本格的な夏を迎え、猛暑と湿気、そして冷房が原因で体調を崩しがちな人が増えてきます。そんなときには消化吸収がよく、胃腸に優しいお粥を取り入れるのがおすすめ。国際薬膳師の有田千幸さんに、心身をリセットするお粥のレシピを伺いました。
台湾では、日常的にお粥を食べる“養生”の習慣がある
有田さん:日本では、病気になってから食べるイメージがあるお粥ですが、中華圏では心と体を健やかに保つために、日常的に食べるものです。中医学的にもお米は気を補い心を養う力があるとされていて、お粥は養生食の基本です。
私が10年近く暮らしていた台湾にも“養生”という考え方があります。「季節に応じた生活をして、心と体を健やかに保とう」というもので、“心と体のメンテナンス”というとわかりやすいかもしれません。
夏は暑さで体に熱が篭ったり余分な水分が溜まったり、全身に血を巡らせる力が弱まりやすくなります。イライラしたり、不安な気持ちになったり、倦怠感が続いたり、睡眠の質の低下も……。これが特に夏に多く現れる不調のサインです。
さらに暑いからといって冷たいものを飲む、冷房のきいた部屋で過ごすという習慣があると、体が必要以上に冷えすぎてしまい、胃腸の働きが悪くなると消化吸収力が落ちてしまうという悪循環が生まれて、さらに疲れやすくなってしまいます。
そんな不調のサイクルをリセットするには、温かくて消化吸収がよく、水分補給にもなるお粥がぴったりです。溜まった夏の疲れをリセットして、健やかでいるために、日常的にお粥を食べる習慣をつけてみてください。
シンプルな養生粥「清粥(チンズォウ)」で心身をリセット
有田さん:中華粥のなかでも最も手軽に作れて、米と水と調味料だけのシンプルなお粥、「清粥(チンズォウ)」の作り方を紹介します。炊いたご飯から作る日本のお粥と異なり、水分量が多く、ふわとろとした優しい食感と味わいが魅力です。
家に常備しているものでできるので、自分で体を整え、労わる“セルフケア”のひとつとして、作り方を知っておくと役に立ちますよ。不調のときに限らず、一度心身をリセットしたいと感じるときにも、ぜひ試してみてください。
清粥の基本の材料(3~4杯分・作りやすい分量)
米 100g
もち米 10g
植物油 小さじ1
酒、しろたまり 各大さじ1
水 1000~1100㎖
米ともち米は10:1の割合が目安です。白醤油の2倍の小麦麹を使った「しろたまり」を使うことで旨味とコクをプラスします。(なければ白醤油で代用可能)
お好みで加えて中華風に…
植物油をごま油、酒を紹興酒に変えると、より香りが豊かな中華風の味になります。
清粥の作り方
【1】米を洗う
ざるに米、もち米を入れて洗う。米の汚れをとる程度でOK。
【2】米を乾かす
洗った米ともち米は水をよく切り、そのまま置いてパラっとするまで乾かす。夏場は1時間程度が目安。朝に食べる場合は前日夜から乾かしておくとよい。
【3】油を加える
ボウルに乾かした米ともち米を入れ、油を加える。米一粒一粒に油をコーティングするように混ぜ、10分ほど置く。
【4】調味料を加えて火にかける
鍋に水と調味料を加える。中火にかけ、沸騰したら米を加える。
【5】極弱火にして30分ほど煮込む
米を加えたら木べらでぐるっと混ぜ、再沸騰したら極弱火で加熱する。再沸騰したときは焦げやすいので注意。
木べらなどで10分に1回程度混ぜながら、30分ほど煮込む。
【6】完成
米がふっくらと花が開いたようになり、とろみがついたら完成。
一日を活動的に過ごすために、朝食にお粥を取り入れてみる
有田さん:お粥はいつ食べてもいいものですが、一日を活動的に、元気に過ごすためには朝にいただくのがおすすめです。私自身、朝にお粥を食べることで朝から頭がまわるようになり、午前中を有効に使えるようになりました。
一度にたくさん作り、小分けにして冷凍保存しておくのも、手間なく食べることができるのでおすすめです。忙しい日が続くとき、「疲れたな」「ちょっといつもと違うな」と思ったときに食べて、胃腸を労わるのもいいですね。お米の甘みが感じられるように薄味に作っているので、気分で梅干しや腐乳など塩気のあるものをプラスしてもOK。自由に、そして気軽にお粥を楽しんでみてください。
撮影/相馬ミナ 取材・文/高田真莉絵 構成/渋谷香菜子