"おばさん"だけではない。老若男女問わず、幅広い層から支持を集めるpodcast番組「OVER THE SUN」。全国のリスナーたちの心をガッツリ掴んでいるのが、ジェーン・スーさんと堀井美香さんの歯に衣着せぬ軽快なトーク。ラジオとはまた異なる、自由度高めなpodcastで繰り広げられる二人の掛け合いは、時にゆる〜っと、時にズバッと、そのメリハリが心地よく、言いたいことを言い合える関係性に憧れる女性も多いよう。
そんなお二人に、7月30日(土)の「国際フレンドシップデー」にちなんで、友達とは?について、インタビュー。知り合いが友達に変わる瞬間は? 友達は多いほうが幸せ? 友達といい関係を築く唯一絶対の方法など、机上の空論ではない“ストリート”な友情論について、じっくり伺いました!
ジェーン・スーと堀井美香が「友達」になるまで
――今や数々のメディアで特集が組まれるなど、大人気の「OVER THE SUN」ですが、リスナーの中にはお二人の関係に憧れる女性がたくさんいますよね。
ジェーン・スー(以下スー):最近、そういうことをよく言っていただくんですが…。
堀井美香(以下堀井):自分たちとしてはそれが不思議と言いますか。
スー:正直、どうしてそんなふうに言ってもらえるのかわからないし、期待されるほど逃げたくなる。今日も堀井さんと話していたんですよ、全員に「ほっといてよー!」って叫んで走りだしたくなるよねって(笑)。
――そんなお気持ちのところ大変恐縮なのですが(笑)、本日はお二人に7月30日の「国際フレンドシップデー」にちなんで、「友達」についての質問をぶつけたいと思います。そもそも、スーさんと堀井さんは、どこで出会って、どのように友達になっていったんでしょうか。
スー:初めて会ったのは約10年前。当時、私が出演していた『ザ・トップ5』というラジオ番組で、3年目のパートナーが堀井さんだったんだよね。初対面の印象は「真面目なアナウンサーの人」。年齢はほぼ同じでも、私とは全然違う人生を歩んできた人なんだろうなって。
堀井:私からスーちゃんに対する印象は「キレッキレな女の人」。
スー:お互いに「畑が違う人だな」って感じはしたよね。
――仕事で出会い、最初は「畑の違う人」だったお二人がなぜこんなにも仲良くなったのか気になります。
堀井:私は初対面のときから「もしかしたら、この人はただのおばさんかもしれない」と。どこか似ているものを感じてはいたんですけど(笑)。
スー:距離が縮まったのは大きなきっかけや事件があったわけではなく。徐々に徐々に、ですよね。今、堀井さんが「似ているもの」と表現したように、なんとなく、気が合った。なかでも、私たちは二人共、ふざけたりくだらないことをするのが大好き、という共通点がありまして。この年齢になると皆、一緒にふざけたことをしてくれないので、「悪ふざけをする相手にはちょうどいいのが来たぞ」と(笑)。例えば、堀井さんが私の誕生日に 「(ジェーン・スーの)ギャラ上げろ」と書いたのぼりを勝手に作って持ってきたり…。
堀井:少年サッカーのトロフィーが売っていたので、そこに「ジェーン・スー 優勝」と刻んでいただいてプレゼントしたこともあります。それも3mくらいの、いちばん大きい特注のやつに。
スー:3mはさすがになかったでしょうが。それにしても、完全に嫌がらせですよ(笑)。
知り合い? 友達? そもそも「友達」の定義とは?
――大人になると特に、「自分が相手にとってどんな存在なのか」によって、距離感を測りたいと考える人も多いと思います。お二人は今の関係を、どのようにとらえていますか?
堀井:友達でもありますし、仕事仲間でもありますし、家族でもありますし。なんかもう、そろそろ私たち入れ替わるんじゃないかっていう…。
スー:ちょっと待って、入れ替わるのはまだ早くない?(笑)。私は個人的に「親友です」みたいなのって、気恥ずかしくて言えないんです。それぞれの人間関係を比べて特別扱いするようなこともあまり品がよろしくないなと。だからこそ、関係性を改めて定義するのは難しいんですが。私たちの関係は「友達」というより「仲間」のほうがピンとくるかな。仕事でもプライベートでも、友達よりも少し苦み走った部分も共有してきたとは思いますね。
――ほかの友達関係では「相手との関係を見定めて、それに合った立ち振る舞いをする」というようなことはないのでしょうか。
堀井:相手との関係性について定義したり、「この人は友達で、この人は親友で」みたいな線引きは、特に大人になってからはないですね。ただ、すべての人と同じ関係というわけではもちろんない。その中には、自分の身に起きた嫌なことや悩みを相談できたり、涙を流したり、負の部分を見せることができる友達が何人かいる。もしかしたら、それを "親友"と呼ぶのかもしれないです。でも、こっちを立てると、あっちが立たなくなるし。それ以外の人は「じゃあ、私は親友じゃないの?」って、それもまた変な話じゃないですか。
二人の撮影オフショット動画はこちら!
