避妊や月経困難症などに用いられる「ピル」。言葉は知っていても、実はどんな薬なのか知らない人も多いのでは? 産婦人科医の高橋幸子先生に、ピルを服用する目的について伺いました。

生理 セックス ピル 避妊 女性ホルモン 産婦人科 高橋幸子-2

Natur19/Shutterstock.com

Q.ピルを飲むと、避妊以外にもメリットはありますか? 誰でも服用できるの?

お話を伺うのは…
高橋幸子先生

性教育産婦人科医

高橋幸子先生

埼玉医科大学医療人育成支援センター・地域医学推進センター助教、埼玉医科大学医学教育センター、埼玉医科大学病院産婦人科助教を兼任。「サッコ先生」の愛称で、全国の小学校・中学校・高等学校にて年間120回以上の性教育の講演を行う。著書に『マンガでわかる!  28歳からのおとめのカラダ大全』(KADOKAWA)『自分を生きるための〈性〉のこと-性と生殖に関する健康と権利(SRHR)編』(少年写真新聞社)など。

A.ピルは女性の主体的な避妊のほか、月経トラブルの改善や月経移動などに用いられます

ピル(低用量ピル)は、飲み忘れさえしなければ100%に近い確率でほぼ確実に避妊できるだけでなく、生理やPMS(月経前症候群)まで軽くなるという、うれしい効果があります。

●女性の主体的な避妊
日本では避妊法として選択する人が多いコンドームを使っていても、1年間に14%のカップルが妊娠にいたる。ちなみに、避妊しない場合は1年間に85%のカップルが妊娠する。一方のピルは、正しく飲んでいれば、ほぼ 99.7%の確率で避妊できるといわれ、女性が主体的に、確実に避妊できる手段。ただし、性感染症の予防はできないので、コンドームを併用した二重の防御(Dual protection)がおすすめ。

●生理トラブルの改善
生理にまつわる下記の症状の改善に効果がある。生理痛の訴えがある場合は保険適用。特にPMSには即効性があり、ほとんどの人が次の生理から痛み止めの服用が半減するなどの効果を実感することができる。
・生理の3〜10日前に体や気持ちの不調が起きるPMS
・生理が不規則になる生理不順
・生理痛

ただし、何にも興味関心がわかず無気力になり、抑うつ症状が強く、日常生活にも支障をきたすといったPMSの精神症状が強く出てしまう「PMDD(月経前不快気分症候群)」の場合、ピルだけでは症状のコントロールが難しいようなら心療内科を紹介することもある。

●月経移動(生理周期のコントロール)
試験の日や旅行など、大切な日と生理が重ならないように、生理周期をコントロールすることができる。月経移動の場合は、低用量ピルよりも卵胞ホルモンの量が多く含まれる中用量ピルを用いることが多い。

ピルを服用することができないケースも

以下に当てはまる人は、薬の影響によるリスクが考えられるため、ピルを服用することができないことがあります。自分に合った治療法を知るためにも、まずは婦人科で相談してみましょう。

●35才以上でタバコを1日15本以上吸う
●初経前、50才以上もしくは閉経している
●トラネキサム酸(トランサミン)を継続的に飲んでいる
●目の前がキラキラするなど前兆のある片頭痛がある
●血栓を起こす病気と診断された
●妊娠中あるいは授乳中
●出産後1カ月以内
●過去2週間以内に手術を受けた、または今後1カ月以内に45分以上の手術を受ける
●過去にがんと診断されたことがある
●低用量ピルにアレルギーがある

構成・取材・文/国分美由紀 出典/『マンガでわかる!  28歳からのおとめのカラダ大全』(KADOKAWA)