イライラや落ち込み、むくみ、頭痛など、月経前の3~10日間に始まり、月経が始まるとだんだん治まる不調がPMS(月経前症候群)。連載【知ることから始めよう! PMSのホント】では、PMSの要因や女性ホルモンとの関係などについてくわしくお伝えしてきました。第6回は、つらいPMSの身体的・精神的症状を予防・改善するために知っておきたい、食生活のポイントについてお伝えします!
第1回 自分の症状が「PMS」かどうかを見極めるポイントは?
第2回 知っておきたい! 女性ホルモンとPMSの関係
第3回 PMSの重さや症状が人によって違うのはどうして?
第4回 仕事や家庭にも影響大? アンケートで見るみんなのPMS
第5回 PMS改善のために今日から自分でできること・行動編
甘いものを控えて主食をしっかり!
前回、第5回でもお伝えしたとおり、生活習慣はPMSの発症や重症度に大きく影響すると考えられています。食生活では、なによりバランスのよいメニューが基本。さらに、医療機関では、血糖値を急上昇させる甘いお菓子や飲料を控え、主食のごはんやパンをきちんと食べるよう指導されることが多いよう。これは、血糖値の変動を少なくすることで過食を抑えると同時に、精神状態を穏やかにする脳内物質「セロトニン」のもとになるアミノ酸「トリプトファン」の脳への取り込みを増やすのが目的とされています。*1
また、ストレスがあるとついついコーヒーなどのカフェインの多い飲み物やアルコール、塩分の多い食品などを摂りがちですが、これらはPMSの症状を悪化させる可能性があるので、できるだけ控えるようにしましょう。*2
*1 J Psychiatry Neurosci; 33(4): 291-301, 2008
*2 最新女性医療; 3(2): 82-86, 2016
PMSの症状改善に役立つとされる栄養素って?
では、PMSの症状をやわらげるために、積極的に摂るといいのはどんな食事や栄養素なのでしょう? ここで問題です。以下のうち、PMSの症状改善に役立つとされているものはどれでしょう?
A. 答えは4の「牛乳」!
ここでは「PMSラボ」の中から、PMSの症状改善に役立つという報告があるものをいくつか、かいつまんでご紹介します。上記のクイズの答えについても解説していますので、読みながら答え合わせをしてみてください!
【カルシウム】
クイズの正解、「牛乳」に多く含まれるのがカルシウム。骨の健康維持に必要なカルシウムは、神経間の情報伝達にも使われるため、「イライラするのはカルシウム不足のせい」などといわれるように、精神症状とも深い関係があります。また、ホルモンや酵素を正常に働かせて、代謝を円滑に進めるためにも必要な栄養素でもあります。
2008年までの研究で「PMSの症状改善に役立つ」という結果が得られた62種類ものビタミン、ミネラル、ハーブ類のうち、厳密な試験を行なった10の成分について細かく検証したところ、PMSの症状改善に「有効」と判定されたのはカルシウムだけだったのだそう!*3
カルシウムは乳製品や野菜、豆、穀類、小魚などに含まれますが、乳製品以外は一食分に含まれる量があまり多くないため、現代人はカルシウム不足に陥りがち。厚生労働省の基準(日本人の食事摂取基準2020年版)では、20~40代の女性は1日に650㎎の摂取が推奨されていますが、実際の摂取量は400~440㎎程度。カルシウム不足は糖尿病や大腸がんにも関係する可能性があるといわれているので、PMS対策だけでなく、カルシウムを十分摂取することは健康維持のかなめといえそうです。
*3 Can J Clin Pharmacol; 16(3): e407-e429, 2009
(日本食品標準成分表2020年版)
【ビタミンB1、B2】
「ビタミンB群」と総称される、ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン、葉酸といったビタミンは、PMSの精神症状にかかわる神経の働きや、エネルギー代謝を正常に保つために欠かせない大切な栄養素。
ビタミンB群のビタミンは協調し合って働くので、どれもバランスよく摂取する必要がありますが、なかでも、ビタミンB1とB2の摂取量が多いほど、PMSのリスクが低くなるようです。栄養素の摂取状況とPMSの発症リスクの関係を調べた研究から、ビタミンB1とB2の摂取量が多い人はPMSの発症リスクが低いことがわかっています。*4
*4 Am J Clin Nutr; 93(5): 1080-1086, 2011
(日本食品標準成分表2020年版)
【ビタミンD】
ビタミンDは、PMS対策に「有効」の判定を得ているカルシウムの吸収を助ける作用があるだけでなく、ビタミンD自体も、PMSの予防や改善に役立つと指摘する研究報告もあります。
PMSと診断された44人と、PMSではない46人について調べたところ、1日に25㎍(焼鮭1切れ分相当)以上のビタミンDを摂っていると、それ未満の場合と比べてPMSの発症リスクが7割も低いという結果に。*5
ビタミンDは紫外線を浴びると体内で合成されるので、日照時間の短い冬などは特に不足しがち。意識して太陽の光を浴び、食事でもとるように心がけましょう。
*5 J Steroid Biochem Mol Biol; 121(1-2): 434-437, 2010
*5 J Altern Complement Med; 23(6): 461-470, 2017
ほかにも、PMSの発症に関係するとされている栄養素としてビタミンB6、鉄などがあります。これらの具体的な情報や摂りたい食品については、大塚製薬の「PMSラボ」にくわしく紹介されていますので気になる人はチェックしてみて。
脂質を控えて、“茶色い”炭水化物を!
近年、日本の女子大学生52人を対象に行われた研究*7では、動物性たんぱく質や動物性脂質、飽和脂肪酸、コレステロールの摂取とPMSの重症度に「正の相関」、逆に、炭水化物の摂取とは「負の相関」がありました。これまでの研究結果も踏まえて、「脂質、特に飽和脂肪酸の摂取の増加はPMS症状のリスク因子」であると研究者は報告しているそう。飽和脂肪酸は、肉の脂身やバターなどに多く含まれるので、こうした脂質の多い食事のとりすぎには注意が必要ですね。
逆に、PMSと診断された100人の女性を対象とした研究*8では、全粒粉のパンやパスタ、玄米など「全粒の穀類」を1日に4食分以上摂取し、白パンなどの精製した穀類はできるだけ食べないようにしたグループ(3カ月間、経過を追跡)は、普段どおりの食事を続けた対照群と比較して、PMSの症状全般が明らかに改善していました。
*7 栄養学雑誌; 77(4): 77-84, 2019
*8 Br J Nutr ; 121(9): 992-1001, 2019
全粒の穀類は、PMS対策のために積極的に摂りたいビタミンB1やカルシウムをはじめとするビタミン、ミネラルのほか、不足しがちな食物繊維も豊富。白米や白いパンなど、精製した白い炭水化物を未精製の“茶色い”炭水化物に置き換えるのも、今日からできる食生活改善としておすすめです。
PMSの具体的症状やその要因、専門家がすすめる予防法や改善策を知ることは、今、つらい症状に悩んでいるあなたの生活の質を上げるのにきっと役立ちます。PMSについての正しい情報がわかりやすく掲載されている大塚製薬の情報サイト「PMS(月経前症候群)ラボ」や、女性ホルモンとのつき合い方やセルフケアについてわかりやすく掲載されている「女性の健康推進プロジェクト」サイトもぜひチェックして!
構成・文/浅香淳子(yoi) イラスト/YUKORANGEL 資料提供/大塚製薬