人間関係「潔癖」時代。距離を縮めるのは至難の技
スー:この「相手との関係を見定めて、それに合った立ち振る舞いをしたい」の裏にあるのはきっと「失敗したくない」とか「恥をかきたくない」という気持ちだと思うんですよ。他者に立ち入ったり、踏み込んだりすることは、失礼なことでありやってはいけないことであると。特に今、人間関係がすごく潔癖じゃないですか。「正しさ」とか、「失礼じゃないか」というところがすごく重要視されている。そうすると、相手にとっての自分の定義が気になってきますよね。
でも、基本的に、他者に対しては、どうしたって相手の不本意になる範囲に踏み込んでいくことになるんです。一定以上近づこうと思ったらなおさら、それは不可避なわけで。もしかすると、そういうのを、あまり罪悪感を持たずにやれた最後の世代かもしれないよね、我々が。ある種の無礼講も受け入れることができる最後の世代(笑)。
――距離を詰めづらい時代になっていますよね。
スー:難しいよね。距離感によっては「加害」と認識されてしまう可能性もあるから。嫌な思いをしたくなければどうしても「踏み込まない」になっちゃう。それがいちばん傷つけず、傷つかずで済む方法なんですよね。
幸せの判断基準を「他人」にするのは、マジでやめよう
――友達が多い/少ない、という概念があると思うのですが、お二人はいかがですか?
堀井:私は少ないですね。学生時代はたくさんいた気もするんですが、結婚して子供ができた25〜26年前から、パタリと連絡が途絶え、今残っている学生時代の友達は2〜3人。当時はネットやスマホもない時代で、連絡方法といえば家の電話か年賀状くらいでしたから。でも、私はこれで十分に満ち足りているんです。気の合わない人と時間を過ごすより、いざというときの一人二人、そっちのほうが全然大事。スーちゃんは友達が多いイメージあるよね。
スー:少なくはないと思うけど、多いっていう自覚も特にないかな。でも、何かあったときに声を掛けることができる人数を考えると、少なくはないんでしょうね。
――やはり、友達は多いほうがいいのでしょうか…。
スー:そんなの、どっちでもいいんじゃないの?
堀井:ふふふふ(笑)
スー:なぜならそれは、他人に決めてもらうことじゃないから。いや本当、「他人に決めてもらうの、マジでやめた方がいい!」って感じですよ。
というのも、私自身、過去を振り返ると、他人軸で価値を測っていたところがあって。20代の頃は「いつも楽しそう」に見られたかったんです。「あの子、楽しい現場にいつもいるよね」って。それが30代になると、結婚していようがしていまいが「幸せそう」に見られたかった。そして、40代の今は「疲れてなさそう」に見られたいので、疲労につながることはしないようになりました(笑)。ゆえに、今がいちばん無理のない友達づき合いができていると思いますね。
たいして親しくもない人のホームパーティにまで行っていた20代、幸せそうに見られたくて無理をしていた30代、それがサーッと消えていく40代…。友達とのづき合い方や過ごし方は、年代ごとに違ったりもしますから。だからこそ「自分が今、居心地がいい状態」を見つけることが、人間関係においてもいちばん大事なんですよ。
自分の前に、相手の幸せをいちばんに願うこと
堀井:いろんな場所に行くといろんな人がいるから。その中に自分と合う人が見つかれば、長くおつき合いすればいい。友達って焦ってつくるものではないし、自然と距離が縮まっていくものだと思うんですよね。
スー:私ね、友達も恋愛も同じだと思っていて。「距離を縮めるのが難しい時代だ」と言いましたけど、それでも、本当の意味で相手の幸せをいちばんに願えば、失敗することは少ないんですよ。相手が、伸び伸び、生き生きと過ごすことを望めば、おのずと関係性ができてくるんですよ。
ーーただ、頭では「相手の幸せを望むことが大切」とわかっていても、なかなか実行するのは難しい気がして。例えば、「友達から悩みを打ち明けられて相談に乗ったのに、全然聞く耳を持ってくれない!」など、つい自分本位に考えてしまったり…。
