週末の2~3日、一人で出かける海外の旅。予定を詰め込むのではなく、異国の時間と空間を味わい、癒される旅は今の気分にぴったり。今回は、旅作家として活躍しながら、ひとリートを楽しむ小林希さんおすすめの4つのスポットをご紹介します。
※情報は2025年6月の取材時のものです。
「ひとリート」とは…半日~日帰り・1泊2日程度の「一人で楽しむリトリート体験や旅」を表す造語。yoi発の、心と体のセルフケアに役立つ時間の使い方です。
旅作家
1982年生まれ、東京都出身。29歳で会社を退職し、世界をめぐる一人旅へ出発。約1年後に帰国し、旅作家としての活動をスタート。現在はフォトグラファーとしても活躍中。著書に『週末海外 ― 頑張る自分に、ご褒美旅を ―』(ワニブックス)がある。
1. 【1泊2日/台湾】懐かしく落ち着く街で、週末蚤の市散歩
小林 台北は、どこか懐かしい風景に胸がきゅっとなる街。日本との縁も深く、日本語が通じるお店もたくさん。飛行機でたった3時間、時差も1時間だけと、週末旅行にはうってつけの目的地です。
食事が安くて、おいしいのもうれしいポイント。屋台やおしゃれカフェが多く、一人でも思いきりグルメが楽しめます。また、タクシーもリーズナブルで、治安良好なので、ひとリート初心者には特におすすめです。
小林さんおすすめの過ごし方
1日目は、ホテルに荷物を置いたら、ふらっと猫カフェへ。
國父紀念館駅近くの「Toast Chat」は、スイーツと猫に癒される心地よい空間。保護猫たちがのんびり過ごす様子を眺めながら、甘いフレンチトーストとコーヒーでほっとひと息。一人旅ならではの贅沢な時間を、ゆったりと味わえる場所です(小林さん・以下同)。

2日目の朝は、週末限定のフリーマーケット「福和観光市集」へ。
昭和レトロのような雰囲気の中に、どこか懐かしい雑貨や器がずらりと並ぶフリーマーケット。私は小さな急須を見つけて、旅の記念にひとつ購入しました。まるで宝探しのように歩く時間が、何よりの癒し。
台湾らしさがぎゅっと詰まったこの場所では、あれこれお土産屋さんをめぐる予定を立てなくても、十分ショッピングを満喫できました。

2. 【1泊2日/グアム】常夏の島で、エンタメと文化をまるごと味わう
小林 たった3時間半のフライトで着く楽園・グアム。真っ青な海と空、南国の風に包まれてすごす週末は、まるで夢のよう。日本系ホテルや市内をめぐる「赤いシャトルバス」も充実しているから、一人旅でも安心です。
物価はやや高めですが、そのぶん観光客向けのサービスも行き届いていて、ストレスフリー。グアムはビーチリゾートのイメージが強いですが、ローカルのチャモロ文化や手つかずの自然を楽しむツアー、一人でも楽しめるエンタメ施設など、実は“ビーチだけじゃない”魅力がたくさん。
リゾート地ってパートナーや友人と楽しむイメージがあるけれど、実は一人旅にもぴったりなんです。おしゃれで混んでいないカフェも見つけやすく、自分のペースでのんびりすごす時間が、きっと心をリセットしてくれるはずです。
小林さんおすすめのすごし方
1日目の夜は、グアム版シルク・ド・ソレイユへ。
チャモロ文化と現代アートが融合した圧巻のショーに、五感が震えるような感動を覚えました。最先端のテクノロジーを駆使したシアターで繰り広げられる約70分間は、まさに息をのむパフォーマンシ連続。一人でじっくりと鑑賞できたからこそ、全身の細胞が躍るような、特別な時間になりました。

2日目は、朝からカヤックに乗ってジャングルを抜け、古代チャモロ人の村跡へ。
日本で事前に予約して参加した現地ツアーで、古代チャモロ人の村跡を訪れました。日本人インストラクターと一緒にカヤックを漕ぎながら、熱帯の木々が生い茂るジャングルの中へ。
緑に包まれた静けさの中をゆっくりと進んでいくと、やがて辿り着いたのは、かつてチャモロ人が暮らしていたとされる集落でした。再現された当時の家々が点在するその場所に立っていると、まるで時をさかのぼったかのような不思議な感覚に。まさに“小さなタイムスリップ”のような体験でした。

3. 【2泊3日/ブルネイ】七つ星ホテルで、静かに満ちる贅沢な時間を
小林 まだまだ知られていない宝石のような国、ブルネイ。東南アジア有数の裕福な国でありながら、街はとても静かで穏やか。治安もよく、一人でもゆったりと旅ができます。時差も1時間だけ。
直行便で約6時間半。週末+1日で、十分に非日常を味わえます。神秘的なモスクや水上の村、そして何より、まるで王宮のようなホテルが魅力です。
小林さんおすすめのすごし方
1日目は、「ジ・エンパイア・ブルネイ」に滞在。
金色の柱、大理石のロビー、静かなラグーン。すべてがまるで映画の中の王宮世界で、言葉にできないほどの美しさでした。しかも、ここに一泊3万5000円ほどで宿泊できるのも魅力的。
また、プールサイドで食べるブルネイ料理のビュッフェディナーも絶品。好きなものを少しずつ楽しめるビュッフェは、一人でも満喫できました!

