月経困難症や避妊の目的に用いられる「ピル」。言葉は知っていても、どんな薬なのか知らない人も多いのでは? 今回は、産婦人科医の高橋幸子先生に、ピルのオンライン診療について伺いました。

生理 ピル 避妊 オンライン 産婦人科 高橋幸子-8

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Q.ピルを服用してみたいけれど、なかなか病院へ行く時間が取れません…。オンライン診察ってアリですか?

お話を伺うのは…
高橋幸子先生

性教育産婦人科医

高橋幸子先生

埼玉医科大学医療人育成支援センター・地域医学推進センター助教、埼玉医科大学医学教育センター、埼玉医科大学病院産婦人科助教を兼任。「サッコ先生」の愛称で、全国の小学校・中学校・高等学校にて年間120回以上の性教育の講演を行う。著書に『マンガでわかる!  28歳からのおとめのカラダ大全』(KADOKAWA)『自分を生きるための〈性〉のこと-性と生殖に関する健康と権利(SRHR)編』(少年写真新聞社)など。

A.初診だけは病院で診察を受けたほうが安心です。2回目以降はオンラインもアリ!

これまでも慢性疾患などを対象に少しずつオンライン診療が広がりを見せていましたが、その流れは新型コロナウイルス感染症の拡大によって一気に広がっていきました。ピルに関しても、オンライン診療やオンライン処方を取り入れる施設がずいぶん増えてきています。

オンライン診療のスタンダードな流れとしては、初診は来院して対面での診察を受け、2回目以降はオンラインでOKとするものです。

STEP①初回は外来診察を受ける。
STEP②薬局で処方箋を提出してピルを受け取り、服用を始める。
STEP③ピルがなくなる頃にアプリやWebからオンライン診療。
STEP④自宅でピルを受け取る。

自分の体を守る意味でも、初めてピルを服用するときは診察を

初診だけは病院に来てもらうほうが安心だと考えています。処方する前に、ご本人にどんな症状があるのかを丁寧に聞いて、生理痛や過多月経などがあるなら、ほかに重大な病気が隠れていないか診察をさせてほしいからです。すぐに対処が必要な病気であれば、紹介状を書いて適切かつ本格的な治療につなげられます。

さらに、その人の家族歴や喫煙などの生活習慣も問診して、リスクが高い場合にはピルの処方をやめておく、という判断も必要です。オンライン化はとても便利ですし歓迎していますが、同じくらい、一人一人の体を守るために必要なことも大切にしたいものです。

最初からオンライン診療の場合は、自費診療なので全額自己負担に

また、世の中には初診からオンライン診療でピルを処方するというウェブサイトが複数存在しますが、それらは基本的に健康保険適用外の自由診療でピルを処方しています。つまり、治療目的のピル(LEP)を希望したとしても、全額自己負担となります。病院の保険診療なら500円で処方される超低用量ピルを、4500円で販売しているサイトもあります。

ちなみに厚生労働省の指針によると、「オンライン診療はビデオ通話か電話で行うこと」とされていて、ビデオ通話で顔色や容体を確認するか、電話で実際の声の調子を確認したりすることを必須としています。「LINEで完結」や「テキストチャットのみ」はルール違反です。

【オンライン処方の対象外となる一例】
●婦人科検診や血液検査が必要な場合
●スマホなどでアプリの登録やオンライン診察ができない場合
●クレジットカード決済ができない場合

構成・取材・文/国分美由紀 出典/『マンガでわかる!  28歳からのおとめのカラダ大全』(KADOKAWA)