「yoi」ではSDGsの17の目標のうち「3. すべての人に健康と福祉を」、「5. ジェンダー平等を実現しよう」、「10. 人や国の不平等をなくそう」の実現を目指しています。そこで、yoi編集長の高井が、同じくその実現を目指す企業に突撃取材! 14回となる今回は、クレ・ド・ポー ボーテが取り組む「アンロック ザ パワー オブ ガールズ」について、ブランドマネージャーの萩原里実さんにお話を伺いました。

クレ・ド・ポー ボーテ アンロック ザ パワー オブ ガールズ

「アンロック ザ パワー オブ ガールズ」とは?
バングラデシュ、インドネシア、キルギスなどの国や地域において、これまで固定観念やジェンダー差別によって女の子たちが遠ざけられてきたSTEM教育(※)を促進するユニセフのプログラム「Skills4Girls(スキルズ・フォー・ガールズ)」を支援する取り組み。2019年よりパートナーシップを締結し、2022年までの3年間で350万人以上の少女たちへの支援を達成。2023年にパートナーシップの継続を発表し、2025年までにさらに570万人への支援を目標としている。ブランドを代表する美容液「ル・セラム」を1本購入するごとに、3米ドルが世界各地のユニセフのパートナーシッププログラムの支援のために寄付される。

※STEM=科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の教育分野を総称した名称。自発性、創造性、判断力、問題解決力といったスキルを磨き、IT社会とグローバル社会に適応した国際競争力を持った人材を育てるための教育法。

※ユニセフはいかなる企業、ブランド、製品やサービスを推奨するものではありません。

クレ・ド・ポー ボーテ アンロック ザ パワー オブ ガールズ STEM教育 ユニセフ-1

(左から)高井編集長と萩原里実さん。

萩原里実

クレ・ド・ポー ボーテグループ

萩原里実

入社以来、店頭活動、営業企画、商品開発、マーケティングなど、さまざまな分野を経験しながら多くの資生堂のブランドに携わる。2023年1月より日本リージョンにおける「クレ・ド・ポー ボーテ」のブランドマネージャーに就任。

高井佳子

yoi編集長

高井佳子

入社以来、『ノンノ』『バイラ』『マリソル』『エクラ』と、幅広い年代の女性誌媒体に編集者として携わる。2021年@BAILA編集長に就任、2023年6月より現職。認定フェムテックシニアエキスパート(日本フェムテック協会認定資格1級)。

これからの未来に輝く少女たちをエンパワメントしたい

クレ・ド・ポー ボーテ アンロック ザ パワー オブ ガールズ STEM教育 ユニセフ-2

高井 2019年から「アンロック ザ パワー オブ ガールズ」というタグラインでユニセフとグローバル・パートナーシップを締結されました。世界の少女たちにSTEM教育を届ける「Skills4Girls」プログラムへの支援を選ばれた理由から教えていただけますか。

萩原 もともとブランドのフィロソフィーとして、この世界や社会をよりよいものに変えていきたいという思いがあります。そして、クレ・ド・ポー ボーテの信念である「より良い世界への鍵は教育を通じて女性の可能性を引き出すことにある」という考えに基づき、21世紀に必要とされるSTEM教育にフォーカスしました。

高井 女性を取り巻く障壁を取り除く“鍵”としてのSTEM教育の取り組みは、ブランド名を意味する「肌の美しさへの鍵」とも重なりますね。SDGsの全17目標の関係性を図にした「SDGsウェディングケーキモデル」では、資源と自然環境にまつわる「生物圏」の目標が全体を支える土台となり、中間にジェンダー平等や貧困、教育、健康と福祉といった「社会圏」の目標、その上に経済成長や産業などの「経済圏」の目標と、ウェディングケーキのような3層で表現されています。「アンロック ザ パワー オブ ガールズ」が目指すジェンダー格差の解消は、よりよい社会を目指す上で欠かせない要素ですね。

萩原 そうですね。教育を受けられないことが、さらなる貧困を生んでしまう要因になっています。個人としての自立はもちろん、女性の社会的地位を守るためにも、少女たちに手を差し伸べていくことが社会のボトムアップにつながるのではないかと考えています。

「私も何か力になりたい」というポジティブな循環

クレ・ド・ポー ボーテ アンロック ザ パワー オブ ガールズ STEM教育 ユニセフ-3

高井 今、STEM教育を受けている少女たちが、まさに10年後、20年後の社会をつくっていく存在ですものね。2022年までに350万人以上の少女たちへの支援を達成されました。これほどの成果を生み続ける背景には、どのようなお取り組みがあるのでしょうか。

萩原 「ル・セラム」を1本ご購入いただくごとに、3米ドルを世界各地でのユニセフのパートナーシッププログラム支援のために寄付する取り組みなので、もちろん商品自体の底力もありますが、社内のPBS(パーソナルビューティースペシャリスト)への教育でも情報共有し、お客さまにもきちんとお伝えできる体制を整えています。また、ポップアップイベントなどの場を通じてこの活動を知った方が共感し、ブランドのファンにもなってくださるという、いい循環も生まれているのかなと思います。

高井 お客さまからはどんな声が届いていますか?