スー:道ならぬ恋をしているとか、めちゃくちゃ悪い条件の会社なのに勤めつづけているとか…。まわりの皆から「もうやめなよ」って言われているのにやめない、そういう友達がいたときに大切なのは「なんでなんだ」と責め立てることじゃないんですよね。そうではなく、相手が本当に傷ついたときに隣にいてあげること。それが友達なんじゃないのって私は思うんだけどな。
でも、若いうちはそこまで考えられなくても仕方ないよ。実際、私も20代の頃は自分のことしか考えてなかった。人は皆、37〜38歳までは人間じゃないと思っているから(笑)、気持ちの面でようやく大人になれるのって、30代後半くらいだと思いますよ。
自分の人生を充実させると、友人関係もうまくいく
堀井:スーちゃんが言ったように、20代と30代後半では友達とのつき合い方も違いますしね。例えば、それこそ若い頃は友達とベッタリというようなこともありましたけど、今はある程度、距離感のある友達のほうがつき合いやすいんです。「いつも一緒」ではなくて、離れているけどお互いに頑張っていて、たまに会うような友達がすごく心地よい。
スー:中年のおばさんの友達関係が良好に見えるのは、単純に接点が少ないから、っていうのもあるよね。だから、うまくいっているの。うちらだって、ベッタリと四六時中一緒にいたら、絶対に取っ組み合いのケンカをしていると思うよ(笑)。
堀井:10代や20代って、ずっと一緒にいることが大切な気がしていたし、そうじゃなきゃ友情が続かないような不安もあったけど。今はもう、半年会わなくても、連絡を取らなくても、全然平気。
スー:大人になるとそれができるようになる。経験もあるけど、単純にそれぞれが自分の人生に忙しいっていうのも大きいよね。友達のことだけ考えている暇なんてないから。「今、堀井さん誰といるのかな」「私のこと、本当はどう思っているだろう」とか、考えている暇なんてマジでないから!(笑)。
堀井:大丈夫、20代の皆さんもいずれは立派なおばさんになります。いつか今の悩みがちっぽけに思える日がちゃんとやってきますから♡
愚痴や悪口を言い合うのは悪いこと?
――愚痴を言い合って「よし!また頑張ろう!」とすっきりできる場合と、愚痴を言い合って「なんだか嫌な気分になったな」と思う場合、どちらもあると思います。そもそも、友達と悪口や愚痴を言い合うことは必要なことなのか、それとも、ネガティブなことなのか。お二人は愚痴や悪口を友達と話すことはありますか?
スー:悪口言いますよ、私。ドチャクソ言いますよ(笑)。堀井さんにも「あいつ許せねえ」とかめっちゃ言うし。この人はそれを聞いてゲラゲラ笑ってる。堀井さんはね、あまり悪口を言わないんですよ。でも、私の言いたいことはわかってくれるので、ものすごく奥歯に物が挟まった言い方で返してくれるっていう。
堀井:たまにね、「鳥のフン、落ちてほしい」みたいな話をしますよね。
スー:プチ呪い、かけています(笑)。
――楽しいときはいいですが、たまに友達の愚痴につき合いすぎて疲れてしまうことってありませんか?
スー:それはね、愚痴ばかり言う人に捕まっちゃっているのかもしれない。世間のことをネガティブにとらえがちな人の“はけ口”に適任として選ばれてしまっているだけ。つまりは、舐められているんですよね。そんな人とはもう会わなくていいと思うよ。ちゃんと信頼関係がある友達との悪口や愚痴なら、ガス抜きになると思います。
――ちなみに、お二人は友達に会っても「ガス抜きできない日」はあるのでしょうか?
スー:基本的にはないかなあ。でも、人が多い会や知らない人がいる会はあまり好きじゃない。本当に知らない人が多いような場は、お誘いも断っちゃう。だから、集まるのはいつも同じ友達で、そのローテーションって感じなんですよ。ただ、堀井さんはどんな会でもちゃんと参加するよね。で、あとから「死ぬほど疲れたんですが」ってLINEが来るっていう(笑)。
堀井:私はちゃんと行きますよ!
