近年、注目を集めている「ナチュラルワイン」。飲みやすさや自然な風味で人気を博していますが、実際のところどんなワインなのかご存じですか? 普通のワインとの違いや、オーガニックワインとの関係、そしてその魅力を知ることで、ナチュラルワインをもっと楽しむことができます。今回は、軽井沢に店舗を構える「セルクル」のオーナーソムリエ、鎗田順一さんに、ナチュラルワインの世界を深掘りして教えていただきました。
セルクルオーナーソムリエ
星野リゾートでレストランサービスの経験を経て、上質な軽井沢ライフスタイルをサポートする「セルクル」をオープン。セルクルでは「造り手の想いや土地を感じられるワインを通じて、食卓が贅沢になること」を理念とし、信頼のおける上質なナチュラルワインを提供しています。
今さら聞けない⁉︎ ナチュラルワインQ&A
Q ナチュラルワインと一般的なワインの違いは?
実は、ナチュラルワインには明確な定義がないんです。なのでお店のソムリエによって、解釈はまちまち。私は、そこもナチュラルワインの面白いところだと思います。
ナチュラルワインは土地の風土をそのままブドウに反映させる製法が特徴。なので「セルクル」では、機械で効率的に造るワインとは異なり、ブドウの自然な成長や発酵過程を大切にしたワインを「ナチュラルワイン」として取り扱い、私は「人が見えるワインがナチュラルワイン」と表現しています。
Q ナチュラルワインとオーガニックワインの違いは?
オーガニックワインは、特定の規定に基づいて栽培された土壌で育てた、オーガニック認証を取得したブドウから造られたもの。なので、オーガニックワイン=ナチュラルワインとは限りません。
ナチュラルワインは、オーガニック認証がなくても、自然な方法で造られ、化学物質や機械の使用を避けたワインが多い傾向にあります。
Q ナチュラルワインでも酸化防止剤を使う?
「ナチュラルワインなのに酸化防止剤を使ってる」と、ラベルを見て思う方もいるはず。ワインは、瓶内熟成の過程で酸化防止剤と同じ成分を作り出してしまうため、たとえ使っていなくても、すべてのワインに表記する必要があります。
ただ、知っておいてほしいのが、酸化防止剤を使うことが悪いわけではないということ。少量の酸化防止剤を使うことで、品質を安定させることができるので、不使用だからおいしいというわけではないですし、使っているからダメということでもありません。
Q 二日酔いしにくいってほんと?
ナチュラルワインは一般的なワインに比べて酸化防止剤の使用量が少ないため、二日酔いしにくいと言われることがあります。しかし、科学的に証明されているわけではありません。実際のところ、酸化防止剤だけが原因ではなく、ワインの品質管理がアルコールの質に大きく影響していると考えられます。
特に、ワインが日本に輸入される過程での温度管理が重要です。適切な温度で管理されていないと、温度変化による品質劣化で、頭痛を引き起こす成分が生成される可能性があります。安価なワインは温度管理が不十分なことが多く、これが二日酔いの原因のひとつになっているのです。
そのため、ナチュラルワインを楽しむ際は、輸送時の温度管理が徹底された、信頼できるインポーターから仕入れているお店で購入することが大切です。品質がしっかり管理されているワインであれば、安心しておいしく楽しめるはず。ナチュラルワインだから大丈夫というわけではなく、信頼できるお店選びが重要なポイントです。
Q ナチュラルワインはなぜ濁ったりしているの?
一般的なワインは、雑味や舌触りが悪くなるとして余分なものを排除し、製品の安定性を高めるためにフィルター処理をしたり、清澄という作業を行います。この処理により、透き通ったきれいなワインが完成します。
しかし、ナチュラルワインは「ブドウ本来の風味を味わってほしい」という理由から、フィルター処理をあえて行わないことが多く、その結果ブドウの皮の破片が入ったり、澱(おり)がたまることがあります。
濁りの原因は、ブドウの皮や果実の成分がワインに残ったもので、自然な風味をダイレクトに楽しむための工夫です。そのため、濁りや澱があるからといって品質が悪いわけではなく、むしろナチュラルワインならではの魅力なんですよ。
Q ナチュラルワインは酸味が大切?
ナチュラルワインは、ブドウ本来の風味を生かすことを重視しており、糖度を過度に高めずに仕上げるのが一般的です。糖度を上げると酸味が抑えられますが、ナチュラルワインではあえて酸味を残し、自然の旨みを大切にしています。そのため、酸味はナチュラルワインのおいしさのポイントのひとつ。
もし、酸味が苦手な場合は、ソムリエに「すっぱいワインが苦手」と伝えることで、強い酸味を避け、よりマイルドな味わいのワインを選んでもらえますよ。
Q オレンジワインはナチュラルワインだけ?
オレンジワインはナチュラルワインの一種として見かけることが多いですが、実際には一般的なワインのひとつでもあります。オレンジワインは、白ブドウを使って、赤ワインと同じ製法で造るもので、ブドウの皮や種を絞った果汁に漬け込んだり、一緒にに発酵させることで独特の色と風味が生まれます。
この製法は、ワイン発祥の地であるジョージアで古代から伝わる伝統的な技法であり、最近では「原点回帰」の流れから、ナチュラルワインの造り手が多く採用するようになっています。オレンジワインは、土地の風味をダイレクトに感じることができるので、ナチュラルワインに適している造り方として、造り手からも人気です。
知っておきたい!ナチュラルワインの楽しみ方
──ナチュラルワインの味わい方
ナチュラルワインの最大の魅力は、毎年異なる味わいや、造り手の気持ち、自然環境の影響が色濃く反映されるところ。ナチュラルワインを楽しむ際は、あまり難しく考えずに、「どんな情景で造られたのかな?」とか、「造り手さんはどんな思いで造ったのかな?」といったストーリーを想像しながら味わうと、より深く楽しめます。造り手のこだわりや、その年のブドウの出来を感じながら、自然の恵みを味わうことが醍醐味です。
──日本の家庭料理に合わせてみる
かつては、アメリカナイズドされた濃い味付けの料理が日本でも好まれ、こうした料理にはしっかりとした味わいのワインがよく合っていました。しかし、近年、日本人の食生活は大きく変化していますよね。ヘルシー志向が高まり、素材本来の味を生かした和食や、あっさりとした家庭料理が再び見直されるようになってきたと思います。
そんな現代の日本の家庭料理にぴったり合うのが、自然な味わいのナチュラルワインです。ナチュラルワインは、自然な酸味や軽やかな口当たりが特徴で、和食の繊細な味やヘルシーな食事と絶妙に調和します。
おいしいナチュラルワインを見つけよう
ナチュラルワインを選ぶ際は、今までにおいしいと感じたワインの特徴や、飲むシチュエーションをワインショップのスタッフや、レストランのソムリエに伝えると、より好みに合ったワインを見つけやすくなります。
たとえば、白ワインでも「辛口が好き」「フルーティーな味わいが好み」「甘みのあるものがいい」など、具体的な好みを伝えることがポイントです。苦手な味わいや、重視したい味わいも、遠慮せずに伝えてください。
また、予算を伝えるのも重要なポイント。価格帯に応じたおすすめを提案してもらうことで、より満足できる選択ができますよ。
ナチュラルワインは、特別な知識がなくても気軽に楽しめるのが最大の魅力。自然そのものを味わう感覚で、自分の好みに合う一本を見つけてみましょう。
構成・取材・文/高浦彩加