ホームパーティに招かれた際、手土産としてとっておきのお酒を持っていくのはよくあること。しかしお酒が飲めない方や、妊活・妊娠や授乳などでお酒を控えている女性は一定数いるのに、ノンアルコール飲料に関しては手土産ともいえないソフトドリンク、ということが少なくありません。お酒を飲む人も飲まない人も楽しめる、ホームパーティや手土産のあり方を、食通の3人に聞きました!

座談会の参加メンバーはこちらの3人!

長谷川あかり

料理家・管理栄養士

長谷川あかり

栄養学に基づいた、“少ない食材で、作り方も簡単なのに、すごくおいしい!”レシピが大人気。SNSの総フォロワー数60万人超え。@BAILAで連載中の「長谷川あかりのご自愛ごはん」に加筆した書籍『わたしが整う、ご自愛ごはん 仕事終わりでもサッと作れて、じんわり美味しいレシピ30days』も上梓し、好評発売中。辛いものとお酒が大好き!

桜井鈴茂

「Low Alcoholic Cafe&Bar MARUKU」店長・小説家

桜井鈴茂

元々は毎晩飲んでいた愛飲家だが、近年は酒量を控えるようにしている。お酒を飲む人も、飲まない人もくつろげる、ノンアルコール&ローアルコール飲料が充実したサードプレイスとしてのカフェ&バーを学芸大学で営む。店内には、国内外から集めた選りすぐりのノンアルコール飲料が豊富に揃う。オンラインショップもあり。

広沢幸乃

ライター

広沢幸乃

粘り腰の精神で、おいしいと聞けばどこまでも。食、そして人と食を絡めたテーマを多く担当する。テレビプロデューサー・佐久間宣行さんの「ごきげんになる技術」(集英社)の書籍、SPURでは「佐久間Pの甘口人生相談」の連載を担当。好物は甘いもの。お酒は好きだけれど、すぐに酔っ払ってしまう。

自分やまわりの人の、お酒とのつき合い方は?

長谷川あかり MARUKU ノンアル 

広沢さん:今日はお集まりいただき、ありがとうございます。まずは自己紹介をかねて、アルコールとのつき合い方やホームパーティー事情についてお伺いしましょうか。

長谷川さん:20歳の誕生日の瞬間にビールで乾杯したのをきっかけに、29歳に至る現在までほぼ毎日飲むほど大好きです。一方で、夫が体質的にアルコールに弱いのと、同世代の友人たちは私のような酒飲みが少ないので、ノンアルコールドリンクについて知識を深めたいと思っていました。

桜井さん:僕はもともと飲んべえ。最近はお酒を控えていますが、以前は友達を招き、頻繁にホームパーティーを開いていましたね。妻の料理が評判だったこともあり、勢いに乗って、お酒を飲める人も飲まない人も通えるノンアルやローアル飲料が充実したバー「Low Alcoholic Cafe&Bar MARUKU」を開いたほど(笑)。

広沢さん:お店を始められて、客層や嗜好についての気づきはありました?

桜井さん:お酒を飲む方と飲まない方の割合は5:5くらいで、かつては愛飲家だったけれど今は酒量を減らしている人のほか、体質的にお酒が合わない人が一定数いらっしゃることがリアルにわかりましたね。

長谷川さんそういう方はソフトドリンクしか選択肢がないことが多いし、そもそもバーだと居場所がないと感じることも。桜井さんのようなお店は心強い存在ですね。

桜井さん:お酒は大好きだけど、「今週、忙しくて」とか「明日の朝、早いから」とあえてノンアルコール飲料をチョイスする人も。あとは、アルコールとノンアルコールを交互に飲む人も増えていますね。

広沢さん:私、完全にそのタイプです。おいしいノンアルコール飲料だと、気分も冷めにくいですし、体への負担も少ない。アルコールとノンアルコールを交互に飲んで酒量を調整する飲み方を「ゼブラ飲み」と呼ぶそうで、海外ではトレンドになっているみたい。

ホームパーティーでの、“飲む派”“飲まない派”それぞれへの気配りは?

長谷川さん:最近は、妊娠中や授乳中の友人も多くなってきて。これまではカフェやレストランに集まっていたけれど、荷物を持って移動するのもひと苦労だろうし…だったら、その友人の家に集まろう!ってことも増えましたね。その場合は、相手の負担を減らしたいから、飲み物といっしょに料理をあれこれタッパーに詰めて……。

広沢さん:自分の味に飽きている頃だろうから、それはうれしいはず。一方で、長谷川さんはご自宅でホームパーティーをしている印象もあります。

長谷川さん:料理家という職業柄、試作もたくさん。おもてなしをするというより、「ご飯作ったからおいで〜」と号令をかけて自宅を開放。来られる友人らが集まってくる感じですね。

長谷川あかり 料理家 ノンアルコール ホームパーティ

桜井さん:気張らない感じなんですね。時間を気にせずゆるゆるできるのがホームパーティーの醍醐味ですし。自宅の場合、飲み物はどんな感じで用意しておくんですか?