スー:まあ、それもお友達ではなくお仕事の場合。本音を言えば堀井さんも「できたら少人数希望」の人種な気がするけど…。
堀井:そうだと思う。ちなみに、スーちゃんの言う、少人数のベストは何人なの?
スー:ベストは二人。マックスで四人かな。ただ、四人になったら全然話さなくなっちゃうときがある。途中で面倒臭くなっちゃって「三人の話を聞いていよう」って。
堀井:わかる、私も大人数になるとあまり話さないかもしれない。自分がどういう役割か習慣的に判断してしまって。仕切る人がいなかったら仕切ったり、喋っていない人がいたら話を振ったり。その“係”として、そこにいるって感じになっちゃうんですよね。だから、やっぱり友達と会うなら私も一人とか二人で、きちんとコミュニケーションが取れるのが大事だな。
人生も人間関係も、七転八倒して答えを見つけるしかない
スー:でも、少人数の関係が心地よいのは、私たちが40代と50代だからなのかもしれないよね。これがもう少し若かったら「何人でもOK」と答えていたかもしれない。20代はとにかく、友達や顔見知りを増やすために「いろんな場所に行かなきゃ!」って私も思ってたし、必死になる時期だから。ある意味、それもまたひとつの"修行"なので、やりたいと思うなら、どんどん友達の輪を広げてみてもいいと思うけどね。
――その経験は無駄にはなりませんか?
スー:ならない、ならない。むしろ、斜に構えて「私はあんなのやりたくない」って痩せ我慢したりするほうが、大人になってから絶対にこじらせるから。
それは30代も同じ。変なしこりだけが残ってしまう。「友達は多いほうがいいのか、少ないほうがいいのか」というテーマでも話しましたけど、人生も人間関係も七転八倒しながら自分の答えを見つけていくしかないので。私の場合は、恥をかいたり、失敗しても後悔はないです。何事も経験することで、自分には何が合うのか、答えが見えてくるから。
「30代」と書いて「地獄」と読む。だから友達が必要だった
――30代になって「友達関係が打算的になっているのを感じる」という声を聞きます。仕事が忙しくなったり、家庭を持ったり、人生が慌ただしくなる時期だからこそ「この人と会えば仕事の話ができる」「この人は自分の話を聞いてくれる」なんて、友達関係に下心が生まれてしまう。無邪気に友達関係を楽しめず「このままでいいのかな」と悩む人もいました。
スー:30代はいいんじゃないかな、それで。私はよく「30代と書いて地獄と読む」と表現するんですけど、この時期って過活動なんですよね。20代で就職して、30代に入るとある程度の裁量権も手に入るようになって、自分の企画が通ったり、アシスタントじゃない仕事を任せてもらえたり、お金もたっぷりではないけど自分の好きなものを買おうと思えば買える。一方で「おまえは何者か」と問われたら全然何者でもなくて…。そうこうしているうちに、同世代で世間の注目を集めている人がどんどん出てきて「このままでいいのか」「自分は無駄な時間を過ごしているんじゃないか」と焦ってしまう。エネルギーがあり余っているというか、空回りしているというか、30代ってものすごくアンバランスなんですよね。
――「30代と書いて地獄と読む」ですか…。それは友達関係も同じでしたか?
スー:いや、地獄だったからこそ、私は友達が必要でしたね。30代、友達がいなかったらダメになっていたと思う。本当に何かあるたびにセーフティネットになってくれたのが友達で。仕事のこと、家族のこと、恋愛のこと、すべてにおいて助けてもらいましたから。
堀井:私は30代、子育てでパンパンだったのですが、やっぱり友達は必要でしたね。いわゆる"ママ友"は、あんまり距離を縮めても、子ども同士に何かがあるとバンっと爆発しちゃうこともあるし、逆に、親のひと言が子ども同士の爆弾になってしまうこともある。とてもセンシティブな関係ではあったのですが、脆いながらも「この人とは仲良くしたい」と思う人も何人かいて、神経を使っていろんなことを考えながら友達をつくった時期でしたね。
他人のノウハウを盗んでも、望む友人関係は手に入らない
――インタビュー中はもちろんのこと、撮影中も空き時間も、いつでもどこでも二人がそろうと楽しい会話が始まる。お二人とも本当に楽しそうで、今日はずっとラジオブースの外で「OVER THE SUN」を聞いているような気持ちになりました。
スー:普段からよく言っていますけど、あれね、本当に「垂れ流し放送」なんですよ。いつもの私たちの会話をただただ垂れ流しているだけ(笑)。
堀井:普通に話しているだけで楽しいので。収録が終わったあとも二人で食事に行って。そのまま2時間くらいずっと話し続けることもありますからね。
――そんなお二人の関係に憧れている人が多いからこそ、「大人になってからの友達のつくり方」を教えてほしいです!
