仕事や人間関係で忙しい毎日を送る中、自分をリセットする時間はとても大切。誰にも気を遣わず、自由気ままにすごせる「ひとリート」は、心と体を癒す最高の方法です。今回は、さまざまなホテルに泊まり一人時間を満喫してきた、まろさんに、ひとリートの魅力やおすすめのすごし方を教えていただきました。
おひとりプロデューサー
“おひとりプロデューサー”。自身で運営するメディア『おひとりさま。』や、執筆・メディア出演を通して一人時間の意義を伝え、すごし方を提案している。なかでも一人ホテルの発信は話題になり、漫画『おひとりさまホテル』(新潮社)の原案を務めるほか、著書『おひとりホテルガイド』(朝日新聞出版)を出版。企業の一人客向けの企画も手掛けている。
「ひとリート」とは…
yoiが提唱している「一人で楽しむリトリート体験」を表す造語。半日程度の体験や日帰り・1泊2日程度の旅を含む、心と体のセルフケアに役立つ時間の使い方です。
一人の時間の大切さを実感したのは、社会人になってから

——まろさんがひとリートにハマったきっかけは?
まろ 学生時代から友達とすごす時間も楽しみながら、一人でゆっくりする時間が大好きでした。本格的に「一人時間の大切さ」を実感したのは社会人になってから。たくさんの人と関わる仕事だったので、自分だけの時間を意識的に確保するようになりました。
——会社員時代はどのくらいのペースでひとリートをしていましたか?
まろ 月1くらい休みを利用して一人旅を楽しんでいました。急に思いついて、長野・軽井沢まで日帰りで行くこともありましたね。ほかにも、一人でホテルに泊まることにもハマり 、住んでいる近場で1泊など、定期的にリフレッシュしていました。
——ひとリートでどんな変化を感じますか?
まろ セルフケアをする時間をとることで、疲れたときも「また頑張ろう」というパワーをもらえると感じています。友人との旅行は「楽しさ」が中心ですが、ひとリートでは「自分のための癒し」が最優先。誰にも気を遣わず、好きな時間に好きなことをする。それだけで、心と体が整っていく感覚があります。
——ひとリート初心者だと、まず行き先に迷いそうですが…。
まろ 行き先に迷うときは、ひとリートしている自分を妄想してみています。「自分が何をしたいのか」「どんな時間を求めているのか」をざっくり想像してみてください。
「温泉につかりたい」「アートに触れたい」のように、ある程度イメージを固めてから、具体的な場所を探していくんです。普段からInstagramなどで気になるホテルやスポットをストックしておくと、ひとリート先を決めやすくなると思います。

まろさん流・1泊2日ひとリート先の選び方
ホテルステイの達人・まろさんが、ひとリートをより充実させるための行き先選びのコツを伝授!気軽に行ける場所から、特別なご褒美ステイまで、自分にぴったりのステイスタイルの見つけ方とは。
Pattern 1. 過去に行って楽しかった場所を再訪する
まろ 初めての場所に一人で行くのって、ちょっとドキドキしますよね。そんなときは、過去に誰かと行って「ここ、よかったな」と思った場所を再訪するのがおすすめです。
わたしの場合、広島・尾道がそうでした。最初は友達と行ったのですが、「美しい街並みを眺めながら、ゆっくり一人ですごすのもよさそうだな」と思いリピートしています。土地勘がある程度あるからこそ気軽に動けるので、その分よりひとリートを満喫することができるんです。
Pattern 2. ホテルで非日常を過ごす
まろ 慌ただしい日々から離れて、非日常を味わえるホテルは、自分を癒す場所として最適。ホテル選びからすごし方まで自分次第なので、ラグジュアリーなホテルで贅沢に過ごす、カジュアルなホテルへ気軽に滞在するもよし。本を読むなど、いつもやっていることすら特別に感じられるはず。
おすすめのシーズンは、年明け〜春休み前までの3月、GW明け〜夏休み前までの7月。料金が下がることが多く、比較的一人で静かにすごせる穴場ですよ。
ひとリート先で快適にすごす3つのポイント

Point 1. 迷わず予定を変更する、落ち着く場所にじっくり時間をかける
まろ 行きたいお店のリストを作っていても、現地で「ここ、気になる!」と思ったら、迷わず予定変更できるのがひとリートの醍醐味。
カフェでも、まずはコーヒーを一杯だけ注文して、その空間が自分になじむかじっくり感じてみる。落ち着けると感じたら、追加でケーキを頼むのがわたしのルールです。一気に注文して後悔した経験があるので…(笑)。これはひとリートをより快適に楽しむための、ちょっとしたコツかもしれません!
Point 2. 何かを得なきゃ、と気負わない。おのずと新たな気づきが生まれたりする
まろ ひとリートだからといって、「何かを得なきゃ!」と気負う必要はありません。わたしも以前、「デジタルデトックスしなきゃ!」と意気込みすぎて、逆に落ち着かなかったことがありました。
だからこそ、ずっと寝てすごしてもOKということにしました。ホテルにこもって映画やドラマを観るのも、漫画を読むのも、何もしないのも、自分が心地よければそれが正解。同じ映画でも、ホテルで観ると記憶の残り方が違ったり、新たな気づきが生まれたりするものです。

Point 3. ローカルの本屋に立ち寄ってみる
まろ 時間に余裕があるときは、ローカルの本屋さんに立ち寄るのが楽しみ。その土地ならではの本やセレクトが並び、新しい発見があってワクワクします。
以前、青森・弘前の本屋さんで、版画家・棟方志功さんの本を見つけました。彼のふるさとが青森ということもあり、民藝が好きなわたしにとっては、まさに「ここで出合うべくして出会った一冊」。
後に富山を訪れた際、棟方志功さんゆかりの場所がいくつもあることを知り、青森での体験が思わぬ形でつながることに!そんな偶然の出会いを引き寄せるのも、旅先で出合うローカルの本屋さんならではだと感じています。
イラスト/おおさわ ちか 構成・取材・文/高浦彩加