生理の悩みを軽減できる治療法の一つとして、新たに「ミニピル」と呼ばれる飲み薬への関心が上昇中! 低用量ピルやミレーナなど他の選択肢との違いから、目安となる費用まで、産婦人科医の稲葉可奈子先生に教えていただきました。
- Q1.ミニピルってどういうもの?
- A1.女性ホルモンの「プロゲステロン」のみを含む飲み薬です。
- Q2.ミニピルにはどんな効果がある?
- A2.月経痛やPMSの緩和、経血量の軽減、避妊効果があります。
- Q3.低用量ピルやミレーナとの違いは?
- A3.含まれているホルモンや、その服用方法が異なります。
- Q4.ミニピルの服用方法は?
- A4.1日2回、決まった時間に飲む必要があります。
- Q5.ミニピルのデメリットは?
- A5.飲みはじめの頃に不正出血が起こります。
- Q6.ミニピルの費用はどのくらい?
- A6.保険適用なら1シート800〜1500円ほどです。
- Q7.ミニピルはどんな人におすすめ?
- A7.低用量ピルが飲めない・合わない方には特におすすめです。

産婦人科医
●産婦人科専門医・医学博士。京都大学医学部卒業、東京大学大学院博士課程修了。東京大学医学部附属病院、三井記念病院、関東中央病院などを経て、2024年7月、東急プラザ渋谷内に「Inaba Clinic」(東京都渋谷区)を開業。産婦人科診療の傍ら、メディアや公演、SNSなどを通して、生きていくうえで必要な知識や正確な医療情報の発信を行う。著書に『シン・働き方 ~女性活躍の処方箋~』(きずな出版)など。私生活では、双子含む四児の母。
みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト 代表
みんリプ!みんなで知ろうSRHR 共同代表
メディカル・フェムテック・コンソーシアム 副理事長
Live News α・Yahoo!・NewsPicks公式コメンテーター
Q1.ミニピルってどういうもの?

A1.女性ホルモンの「プロゲステロン」のみを含む飲み薬です。
稲葉先生:「ミニピル」というのは俗称で、医学用語ではありません。正確な薬名は「プロゲステロン製剤」といい、2種類ある女性ホルモンのうち、片方の「プロゲステロン」のみを含む薬のことを指します。
ネットで検索すると類似商品が多数あると思うのですが、日本で薬事承認されていて保険適用の対象になる薬は、今のところ「ディナゲスト」と、そのジェネリック薬「ジエノゲスト」のみです。
「ディナゲスト」には含有量0.5mgと1mgの2種類があり、はじめは1mgの方が主に子宮内膜症の治療薬として2007年から、次に0.5mgの方が主に月経困難症の治療薬として2023年から、それぞれ日本で薬事承認されて普及してきました。
Q2.ミニピルにはどんな効果がある?
A2.月経痛やPMSの緩和、経血量の軽減、避妊効果があります。
稲葉先生:服用を継続すると、女性ホルモンの変動が穏やかになり、子宮内膜がいつも薄く保たれるようになることで、低用量ピルと同様に、経血量や月経痛、PMSなど、生理に関する悩み事を改善する効果が得られます。
月経時の出血がなくなることもありますが、排卵を抑制する作用もあるので、妊活中の方は使用できません。
Q3.低用量ピルやミレーナとの違いは?

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A3.含まれているホルモンや、その服用方法が異なります。
稲葉先生:よく知られている「低用量ピル(LEP)」には「エストロゲン」と「プロゲステロン」という2種類の女性ホルモンが含まれています。
月経に関する悩みの改善や避妊に対して非常に有効な薬ではありますが、前者の「エストロゲン」は、まれに血液を固まりやすくしてしまう作用が起こるため、喫煙者やBMIが30以上ある肥満の方、前兆のある偏頭痛持ちの方など、血栓症のリスクが高まってしまう条件を持つ人は、低用量ピルを服用できません。
また、「エストロゲン」は母乳の分泌量や質にも影響があるとされているので、授乳中の方の服用も推奨されていません。
一方、ミレーナはディナゲスト同様に「プロゲステロン」のみを含むものなので、同様の効果が期待できますが、飲み薬ではなく子宮内に挿入する医療器具であるため、体に取り入れるプロセスが大きく異なります。
また、ミレーナは効果の範囲が子宮内と局所的なので、PMSの改善効果についてはディナゲストより乏しいでしょう。
Q4.ミニピルの服用方法は?
A4.1日2回、決まった時間に飲む必要があります。
稲葉先生:低用量ピルは1日1回1錠が基本ですが、ディナゲストは朝晩2回に分けて飲む必要があります。月経周期2〜5日目から飲みはじめ、休薬期間はありません。
飲み忘れてしまったり、服用時間が大幅にずれてしまったりすると不正出血や生理再開が起こりやすくなります。
Q5.ミニピルのデメリットは?

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A5.飲みはじめの頃に不正出血が起こります。
稲葉先生:副作用として、飲みはじめの数カ月間は不正出血のある方が多いです。また、まれではありますが、頭痛や肌あれが起こってしまったという方も。
副作用の量や頻度、期間は個人差が大きく、実際に試してみるまで、どの程度の副作用が生じるのか予測するのは難しいことです。
副作用以外には、毎日2回、だいたい決まった時間に服用する必要があることをデメリットと感じる方もいるでしょう。
Q6.ミニピルの費用はどのくらい?
A6.保険適用なら1シート800〜1500円ほどです。
稲葉先生:月経困難症の診断をうけて保険適用となれば、薬代の自己負担額は0.5mgの1カ月分の1シートが約800円、1mgなら約1500円です。
月経困難症の診断には、必要に応じて超音波検査や血液検査などの検査・診察費がかかりますが、いずれも保険診療で対応可能です。
Q7.ミニピルはどんな人におすすめ?

A7.低用量ピルが飲めない・合わない方には特におすすめです。
稲葉先生:月経痛がつらかったり、経血量が多すぎると感じたり、周期が安定しなかったり......毎月の月経に何かしらの困り事があるものの、「喫煙習慣」「40歳以上」「肥満」「授乳中」「低用量ピルが合わなかった」など、さまざまな理由で低用量ピルを服用できない方には、ぜひ一度ディナゲストを試してみてほしいです。
また「低用量ピルは血栓症のリスクが心配」「ミレーナを入れるのは怖い」など、気持ち的に他の治療法に不安がある方にも、気軽にトライできる別の選択肢としておすすめです。
副作用やデメリットが少ない薬なので「合えばラッキー」という気持ちで試してみても◎。気軽に婦人科で相談してみてくださいね。
構成・取材・文/月島華子