スー:30代のときに初めて「大人になっても友達はできるんだ」と知って、40代でも堀井さんをはじめ仲良くなった友達はいる。何歳でもできるけど、つくろうと思ったことは特にないです。
堀井:でもこれだけ友達について聞かれるってことはさ、みんな悩んでいるんだろうね。
スー:「友達ってどうしたらできますか」って、結局「どうやったらモテますか?」っていうのと同じ話なんじゃないかな。その"モテ"の対象が恋愛対象ではなく、単純に友情の対象になっただけで。「どうやったら恋人ができますか」「どうやったらパートナーとうまくやっていけますか?」というのと同じ質問をされていると思うんですよ。
堀井:確かに、そうなのかもしれない。
スー:でも、モテる人はなぜモテるのか、その理由ってひとつじゃないし人それぞれじゃないですか。確かに「こうやったらモテる」というハウツーは存在する。大多数の人はこういう服が好きです、メイクが好きです、入口としてはこんなキャラ設定が最適です、なんて表層的なモテはある程度つくり出すことはできるんだけど。それが決して自分を幸せにしてくれるわけではないと、それを骨の髄まで思い知るタイミングってあるじゃないですか。友達づくりもまったく一緒で、ノウハウやハウツーをつくろうと思えばつくれるんだろうけど、他人のノウハウを盗んだところで、自分の望む友達関係が手に入るとは限らない。どっちかっていうと手に入らないことのほうが多いし、「自分が持ってないものを持っている人の表面だけを真似するのはなかなかの苦行」って思うんですよね。試してみる価値がないとは言わないけど、答えはそこにはないかもって思う。失敗の先になんらかの学びはあるとは思うけど。
友情とは? 人間関係とは? 二人が出した結論
――友達づくりのハウツー本はない、ということなのでしょうか。
スー:自分がどんな人間関係を求めていて、どんな友達関係に居心地のよさを感じるのか、その答えは自分の中にしかないんですよね。でも、それって、家の中で一人で膝を抱えているだけじゃダメで、いろんな人と化学反応を起こしながら見つけていくしかない。だからね、友達づくりに関しても、多くの人が失敗を恐れるけど、「どうやったら失敗しないで済みますか?」はそもそも無理な話なんですよ。
私たちも本当に驚いているんですが、最近はおばさんだけじゃなく、多くの若者が『OVER THE SUN』を聞いてくれています。その中で、今の人たちが「ここは踏み込んじゃいけない」とか、「これはハラスメントです」「これはエチケット違反です」っていうのをものすごく教育されているのを感じるんですよね。だからこそ「こんなことも言っちゃうの?!」とワクワクしながら『OVER THE SUN』を聞いてくれるんだと思うんです。まるで以前の私たちがドキドキしながらラジオの深夜放送を楽しんでいたように(笑)。ものすごく正しい世界で生きているからこそ、失敗もより怖くなる。でも、残念なことに、そこはやっぱり失敗しないと学べないんだよね。
堀井:私たちをつくっているのも、成功じゃなく失敗ですからね。
スー:本当にそれ。まさか自分がこんな"おじさん語録"を口にするようになるとは(笑)。若い頃はこういうことを言われるたびに「うるせえ!」と思っていたのに。
堀井:スーちゃんも、そうなってきちゃったねえ。
スー:悔しいけど、「そのとおりだ…!」。
話がちょっとズレましたが…結局、友達づくりのハウツー本はこの世に一冊しかなくて、それをつくれるのは自分だけなんですよね。友達が多いほうがいいとは限らないし、少ないほうがいいとも限らない。つまり、絶対的な答えなんか存在しない。人それぞれ違って当たり前なんだから。
友達について聞かれたら私は言うんですよ。「そんなのどっちでもいいし」「うるせー!バーカ!」って(笑)。
撮影/上澤友香 取材・文/石井美輪 企画・編集/種谷美波(yoi)