出産後の母と赤ちゃんを対象に、心身のケアや育児のサポートを提供する「産後ケア施設」を体験! 出産後のライターが、実際に産後ケア施設を利用して、そこでの一日の過ごし方や費用をレポート。“働く母”が活用するメリットについても考えます。
注目度上昇中! 産後ケア施設とは?
出産後の母と赤ちゃんを対象に、心身のケアや育児のサポートを提供する「産後ケア施設」。授乳や沐浴のやり方を教えてくれたり、赤ちゃんを預かってもらって休息できたりするため、育児のスタートにもってこいのサービスです。
2021年より施行された「産後ケア事業ガイドライン」(厚労省)に基づいて、全国の自治体でケア施設の整備が始まりました。病院や助産院が対応しているほか、民間が運営する産後ケアホテルなども増えてきています。
私が2016年に長男、2019年に次男を出産した頃は、そんな施設は外国にしかないものだと思っていました。でも今年の9月に第三子を出産する前、いろいろと調べていたところ日本でもずいぶん一般的になっている様子。これは使ってみるしかない!と、計画分娩日の1週間ほど前に予約。働く母にどんなメリットがあるのか? 産後ケア施設の活用レビューをお届けします。
かかる費用や選ぶ基準のリアル
産後ケア施設にはデイサービス型、宿泊型、訪問型などがあり、自治体指定のケア施設を利用する場合は助成金が出ます。たとえば1泊2日の宿泊型ケアを使ったとき、利用者の自己負担額は渋谷区で7,000円、中野区で6,000円、品川区で7,500円。ビジネスホテルほどの料金で母子をサポートしてもらえるとあれば、なかなかリーズナブルです。でも、自治体指定の施設はあまり数がなく人気のため、すぐに予約が埋まってしまうことも……。
対して民間が運営する産後ケア施設は、基本的に助成金が適用されません。そのため、1泊2日の平均価格は4~6万円。ある程度まとまった日数の利用が必要なケースもあり、費用面のハードルが高いといえます。ただし、1日3食おやつ付きの豪華な食事やホテルライクな部屋が提供されたり、家族も一緒に泊まれたりするなど、サービスの充実はさすが。なかには、豪華ホテルの一室に泊まってインルームダイニングの朝食が楽しめる一泊約15万円~のサービスもありました。
いろいろ吟味したうえで私が選んだのは、民間の産後ケアホテル「Mamma Levata」です。1泊からでも利用できることと、家族の素泊まり無料が決め手になりました。飯田橋のホテルメトロポリタンエドモント内にあるため、都内からのアクセスも抜群。郊外型が多い産後ケア施設において、電車でも行きやすいのが助かりました。
いざ宿泊! 産後ケア施設での過ごし方をレビュー
【夕方~夜】お部屋にチェックイン
産後3週間のタイミングで、3泊4日利用することにした今回。初日は13時頃にチェックイン。赤ちゃんのおむつやミルクに着替え、ママのアメニティなどはひと通り用意されているので、荷物は必要最低限でOKです。
案内されたお部屋はツインベッドにソファー、テーブルがあり、思った以上に広々していました。ベビーベッドを入れてもゆったり過ごせる空間です。地味にうれしかったのが、個室内が土足厳禁のため自宅のように過ごせること。抱っこをするためにベッドから降りていちいち靴をはく……みたいなの、面倒ですもんね。
食事は毎回お部屋まで届けてくれるので、ぼーっとテレビなどを見ながらいただきます。ボリュームも十分で、母乳育児にも強い味方です。
22時すぎに授乳をしたら、赤ちゃんはベビールームへ預けます。ホテルの1フロアがまるごと産後ケア施設に充てられているので、ベビーベッドを運ぶときに人目などが気になることはありません。夜間はプロにお世話を任せて、ママがゆっくり休養できるのが産後ケア施設の醍醐味! ここぞとばかりにちょっとだけNetflixを観たけれど、23時半には眠りにつきました。
【朝】家事からの解放を実感!
思いっきり寝坊したい気もするけれど、胸が張ってきてしまうので、朝は7時に赤ちゃんを引き取って授乳です。そうこうしているうちに、お部屋に届く朝ごはん……!
