル面でもいい変化がすぐに出ます。お腹がすっきりした途端に顔色がすごくよくなって、急に機嫌がよくなったように笑顔になるのはもちろん、仕事でイライラしづらくなった、子どもに対して怒る回数が減ったなどの声も聞きます。
――腸内環境を整えるだけでそんなにいい効果が期待できるなんて驚きです! 最近はネット通販などで腸内洗浄キットが売られていますが、それでも効果はあるのでしょうか?
齊藤先生:先ほど説明した私の勤務しているクリニックで行なっている腸内洗浄と、市販のキットで行う腸内洗浄はシステムがまったく違うものなんです。自分でやることで肛門が傷ついてしまったり、乱用し過ぎて自然に便が出なくなる人もいるようなので、おすすめはできません。自分で行うのであれば、腸もみが断然おすすめです。
取材・文/菊池美里 イラスト/佐藤 彩 企画・編集/木村美紀(yoi)