自分の体について、どのくらい知っていますか? 自分をケアするためには、自分の体をよく知ることが必要です。また、他者とコミュニケーションを取る上でも、自分とは違う体について正しい知識をもっておくことが欠かせません。yoiでは、男性同士でも話題に上る機会が少ないという男性の体や性器にまつわる悩みやギモンを聞き込み調査。プライベートケアクリニック東京・東京院の院長である小堀善友先生にお答えいただきました。
Q50.前立線の病気にはどんなものがある?
50個目のギモンは、【前立線の病気はどんなものがある?】。前立腺は男性だけにある臓器で、ここから分泌される前立腺液が精液の一部となって、生殖機能をサポートします。また排尿をコントロールする役割もあるため、前立腺の病気にかかるとおしっこや射精時に何かしらのトラブルが発生! 男性にしか起こらない前立腺の病気にどんなものがあるのか詳しくお聞きしました。
A50.前立腺炎、前立腺肥大症、前立腺がんなどがあります
小堀先生:前立腺炎はおしっこをするときに痛みがあります…【専門医が回答!男性の体Q&A㊾】でご説明したとおりで、若い世代にも多く見られます。前立腺はもともとはクルミ大のサイズなのですが、年齢とともに大きくなる傾向があり、特に50代以降の中高年世代になると前立腺肥大症といって排尿困難の原因となります。前立腺が大きくなる原因は男性ホルモンが関係しているのではないかといわれています。
大きくふくらんだ前立腺が周囲を取り囲む尿道を圧迫してしまい、頻尿や残尿感、急に尿意をもよおす、おしっこの勢いが弱くなるといった排尿障害が現れます。主な原因はやはり加齢ですが、遺伝的な要素や肥満のような生活習慣が関与しているケースも!
そして前立腺肥大症と混同されやすいのが、前立腺がんです。症状の共通点は多いですが、前立腺肥大症は良性の疾患、前立腺がんは悪性の疾患となります。50歳以降から前立腺がんの可能性が出始めますが、実際にかかっているのは60~70歳の高齢者世代がほとんど。
なおほかのがん疾患とは違って、第一期の状態における5年生存率はほぼ100%。ゆっくり進行するうえ、早期に発見できれば完治しやすいのです。ただステージが進むと骨や他部位に転移しやすくなるため、命にかかわる可能性があります。腫瘍の悪性度やステージに応じた治療を受けるのが大切です。
プライベートケアクリニック東京・東京院 院長
日本泌尿器科学会専門医、日本性感染症学会認定医、日本性機能学会専門医、日本性科学会セックスセラピストなど多数の資格を保有。金沢大学医学部を卒業後、獨協医科大学越谷病院(現・ 獨協医科大学埼玉医療センター)の泌尿器科に勤務したのち、アメリカ・イリノイ大学に招請研究員として留学。2021年より、プライベートケアクリニック東京 東京院の院長を務める。主に男性性機能障害、男性不妊症、性感染症を専門にしており、ホームページのブログやSNSではメンズヘルスについての情報発信にも取り組む。著書に『泌尿器科医が教えるオトコの「性」活習慣病』(中公新書ラクレ)、『妊活カップルのためのオトコ学』(メディカルトリビューン)、『泌尿器科医が教える「正しいマスターベーション」』(インプレス)などがある。
取材・文/井上ハナエ 企画・構成/木村美紀(yoi)