長谷川さん:いろいろなジャンルの料理を作るので、どんなメニューにも合うレンジの広いワインを何本かは必ず。ただ、あんまり私が肩をぶん回して注ぐのも申し訳ないので、「一杯目は、自分が飲みたいものを持ってきてね」と伝えることも。ビールなのか、酎ハイなのか、それとも炭酸水なのか? ゲストそれぞれの気分や体調を探りつつ、お酒や料理を展開していきます。

桜井さん:その手法、いいですね。酒飲みだけだと「とりあえずアルコールがあれば、何でもOK」という人は多いけれども、実は、お酒に弱い方や飲めない人がいる席のほうが、配慮することって多いような気がしています。

長谷川さん:わかります。アルコール許容量の少ない方のほうが、「自然派ワインのほうが体に合う」とか「オレンジワインなら」など、好みが細かいかもしれませんね。

桜井さん:わかるなぁ。そして、実はお酒が飲めない方の中にも、“下戸”と、“かつて飲んでいたけれど今は控えている・飲めなくはないが強くない”の2パターンあると気づいて。

下戸の方だと、アルコールを味わう舌が開発されていないから、“お酒っぽい味”が苦手な方が多いんですよね。だから、ビールの味に近いおいしいノンアルコールビールを渡しても反応が薄い(苦笑)。そういう方には、ノンアルビールよりも、スパークリング系のノンアルとかのほうが喜んでもらえますね。

桜井鈴茂 ノンアルコール MARUKU

長谷川さん:私の夫は完全なる下戸ですが、まわりがお酒を飲んでいるときに、自分だけお茶なのはどうも気分が上がらないないらしくて……。みんなと楽しい雰囲気を分かち合いたいのだろうと予測し、解決策としてグラスで乾杯できるノンアルコールドリンクを用意しておくように。でも、日本ではまだ、おいしいものが手に入りにくいと感じます。 

広沢さん:飲食店でも、ノンアルコール飲料が豊富なレストランはごく一部。海外の富裕層が宿泊する都心のホテルで、増えてきた印象はありますが……。

桜井さん:逸品はたくさんあるのに、一般市場にはあまり出回っていないのがもったいないですよね。ノンアルコールドリンクは酒類ではなく食品の部類に入るので、輸入のハードルが高くなるのが、原因のひとつとして考えられますね。

長谷川さん:なるほど。加えて、お酒好きにとっては“ノンアルコールドリンク=甘い”ものが多いというイメージが根強いから、関心を持つ人がまだ少ないかもしれません。知識として情報を得て、その概念を取り払う必要がありますね。

広沢幸乃 ライター お酒 ノンアルコール

アルコールとノンアルコール、じつは地続きだった!

桜井さん:そもそも論ですが、ノンアルコールドリンクってソフトドリンク側にカテゴライズされがち。だけど、今人気のノンアルコールドリンクはアルコール成分が限りなくゼロに近かったり(日本の法律上は1%未満)、ゼロまで減らしていたりして、実は酒類の仲間なんです。例えば脱アルコールワインなら、通常の製法でワインを造った後にアルコール分だけを取り除いたものですし。

そう考えれば、お酒好きの人も「飲んでみようかな」という気になるかも

広沢さんアルコールとノンアルはつい分けて考えがちですが、今人気のものは地続きなんですね。おまけに色合いも近しいし、いただくときのグラスも同じだから、垣根も感じにくい。

アルコール度数で分けるとノンアルとソフドリが仲間になるけれど、味わいや作り方で分けるとお酒とノンアルが仲間になることも…。そう考えると、気分や状況に応じて、もっと柔軟に選んでいけそうですね。

長谷川さん:アルコールでもノンアルコールでもソフドリでも、その場が楽しければいいですよね。酒席でありがちな「今日、飲めなくてゴメン!」みたいなフォローを入れる必要がなくなるといいな。

桜井さん:お店を始めて4経ちますが、オープン当初よりノンアルコールに対するリテラシーは少しずつ上がっていると思います。特に若年層は試しに飲んでみようという方が多いですし、頑なにお酒を飲み続けてきた方でも「今日は交互に飲もうかな」とか「ノンアルにしとこうか」とおっしゃる方がだいぶ増えました。ドリンクのポテンシャルが高いので、こちらが伝えるまでノンアルだと気づかない方もいるくらい(笑)。

長谷川さん:ノンアルコールドリンクでもおいしいのがわかると抵抗なく楽しめますし、よりお酒との上手なつき合い方ができそうです。

広沢さん:次の記事からは、料理のジャンルやテーマに合わせて3人それぞれが選んだ、アルコール・ノンアルコール(&ソフト)ドリンクを紹介していきましょうか。

長谷川あかり 桜井鈴茂 広沢幸乃 座談会

撮影/吉田歩 スタイリスト/荻野玲子 取材・文/広沢幸乃 企画・構成/木村美紀(yoi) 撮影協力/UTUWA