産褥期に家事から解放されるの、本当に最高ですね。家にいれば上の子を学校に送り出し、下の子を起こしている頃でしょうか。ゆっくり朝ごはんを楽しんだあとは、無料オプションのよもぎ蒸しを使ってみました。
よもぎを蒸した蒸気でじんわりと下半身を温めて、子宮の戻りを手助けしてくれるのだとか。産後なのに、自分のために時間を使えるのが贅沢です。
【昼】友人の面会や美容室へ
お昼すぎには、仕事の合間を縫って友達が面会に来てくれました。アクセスのいい都心にあるからこそ、こんな時間も過ごせます。自宅じゃないので、人を招くために部屋を片付ける手間もありません。
そのあとは3時間ほど赤ちゃんをベビールームに預け、美容室へ! カットとカラーでさっぱりリフレッシュできました。産後こんなに早く美容室に行けるなんて思っていなかったなぁ……。ホテルに戻ったらちょうど授乳の時間が過ぎていたので、もう少し預けたままにして、いくつか仕事のメールまで片付けてしまいました。
赤ちゃんがいるとなかなか集中できないこと——例えば内祝いの手配やお宮参りの予約などを済ませたり、ちょっとした買い物に出かけたり。24時間対応の一時預かりサービスを使ってできることはたくさんありそうです。
【夜】家族とともにゆっくり就寝
今夜からは子どもたちも一緒に宿泊。2泊目は下の子と、3泊目は上の子と泊まり、兄弟とゆっくり過ごす時間も確保できました。家族の素泊まりが無料なのはとてもありがたいところ。ホテルの目の前にはコンビニもあるので、食事にも困りません。第一子なら、パートナーと一緒に泊まるのもよさそうです。
今夜も23時以降はベビールームにお願いして、ゆっくり就寝。頼んでおけば、預けているあいだに沐浴や体重計測などもしてくれます。育児の悩みをプロに相談して、アドバイスをもらうことも可能です。
【チェックアウト】心温まる心遣いも
最終日にはサプライズ! 赤ちゃんの写真と足形を取った、記念の色紙をプレゼントしてもらいました。たった数日しか滞在していないのに、温かく見守ってもらえてうれしかったです。産後のメンタルは不安定なので、細やかな心遣いが実に沁みます……!
働く女性が、産後ケア施設を利用するメリットは?
3人目の子どもとはいえ、5年ぶりの新生児育児で忘れていることばかり。そんなとき、ゆったり体を休めながらプロのサポートを受けられる環境は、とてもありがたかったです。
特に素晴らしいのは一時預かり。夜間も3時間ごとの授乳から解放されてゆっくり休めるので、産後3週間のまだ本調子ではない体が、いくらかラクになりました。抱っこや授乳で少しずつ張ってきていた肩や腰にも、この物理的な休息が本当にありがたいんですよね。家にいたら完全には逃れられない食事の準備や掃除、洗濯など、家事をしなくていいのも大きなポイントです。
そして何よりうれしかったのは、産後でも「自分」を後回しにしないで済むところでした。産後のママは「子どもが生まれたんだから」とつい気を張って、知らぬ間に自分を追いつめてしまいがち。でも、こうやって心身をケアできれば穏やかな気持ちでいられるし、また笑顔で赤ちゃんと向き合うことができます。私は産後すぐから仕事を再開しているため、ちょっとした集中タイムが取れるのも本当に助かりました。
民間の施設だとそれなりの費用はかかってしまうけれど、価値は確実にアリ。1~2泊でも十分にリフレッシュできます。産後のダメージが残る体で24時間お世話を続けるのは、どうしたって大変……! だからこそ一人で抱え込まず、ほんの少しでも赤ちゃんを預けて、ゆっくりする時間を取ることが大事です。休んでエネルギーを回復し、ちょっと時間を空けてふれあう赤ちゃんは、驚くほどかわいく思えます。里帰りやパートナーの協力が見込めない場合に、退院後すぐ産後ケアに入るママもいるそうです。
少しでも費用を抑えるには、自治体指定の施設を確保できるよう、早めの情報収集と予約が必須。産前から自治体の手続き方法をチェックしておきましょう。自治体、民間いずれにしても、産後ケアは産後3~4カ月までしか使えない施設が多いため、早めのご手配をお忘れなく。
便利なサービスをうまく活用して、子育てを楽しめるご家庭が増えますように。
Mamma Levata(ママ レヴァータ)
今回宿泊したお部屋は「マーガレット」
1泊2日 68,800円(素泊まり)/79,800円(4食付)
3泊4日 23万4,612円(3泊~6泊の利用で2%オフ)
https://mamma-levata.com/
※記載の情報は2024年11月1日時点の情報です
撮影・取材・文/菅原さくら