中元日芽香さんは乃木坂46の元メンバーであり、現在は心理カウンセラー。この連載では、“推される側”を経験し、“推す側”のメンタルにも寄り添ってきた彼女ならではの視点で、推し活とメンタルヘルスの関係について語ります。第16回のテーマは「私とヘルシーな推し活」。推し活テーマでの連載は最終回となり、次回からはテーマを新たにリニューアルします。今回は中元さんが心理カウンセラーとして、元アイドルとして、また、ひとりの個人として、この約1年半を振り返ります!


心理カウンセラー&メンタルトレーナー
1996年4月13日生まれ、広島県出身。2011年からアイドルグループ・乃木坂46のメンバーとして活動し、2017年に卒業。早稲田大学で認知行動療法やカウンセリング学などを学び、2018年にカウンセリングサロン「モニカと私」を開設。心理カウンセラーとして活動を始め、今に至る。著書に『ありがとう、わたし 乃木坂46を卒業して、心理カウンセラーになるまで』『なんでも聴くよ。中元日芽香のお悩みカウンセリングルーム』(共に文藝春秋)。現在、メディアプラットフォームnoteにて、日々の活動の中で気づいたこと、感じたことを月2回不定期更新中。
第16回のテーマは、過去の連載を振り返って「私とヘルシーな推し活」

これまで「推し活とメンタルヘルス」というテーマで語ってきたこの連載は、最終回となりました。今まで読んでくださった皆さん、ありがとうございました! 今回は、これまでの連載を振り返りながら、私の中に芽生えた「ヘルシーな推し活」の未来についてお話したいと思います。
連載のスタートは、2023年12月。心理カウンセラーとしての活動を始めてから約5年後のことでした。第13回「推し活はリアルな仕事に生かせる?」でもお話しましたが、アイドルからまったくの異業種に転身した私は、「過去の経験を今の仕事に生かすのは難しい、また1から積み上げないといけないな」と思いながら仕事を頑張っていた時期です。
アイドルを経て心理カウンセラーになった立場から「推し活」を語ってほしいと連載のお話をいただいたときは、とてもうれしかった。アイドルをしていた6年間の経験、心理カウンセラーとしての5年間の経験、2つを通じて語れる言葉があるかもしれない。過去と現在の私自身を結びつけていただけた気がしました。
推される側のアイドルではなく、自分自身として撮影された写真

初めての撮影では少し緊張しました。乃木坂46を卒業後、心理カウンセラーとしての仕事を始めてから、被写体としてカメラの前に立つのは久しぶりのこと。「いい表情ができるかな?」と不安でした。けれどシャッターが切られ、スタッフとコミュニケーションをとるうちに「今の私は心理カウンセラーであってアイドルではない。だから『正解』の表情を目指さなくてもいいんだ」と思えるようになりました。
アイドル時代の写真を見返すと、「なんだかいつも同じ顔をしていたんだな」と自分自身に思うことがあります。それはいわゆるアイドルスマイルで、「はい、みんなが好きなこの顔、できます!」という感じ。当時は自分なりのプロ意識でもあったのでしょう。カメラの前では、アイドルとしての正解だと思うスタンスをくずさずにいることが大切でした。
けれど20代後半という年齢になって、yoiというウェルネスをテーマにした媒体で撮影されるのは、また別の私。例えば、笑顔や目をぱちっと開いた表情だけでなく、横顔や力を抜いた瞬間の私が写真に写し出され、衣装もとても印象的。ジャケットでカッコよく、結婚発表のタイミングではドレスで、また今回のように遠出のロケをして、気持ちのいい空気と一緒に撮影したことも思い出深いです。
完璧で正解のアイドルではなく、体温があって、生きていて、コンディションも日々違って、素肌や目尻に歳を重ねた跡がある。そんな今の私自身と気持ちにリンクしたようなシチュエーションで、皆さんと一緒に考えながら表現した連載の写真でした。
連載を通じて感じた自分自身のメンタルの変化

「推し活とメンタルヘルス」について語った各回も、写真と同様その時どきの自分自身の内面が表れているように思います。この2年弱、私の生活や心境を振り返ってみると、緩やかだけれど大きな変化がありました。
連載が始まる前までは、心理カウンセラーとして独立した、強い女性に憧れていたところもありました。そこから、もう少し肩の力を抜いたほうが自分らしいと感じるようになり、連載で語る言葉にも表れてきました。
パートナーとの結婚や、しばらく会えていなかった友人たちとの縁が復活するなどの出来事もあり、どこか少しずつ、精神的なゆとりが生まれてきたように思います。その余裕が私の言葉や表情ににじみでて、受け手の方々に安心感として届けられたらいいな、と思っています。
更新されるごとにリアクションをたくさんいただけたことも、ありがたかったです。ヘルシーな推し活について、私が伝えてきた言葉は「こうすればヘルシー」という結論や正解ではありません。「どうすればよかっただろう?」「こうしたらもっと素敵かもしれない」という投げかけ。記事を読んで皆さんが考えたことをSNSなどでコメントしてくださって、私がまた考えを深め、一緒に育てていけるような連載だったように思います。
ヘルシーな推し活は、きっと明るい未来にもつながっていく

この連載を通じていただいたリアクションには、「推し活で、自分自身では解決できない心理的なモヤモヤがあるのだけれど、仕事や日常生活の悩みと違って『たいしたことじゃない』と思われないかな?」という人が、「推し活のことでも悩みは生まれるし、それを心理カウンセラーに話してもいいんだ」と気づけたというお声も。また「推し活について自分はピンと来なかったけれど、こんなふうに何かに熱中する心理が少しわかったかもしれない」という感想もありました。
今や推し活は、一過性のブームではなく当たり前にあるカルチャーとして定着してきました。ポジティブなイメージもありながら、やはり人と人が関わることなのでネガティブな部分も生まれてきます。そこに光を当てながら、どうあることがヘルシーな推し活なのか、皆さんと一緒に考えることができたことは、私にとってとても深い学びにつながりました。過去に推される側として、メンタルヘルスに不調を抱えていた自分にも「こんな未来に通じてゆくよ」と知らせてあげたい気持ちです。
そして私、中元日芽香の連載は、次回からリニューアル! 心を癒すグッズたちを私なりの言葉でご紹介するページになる予定です。メンタルが不安定なとき、気持ちが上向くアイテムや方法を再び皆さんと分かち合えたらいいなと思っています。お楽しみに!
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撮影/森川英里 ヘア&メイク/上野祐実 スタイリスト/高野麻子 画像デザイン/齋藤春香 取材・文/久保田梓美 企画・構成/木村美紀(yoi)