2日目は、水上集落とモスクめぐり。
カラフルな家々が浮かぶ水上村には、暮らしの営みが息づいていて、観光地とは違うリアルな生活に触れられました。水上タクシーは一人でも気軽に利用できるので、ぜひ水上からめぐってみるのもおすすめ。
午後は、国のシンボル的存在である白亜と金の「スルタン・オマール・アリ・サイフディン・モスク」や、青の装飾が印象的な「ジャミ・アス・ハサナル・ボルキア・モスク」へ。祈りの空気が満ちる空間で、自然と背筋が伸びました。

3日目は豪華絢爛なホテルですごす、心の贅沢。
「ジ・エンパイア・ブルネイ」のラウンジでお茶を楽しんだり、部屋のテラスから静かな海を眺めたり。そんな何気ない時間が、驚くほど心地よく感じられます。
館内にはレストランやジムはもちろん、ゴルフコースに映画館までそろっていて、飽きることなく、気ままにすごせるのも魅力。誰にも急かされない、自分だけのペースで、ひとリート時間をすごせます。

4. 【2泊3日/ベトナム】高原のコーヒー農園で、深呼吸をひとつ
小林 標高1500m、ベトナム中南部に広がる高原都市・ダラット。一年中涼しくてすごしやすく、どこか懐かしさを感じさせるこの街には、のんびりとした時間が流れています。旅の喧騒から少し距離を置いて、ひとリートを楽しむにはぴったりの場所です。
日本からはホーチミン経由で約8時間。LCCの便が多く、物価も安いので、旅費を抑えられるのもうれしいポイント。
そしてダラットではずせないのが、アートと建築が融合した迷路のような建物や、遊び心あふれる現代アート。静かな自然のなかに突如として現れるその異世界的な景観もまた、ダラットならではの魅力のひとつです。
小林さんおすすめのすごし方
1日目は、「クレイジーハウス」に宿泊。
「ベトナム人が手がけた、ちょっと変わったホテルに泊まってみたい」。そんな思いで探していて出合ったのが、ダラットにあるテーマパークのようなホテル「クレイジーハウス」でした。
直線や規則性をあえて排除し、曲線だけでつくられた建物。森や動物など、さまざまなテーマでデザインされた客室は、まるでアニメーションの世界に迷い込んだような不思議な空間です。窓から差し込むやわらかな光さえも、一枚のアートのように感じられる唯一無二の体験。
ただ泊まるだけで、いくつもの美術館をめぐったかのような濃密な時間が味わえるこのホテルは、スケジュールにゆとりを持って楽しむひとリートにぴったりです。

2日目は、郊外のコーヒー農園「メーリンコーヒーガーデン」へ。
ベトナムは、ブラジルに次いで世界第2位のコーヒー豆輸出国。そんな“コーヒー大国”を訪れたら、ぜひ足を運びたいのが、自然に囲まれたコーヒー農園です。
ダラット郊外にある「メーリンコーヒーガーデン」では、香り高い一杯を味わいながら、ジャコウネコと出会える楽しみも。深い緑の中でいただくコーヒーは、心の奥までじんわり染みわたるような優しさに満ちていて、静けさとともに五感がほどけていきます。異国情緒あふれるこの農園でのひとときが、一人旅のなかでも特別な思い出になりました。

3日目の朝は、ダラットの街をゆっくりお散歩。
平均気温は20度前後という涼しい気候を生かして育てられたフルーツや、甘くて濃厚なダラットミルクは、この土地ならではの味わい。街を歩きながら、フレッシュフルーツジュースやドライフルーツ、ミルクを少しずつ楽しむのもダラット旅の醍醐味です。
屋台が多く、気になるものをちょっとずつ試せるから、一人でもグルメツアー気分を味わえるのがうれしいところ。素材の優しさがそのまま伝わってくるようで、ひと口ひと口が小さな幸せに感じられました。そんな穏やかな余韻を胸に、帰りの飛行機では、いつもよりほんの少しだけ柔らかい気持ちになれていた気がします。

写真提供/小林希 構成・取材・文/高浦彩加