「yoi」ではSDGsの17の目標のうち「3. すべての人に健康と福祉を」、「5. ジェンダー平等を実現しよう」、「10. 人や国の不平等をなくそう」の実現を目指しています。そこで、yoi編集長の高井が、同じくその実現を目指す企業に突撃取材! 第17回となる今回は、100%プラントベースの焼き菓子を製造・販売する「ovgo Baker」について、代表取締役の髙木里沙さんにお話を伺いました。

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「ovgo Baker(オブゴベイカー)」とは?
「Doing Good Tastes So Good」という合言葉のもと、「やさしい・たのしい・おいしい」を大切に、食を通じたサステナブルを実現するブランド。卵もバターも使用しない、すべて植物性でつくられたヴィーガン仕様のアメリカン・クッキーは、一般的な動物性原材料のクッキーと比較して、約80%の温室効果ガスの排出量を削減。2020年の創業以来、東京・日本橋、ラフォーレ原宿、神保町、虎ノ門ヒルズ ステーションタワーに店舗をオープン。

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(左から)髙木里沙さんと高井編集長。

髙木里沙

代表取締役

髙木里沙

慶應義塾大学大学院を修了。学生時代にアメリカとフランスでの在住経験を持つ。大学院修了後はメリルリンチ日本証券(現BofA証券)の投資銀行部門に入社し、グローバルM&AやIPO等の業務に携わる。その後、2021年にovgoにCFOとして入社し、2023年より代表取締役に就任。

高井佳子

yoi編集長

高井佳子

入社以来、『ノンノ』『バイラ』『マリソル』『エクラ』と、幅広い年代の女性誌媒体に編集者として携わる。2021年@BAILA編集長に就任、2023年6月より現職。認定フェムテックシニアエキスパート(日本フェムテック協会認定資格1級)。

おいしく食べるだけで環境負荷の軽減につながるクッキー

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高井 ovgo Bakerは2020年の創業から現在までに4店舗をオープンし、70社以上と取引をされています。着実に展開を続けてこられた理由はどこにあると思いますか?

髙木 とてもありがたい話なのですが、いまの社員はもともとお客さまとしてovgo Bakerのファンになってくれて、「仕事ないですか?」という感じで加わったメンバーがすごく多くて。現在はアルバイトも含めて60〜70人の従業員が所属していますが、ovgo Bakerのことをまったく知らずに応募してくる人はほとんどいないんです。それぞれの個性はもちろんですが、そういう“好き”が広がっていった部分は大きいのかなと感じます。

高井 ovgo Bakerが大切にする価値観もスタッフの皆さんの間でしっかりと共有されているのでしょうね。

髙木 そうですね。お客さまにはあまり大々的にはお伝えしていませんが、私たちのミッションのひとつは環境負荷の軽減です。ただ、そのミッションを押し付けるのではなく、私たちが製造過程でCO2などの温室効果ガスをできる限り削減しながら未来にとって優しい食の選択肢として提供し、お客さまには「おいしく、楽しく食べるだけで環境負荷の軽減につながっているんです」というメッセージで十分かなと思っていて。というのも、環境問題に対するインパクトを高めるには、よりたくさんの方に届けていくことが必要だと思うので。

目指しているのは、お互いの「〜したい」を大切にするカルチャー

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高井 なるほど、まずはおいしさや食の選択肢としてovgo Bakerを認識し、その後自然と価値観に共感してくれれば、というスタイルなんですね。事業として進める上で、ブランドの方向性や社内のルールなどは決めていらっしゃるのでしょうか。

髙木 「Friendly Handbook」というブランドのDNAをまとめたガイドブックをつくり、全員に共有しています。肩書きに関係なく、全員がフラットにかかわりながら、お互いの「〜したい」を大切にするカルチャーを目指しているので、「この行動には、こういう思いがあったんだよね」「それなら、こうしたらもっと伝わるんじゃない?」とスムーズに議論が進む印象はありますね。そして同時に、「責任の伴う自由」、つまり自分のやりたいことをやるには一定の責任を伴うという意識づけも重視しています。

高井 DNAを共有できるハンドブックをつくるというのはとても大事なことですね。

髙木 はい。困ったらそこに立ち戻ればいいし、どういう指針に則って考えればいいのか判断する際の軸になっていると思います。事業を広げていくとどうしても現場でその都度判断してもらう場面が増えていくので、そのときに迷わずに済むように、という思いもあります。

高井 そうした理念のもとで事業を継続される中で、お客さまからの反応でうれしかったエピソードはありますか?

