世界の生理事情をのぞいてみると、より広い視野で自分の体と向き合えるのでは…? そう考えたyoiは、世界5都市に暮らす女性たちに、“半径10mの生理事情”をリサーチ。第3回は、2018年に漢方のライフスタイルブランド『DAYLILY』を、小林百絵さんと共に立ち上げた台湾・台北市出身の王 怡婷(オウ イテイ)さんが登場。漢方文化が根付く台湾ならではの生理期間の過ごし方を教えてもらいました。

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王 怡婷(オウ イテイ)

「DAYLILY」Co Founder & COO

王 怡婷(オウ イテイ)

台湾・台北市出身で、2014年から日本在住。小林百絵とともに、2018年に漢方のライフスタイルブランド「DAYLILY」を創業して以降、アジアをはじめ世界中の女性の身体に寄り添うアイテムを展開し続けている。

生理について気がねなく話せる社会的背景

Q.王さんの半径10mで、「生理」はどのように捉えられていると感じますか?

台湾では、男女関係なく生理についてオープンに話せる雰囲気があります。職場の同僚にも、パートナーにも、生理がつらければ、「生理なので今日は休みます」と気がねなく言えるところは台湾のよさかなと。

こうした背景には、生理に限らず、政治や教育など、いろいろなトピックについて、自分の考えを自由に発言できる環境が整っていることが関係していると思います。というのも、台湾の人は、自国が抱える政治問題を悪化させないためには、投票がいかに大切かを十分に理解しているから。自分たちの未来のために、“言いたいことを言うこと”が当たり前で、生理はそのひとつというだけだと思います。

生理について男女関係なく話せるといえば、10年以上前に放映されたナプキンのCMは、私の生理に対するとらえ方を変えてくれました。そのCMには、生理になって休んでいる女性が、パートナーに生理用品の買い物を頼む姿が描かれていました。これを観たときに、「男性に生理用品を買ってきてほしい」とお願いすることは“恥ずかしいこと”ではない、と自然と考えられるようになったと思います。

Q.最近、台湾ではどういった生理用品が人気ですか?

最近、日本と同様にエコ意識が高まっていて、オーガニックナプキンをはじめ、月経カップや月経ディスクといった、繰り返し使える環境に優しいアイテムを選ぶ人が増えてきている印象があります。その理由には、エコ意識の高まりはもちろんですが、台湾発のスタートアップ企業が多くなってきたいることも挙げられると思います。




台湾の月経カップブランド「フルムーンガール」から誕生した月経ディスク「フルムーンディスク」。子宮頸部の下に装着して使用する。



台湾では、ナプキンのバリエーションも豊富です。蒸し暑い気候なので、スースーとした清涼感を感じられるナプキンがあったり、ナチュラルな漢方の香りが配合された製品も。

ちなみに私は長らく日本に暮らしているので、基本的には日本のタンポンやナプキンを使っていて、最近は布ナプキンも気に入っています。布タイプは生理中ではなく「生理がそろそろ来そうかな?」という日に使うことが多く、柔らかな触り心地とゴミが減らせるという点で愛用しています。




ハーブや漢方エキスを配合した「Natural Path」は、ケミカルな素材を一切不使用。原料は、すべて台湾で調達している。



Q.生理期間はどんなふうに過ごしますか? ルーティンがあれば教えてください。

経血量が多い1日目〜2日目は、無理せず休むようにしています。また、台湾では「四物飲」や「生化飲」という漢方を生理時に飲む人が多く、私も初めて生理が来たときから飲んでいます。「四物飲」は、コンビニで買えるほど台湾人の生活に根付いた漢方で、私の場合は、漢方の薬剤師である父に自宅で作ってもらっていました。

もちろん生理のときに鎮痛剤を飲んだり、ピルで生理をコントロールしたりする人ももちろんいますが、私の周りは、不調を未然に防ぎ、根本から体を改善してくれる漢方を選択する人の方が多い印象です。

DAYLILY 台湾 漢方

台湾ではポピュラーな生理期間に飲む漢方ドリンク。「DAYLILY」の「四物飲」は、4つの和漢植物を優しい甘みのチェリーで煎じている。また、「生化飲」は6つの和漢植物をマルベリーで煎じて作られていて、どちらも飲みやすい。

ほかにも生理期間中は、生姜入りの「豆花(トウファ)」や「小豆スープ」など、台湾のスイーツを食べて気分転換をしたりすることも。それから最近、火を使わない貼るだけのお灸『せんねん灸 太陽』を知人からもらったので、次の生理のときに使いたいと思っています。

お灸 せんねん灸 太陽

「生理期間中は、体を温めることを意識しています」(王さん)

まだまだあります! 生理にまつわるエトセトラ

1. “生理の貧困”に取り組むNPO団体が存在する
生理の貧困問題の解決に取り組むNPO法人「With red(小紅帽)」という団体があり、生理用品を買えない女性にナプキンを無料で配布する活動をしているそうです。




生理に対する偏見の払拭や、生理の貧困といった問題解決に取り組むNPO法人。世界唯一の月経をテーマにした博物館「The Red House Period Museum (小紅厝月經博物館)」も運営している。



構成・取材・文/海渡理恵 企画/種谷美波(yoi)