Stories of A to Z のタイトルカリグラフィー

私たちが人生でそれぞれに向き合う「妊娠・出産」、「家族」や「パートナーシップ」にまつわる選択に、確かな答えはありません。抱える迷いや不安、そして幸せのかたちも一人一人違うからこそ、必要なのは、その選択を応援してくれる専門家の的確なアドバイス。ここに登場するのは、あなたや私、あるいは大切なあの人の物語かもしれません。今回は、これからのキャリアとライフイベントの間で揺れるBさんのストーリー。

Story2 キャリアと妊娠の間で揺れるBさん

結婚&挙式を終えて、ライフプランを考え始めたけれど…

子どもは欲しいけど、妊活や妊娠が不安な気持ちはどうすれば? 「Stories of A to Z」Story2【前編】_2

26歳のBさんは出版社勤務。入社5年目を迎えた今年の春に部署を異動し、今は仕事のリズムをつかみ直しているところ。プライベートでは、2歳年上のパートナーと5年間の交際を経て今年5月に結婚式を挙げました。挙式を終えて少し落ち着いたこともあり、最近は2人で今後のライフプランについて相談しはじめたそう。

「お互いに子どもが欲しいという思いは一致していたので、妊娠について調べはじめたら、望んだときにすぐ授かれるとは限らないと知って驚きました。出産する友達も増えてきたけど、具体的な妊娠までの過程の話は聞きにくいし、なかなか現実的なイメージをふくらませられずにいます」

自分なりにリサーチしようと「妊活 タイミング」などのワードで検索したものの、「いろんな情報があふれていて、自分に必要な情報を見極めるだけでも大変。余計に混乱してしまいました。私の場合、妊娠に向けたスタートラインに立つための情報が知りたいんですが…」

自分の体やキャリアに生じる“変化”への不安

不妊経験を耳にしたり、パートナーに転勤の報告をされたりしてもやもやしているAさんのイラスト

性格的に、先が読めない状況やいつもと違うイレギュラーなことに不安を感じやすいというBさん。彼女が今感じているのは、妊娠によって変化する“自分の体”と“キャリア”への不安。
「妊娠したら私の体はどうなっちゃうんだろう?って想像すると怖いんです。妊娠中の先輩が職場でつらそうにしている姿を見かけたこともあるので、もし職場に迷惑をかけるほど体調不良になったら…という不安もあります」

異動先の部署でやりがいのあるプロジェクトを任されたことで、妊娠・出産のタイミングにも迷いがあると言います。
「夫も私も、子どもを持つなら今すぐにでもという思いがありつつ、新しい部署での仕事のリズムがつかめないまま産休に入ると、復帰後が大変そうだなと思って。でも、いちばんの理由は、任されたプロジェクトを自分の力で形にしたいんです。でも、それってなんだか私のわがままのような気がして」

そんなBさんの不安を、産婦人科医の月花瑶子先生に相談してみることに。



Bさんが気になっていること


1. そもそも、「妊活」って?


2. 自分の体に起きる変化を想像すると不安


3. 妊活の前にもう少し仕事を頑張りたい…これってわがまま?




今月の相談相手は……
月花瑶子先生

産婦人科医

月花瑶子先生

産婦人科専門医として不妊治療専門クリニック「杉山産婦人科 新宿」にて生殖医療に従事。産婦人科領域で事業展開するヘルスアンドライツのメディカルアドバイザーを務める。共著書に『やさしく正しい 妊活大事典』(プレジデント社)、監修アプリに「相談できる生理管理アプリ ケアミー」がある。

「妊活」のスタートって一体どこから?

Bさん 妊娠や妊活についてきちんと理解して、納得したうえで行動したいのに、自分にとって必要な情報を得るための適切な検索ワードがわからなくて。そもそも「妊活」って、どこからがスタートなんですか?

月花先生 「妊活」という言葉は「●活」という言葉の流行とともにつくられた新しい言葉です。“妊娠するための活動”と聞くと特別なことをしなくてはいけないように感じる人が多いけれど、実際は日常の延長線上にあるもの。まずは、基本的な“自分の体の周期を把握する”ことが初めの一歩。具体的には、生理周期の記録アプリなどで「生理周期」や「排卵日」を意識しましょう。特に、排卵日が把握できていると、妊娠するためのセックスのタイミングを取りやすくなります。排卵期の特徴としては、生理後に女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)が増加することで、排卵の数日前から、卵白のように透明で粘度の高いおりものが増えてきます。これは、精子が子宮に届きやすいように体が変化しているから。人によっては肌の調子がよくなるのもひとつのサインです。

Bさん 生理周期のトラッキングアプリを使っているので、排卵日の確認ならすぐはじめられそうな気がします。ただ、アプリの予測通りだった生理周期が、ここ1〜2年は10日〜2週間ぐらい遅れることが時々あって…。でも経血量は変わらないし、仕事がちょっと忙しいせいだと自分に言い聞かせています。周期がズレたり、多少生理痛が強くなったぐらいでも婦人科に行っていいんですか?

月花先生 もちろんです。生理周期が1週間程度ズレることは珍しくありませんが、Bさんのように10日〜2週間というのは少し長いので、何か異常がないか一度婦人科で診てもらったほうがいいですね。Bさんのように、社会人になってから、環境や生活リズムの変化、ストレスなどが生理周期に影響する方は少なくありません。20代後半でまだ婦人科に行ったことがないならなおさら、受診のいいきっかけだと思いますよ。

Bさん “いいきっかけ“と思えば気軽に受診できそうです。あの、すごく初歩的な質問なんですが、妊娠ってどのタイミングでわかるものですか?

月花先生 もし予定日に生理がこない場合、予定日から1週間経っても生理がなければ妊娠検査薬で判定できます。検査で陽性が出たら産婦人科へ。また、「十月十日」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、妊娠する前の最終月経から約10カ月後が出産予定日だと考えてください。

Bさん そういえば「十月十日」は聞いたことがあります。出産までの10カ月間もの間、自分の体や体調の変化につき合い続けるのって、精神的にも大変そう...。妊娠後の産婦人科とのつき合い方や、実際に自分の職場で誰にどんなタイミングで相談したらいいのかも知っておきたいです。

▶︎後編では、Bさんが妊娠やキャリアについて抱いている不安を、正直に相談してみることに。妊娠・出産を経験した月花先生からのアドバイスとは?

イラスト/naohiga 取材・文/国分美由紀 企画・編集/高戸映里奈(yoi)