萩原 「自分の行動が寄付につながるんですね」というお声はもちろん、Z世代ぐらいの方が活動に共感してくださり、「私も何か力になりたい。逆にエンパワーされました」とおっしゃっていたのも印象的でした。

バングラデシュでは国の教育制度を再構築

クレ・ド・ポー ボーテ アンロック ザ パワー オブ ガールズ STEM教育 ユニセフ-4

高井 メッセージがしっかり届いているからこその声だと思います。社員の方や店頭に立たれる方々も、とても誇らしいでしょうね。

萩原 そうなんです。ブランドに携わるみんなが誇りを持ってくれています。今年7月に開催した各国の担当者が集まるグローバルミーティングでも「ブランドとして誇りに思う」「こうした活動を続けていくからこそ愛され続けるブランドになれる」といった声があがり、国や地域を超えた絆や思いが深まっているなと感じました。

高井 素晴らしいですね。そして、バングラデシュでは国家カリキュラム教科書委員会とともに、ジェンダー対応のスキルに基づいたカリキュラムや教科書、トレーニングを提供されていると知り、とても驚きました。国家レベルで教育制度を再構築するというのは、なかなかできることではないと思います。

萩原 ありがとうございます。特にバングラデシュは、女性が教育を受けることに対する社会の根強い障壁があり、就学率の低下や退学率の上昇につながっています。そうした差別へのマインドセットも含め、彼女たちがより輝けるためのスキルや教育への支援をしたいという思いが形になりました。少女たちが学校に通うことで、彼女たちのお母さまのマインドにも変化が生まれているようです。


行動する女性のためのアワードも設立

クレ・ド・ポー ボーテ アンロック ザ パワー オブ ガールズ STEM教育 ユニセフ-5

高井 それぞれの国にとってベストな形での支援を構築されているのですね。「アンロック ザ パワー オブ ガールズ」と時を同じくして、少女や女性たちへのSTEM教育を支援し、地域社会で行動を起こしている女性を表彰する「パワー・オブ・ラディアンス・アワード」も設立されました。表彰や助成金などの支援を通じて、当事者や社会にどのようなインパクトを創出できると思われますか?

萩原 受賞者の方々は、それぞれの国や環境に応じてとても献身的に活動を推進されています。その活動をさらに促進させるために、「パワー・オブ・ラディアンス・アワード」を通じて、サポートの輪を広げるきっかけができたらと考えています。

高井 これまでにシリア、ネパール、カザフスタン、インドネシア、ベトナム、アメリカの方が受賞なさっています。もしかしたら、いつか日本の女性が受賞する未来もあるかもしれませんね。

萩原 日本もまだまだジェンダーの問題が残っているとは思いますが、若い世代や社会全体の意識も変わってきているので、もちろん可能性はあると思います。声をあげたり、活動を続けていくのは勇気がいることだと思いますが、その壁を打ち破って社会を変えていこうとする女性たちをこれからもサポートしていきたいと思います。

取材を終えて…
少女たちへの教育や女性へのサポートが、世界を、そして未来を変えていく。「yoi」の読者の皆さんはSDGsに興味関心が高く、起業を目指していらっしゃる女性も多いので、取材後は温かく希望に満ちた思いに包まれました。
そしてその後、2025年の「パワー・オブ・ラディアンス・アワード」に日本人のジャズピアニスト・数学者の中島さち子さんが選出されたと知ってびっくり(取材時はまだ情報解禁前だったのです)。とてもうれしい気持ちと同時に、まさに“エンパワメント”されました!(高井)

2025年受賞者のニュースはこちら!

クレ・ド・ポー ボーテ アンロック ザ パワー オブ ガールズ STEM教育 ユニセフ-6

撮影/露木聡子 画像デザイン/齋藤春香 取材・文・構成/国分美由紀 企画/高井佳子(yoi)