髙木 いろいろありますが、例えば地方でポップアップをやると、「ずっと好きで行ってみたかったのでうれしいです」「いつかこのエリアでお店を出してください」と応援してくださる方がいるのは、うれしいと同時に心強いです。お子さまがアレルギーを持っている方から「普段の買い物では自由に選べないけれど、ここに来ればアレルギーを気にすることなく子どもに好きなものを選ばせてあげられるのがうれしい」と言っていただけたこともうれしかったですね。アレルギーがある方は、どうしても日常の選択肢が限られてしまうので。

「ovgo」が“ちょっといいこと”を意味する動詞になるのが夢

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高井 自由に選べるというのは、ご本人にとって本当にうれしいことですよね。それから、2022年に取得されたB Corp認証についてもお伺いしたくて。社会や環境に配慮した公益性の高い企業に与えられる国際的な認証制度ですが、日本でB Corp認証を取得している企業はまだ50社ほどですよね。どのような経緯で取得されたのですか?

髙木 事業を立ち上げたメンバー全員の中にグローバルに展開していきたいという思いがありました。特にサステナビリティというテーマでグローバル展開のスタートラインに立つにあたって、きちんと国際的に認められた認証を取得しておくのも大事ではないかという考えのもとで取得しました。日本ではまだ少ないかもしれませんが、バートンやパタゴニアといった環境問題に取り組まれている企業の多くが取得しているので、私たちも見習いたいなと思って。

高井 最初から世界に目を向けていたのですね。ovgo Bakerは、若い女性のチームで起業し、発展させたことも話題です。yoiの読者には「いつか起業したい」と考えている方も多いので、仲間を集めたいと思ったときのアドバイスなどをいただけますか。

髙木 いまは色々なコミュニティがあるので、例えばサステナビリティのイベントなどに参加してみるのもいいと思います。何度か参加するうちに顔見知りができて情報交換もできますし、そういう場で出会った人はやりたいことが多少違っていても、その先に求めているミッションが同じだったりするので、そこから広がっていくこともあるのではないかと思います。

高井 ありがとうございます。最後に、これからのビジョンについても聞かせてください。

髙木 これは個人的な夢でもあるのですが…「ovgo」は「organic, vegan, gluten-free as options」の頭文字からなる造語です。このブランド名が動詞になっていったらいいなと思っていて。例えば「Googleで調べる」行為を「ググる」と呼ぶように、「ovgo」がサステナビリティを含めた“ちょっといいこと”を意味する動詞になって、文化として創造されていったらうれしいなと。

高井 「ovgoる」とか「ovgo的な」みたいな価値を感じられる代名詞として使われるようになったら素敵ですね!

髙木 いつか、その言葉を街で聞けたらすごくうれしいです。

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取材を終えて…
ovgo Bakerが起業して間もない時期、当時私が在籍していた『バイラ』編集部にキャラバン(自社製品の説明)に来てくれたことがありました。おしゃれなデザインやサステナブルなコンセプトに大変感銘を受けましたが、それからあっという間に大躍進!

とはいえ、キャラバンに来てくれたときから変わらないのは、“アレルギーがある人もない人もおいしく食べられて、たのしい時間を共有できるクッキー”という価値の提供。ovgo的カルチャーは自然と人が集まる、サステナブルでグッドデザインなモノでありコトなのだと思います。yoi読者の皆さんがよく話題にするはずだわ…と腑に落ちました!(高井)

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撮影/露木聡子 画像デザイン/齋藤春香 構成・取材・文/国分美由紀 企画/高井佳子(yoi)