パートナーとの結婚、そして妊娠を意識するようになったAさん。前回は、自分の体と向き合うために初めて婦人科の受診を考え始めたものの、先生から「必ず妊娠できるかどうかを調べる検査はない」という言葉が……。後編では、検査できない理由や妊活、パートナーとのコミュニケーションについて詳しく聞くことに。
Story1 パートナーとの結婚を意識し始めたAさん
産婦人科医
医学博士・スポーツドクター。女性のための統合ヘルスクリニック「イーク表参道」副院長。長年ヨガを愛好し、多くのヨガインストラクターを指導。YouTubeチャンネル「高尾美穂からのリアルボイス」では毎日、女性のお悩みに答えながら、心を楽にして生きられる考え方のヒントを配信中。
「妊娠できるかどうか」はトライしてみないとわからない
Aさん 私、自分が妊娠できるかどうかは病院で検査すればすぐにわかると思っていました。
高尾先生 Aさんと同じように、たくさんの方に「妊娠できる体かどうか知りたい」と相談されますが、必ず授かると断言できる検査はないんです。なぜなら、妊娠は相手がいて初めて成立するものだから。そして「排卵日に性交渉すれば妊娠する」と考える人も多いけれど、相手の精子の状態なども関係するのでトライしてみなければわからないんです。
Aさん 不妊症かどうかはどう判断するんですか?
高尾先生 「不妊症」とは、1年間自然な妊娠成立にトライして成立しなかった場合を指します。医学的に「妊娠適齢期」というものはありませんが、20代後半〜30代前半は、母体のリスクや流産率などが比較的低い時期なので、頸がん検診とエコーで問題がなければ、まずは自然妊娠にトライするのがいいと思いますよ。
Aさん 20代後半ってリスクが低い時期なんですね。でも、持病があるので妊娠しづらかったらどうしようという不安もあります。一応、かかりつけの先生からは「妊娠は大丈夫」と言われているんですけど……。
高尾先生 私たち産婦人科医は、どんな方に対しても「絶対に妊娠できる」とは言いません。先ほどもお話ししたように、妊娠は相手との関係性が影響するので、Aさんの体の状態だけでは判断できないからです。かかりつけの先生がおっしゃったのは「持病の状態は悪くないから、妊娠にトライしてもOK」という意味だと思いますよ。服用する薬によっては生理周期が乱れたりするケースもあるので、妊娠のタイミングを相談するためにも婦人科を受診して、かかりつけ医を持つことが大切です。不安で悶々としているよりも、行動することで解決の糸口が見つけやすくなるはず。
妊活で重要なのは、ストレスフリーな環境づくり
Aさん 妊娠って本当にわからないことだらけだから、かかりつけの先生がいれば安心して相談できますね。自宅や職場の近くで婦人科を探してみます! ちなみに、妊活するうえで気をつけることってありますか?
高尾先生 できる限りストレスフリーな環境でトライしてほしいですね。いざ妊活を始めてみると、すぐには妊娠できないことに焦りを感じたり、生理がくるたびに「失敗した」と感じて落ち込んだり、パートナーとの温度差にイライラしたりして、トライすること自体がストレスになってしまう場合が多いんです。妊娠は、どちらか一方が負担を背負うのではなく、50:50の関係で向き合うもの。一人で抱え込まないで、子どものことや将来についてパートナーと考えをすり合わせながら温度差を埋めていくことがとても大切だと思います。
Aさん 温度差の話はすごくよくわかります! 私は、結婚を考えている彼が転勤で遠距離になってしまったので、今まで以上に話し合っていかないと。できれば仕事も続けたいし……。
高尾先生 そうですね。年齢による妊よう性(妊娠するための力)の低下についても、男性と女性ではタイムリミットの感覚が違いますから。お互いの気持ちだけでなく、自分が知った情報や知識をシェアすると具体的な話もしやすくなりますよ。遠距離での妊活の場合、せめて排卵期は一緒に過ごす工夫をしたり、Aさんの近くに転勤希望を出してもらったりするのもいいですね。仕事を続けたいAさんにとっては、彼の都合を優先することになるけれど、ストレスなくトライするためには転勤先へ一緒に行くというのも選択肢のひとつだと思います。
Aさん たしかに遠距離の妊活って大変そう。それでストレスがたまるくらいなら期間を決めて一緒に行くのもありかもしれませんね。ちょうど今、彼と価値観のすり合わせをしているところなので、お互いにとってストレスのない形を一緒に探そうと思います。
イラスト/naohiga 取材・文/国分美由紀 企画・編集/高戸映里奈(yoi)