向井太一さんインタビュー

“あなたが本当に願う「なりたい自分」を知っているのはあなただけ。だから、ひとりひとりにフィットするあなたのための「美容(Be You)」がきっとある”。yoi、マキア、メンズノンノの集英社の3メディアがタッグを組み、新たな「美容」の価値観を発信するオンラインイベント「Be You フェス 2022」が12月11日に各メディアの公式YouTubeチャンネルで配信されました。

yoiのコンテンツとしてイベントで配信したアーティストの向井太一さんのインタビューを、WEB記事として拡大してお届け。音楽も美容も自分らしい選択を続ける彼にとっての、自分らしさとは? 自分の弱みを受け入れてセルフラブに至った体験とともに、今、伝えたい想いを語ってくれました。

シンガーソングライター

向井太一

福岡出身のシンガーソングライター。 自身のルーツであるR&B・HIP HOPをベースに、 ジャンルを超えた楽曲で各媒体・リスナーから高い支持を得る。2017年11月に1st AL「BLUE」でTOYʼS FACTORY / MIYA TERRACE からメジャーデビュー。2022年5月に5thAL「ANTIDOTE」をリリース。タイアップ作品に関しては「アニメ『風が強く吹いている』」、「アニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』」、「アニメ『TIGER & BUNNY 2』」、「Rakuten Fashion Week TOKYO 2023 S/Sシーズンテーマソング」を手がけている。現在インターネットラジオblock.fmにてパーソナリティを務める番組 「向井太一のI Like It」が第2火曜・第4火曜に放送中。

チグハグな自分も“自分らしい”

大の音楽好きだった両親の影響を受けて、幼い頃からさまざまなジャンルの音楽に触れて育ったという向井さん。好きな音楽、また、音楽から影響を受けたファッションの好みも「まわりとは少し違うな」と意識したことが、自分らしさと向き合うきっかけになったそう。

「初めて意識したのは、小学生のときだったかな。髪が長くて、まわりと比べるとフェミニンな外見だったんですよ。暮らしていたのが都会ではなかったから余計に目立って、自分でも“なんか僕だけ違うな”と。当初は少しネガティブな感情でしたが、ポジティブな母親のおかげで、わりとすぐに吹っ切れました。

そういう“少し違う自分”ときちんと向き合ったのは、プロのアーティストになってから。昔は今よりも音楽のジャンルがガチガチに固まっていて。例えば“R&Bはこういうメロディー”、そして“R&Bアーティストはこういう服装”という共通認識があったんですね。僕はR&Bやヒップホップをよく聴くし、自分の楽曲にも取り入れているけど、服装はそういうジャンルのアーティストが好むといわれているファッションとはまるで違う。チグハグな自分を“面白いな”と感じて、それを自分らしさと捉えるようになりました」

向井太一さん

音楽で人生をあらわしていきたい

現在もジャンルレスに音楽を楽しみ、そこから受けたインスピレーションをもとに創り出す新しいサウンドは、向井さんの楽曲の最大の特徴。

「どのジャンルにおいても、人生を音楽で表現するアーティストが好き。落ち込んだとき、結婚したときなど、その時々の感情が真正面から伝わってくるような楽曲を作る人。人生をかけて音楽を作っているところがカッコいいし、自分もそうなりたいなと思っています。

歌詞は実際の体験をもとに書くことが多くて、かなり正直に感情をさらけ出しています。失恋など感情が大きく揺さぶられたときほど歌詞が湧き出てくるので、悲しさとうれしさのせめぎ合いが勃発(笑)。わんわん泣きながら歌詞を書いたこともあります。よく“自分の体験を知られるのは恥ずかしくない?”と聞かれますが、僕からしたら、いい曲が書けるなら失恋すらおいしい!

自分の曲が好きで日常的に聴いているのですが、今だったら思いつかないような表現ばかりなんですよ。それは自分も、人生の一コマを表現できているということなんだと思います。ちょっとずつ理想のアーティスト像に近づけているのかな、と感じられてうれしいですね」

向井太一さん

弱みも含めて、僕なんだと思えました

「好きなアーティストの曲に刺激を受けるのと同時に、嫉妬することもしょっちゅうです」と笑って語る向井さんですが、過去には自信を失い、アーティストをやめるべきか悩んだことも。つらい経験だったけれど、そこからの気づきが自信につながったといいます。

「昔から自信満々なタイプではなかったから、アーティストになって自信を失う機会が続いて、ネガティブにしか考えられなくなってしまったんです。このまま音楽を続けられるのか? と日々悩みながら、それを歌詞にぶつけて…すごく暗いアルバム『SAVAGE』が完成しました。

音楽がつらいとか、人と比べて落ち込んでしまうとか、ひたすらダークな感情に満ちた内容でしたが、それすらも作品として受け入れてくれる人がたくさんいたんです。弱みも含めて僕を愛してくれるファンの方や、チーム、家族、友達の存在に感謝するのと同時に、人に恵まれていることが自分の長所だと気づけた。

どん底の状態で音楽を作り続けられたことも自信につながり、徐々に自分を好きになっていきました。自分の好きなところを見つける方法は正直、わかりませんが…見つけようとしていない、意外なときに見つかるものなのかもしれません」

向井太一さん

“期待しない”のも、優しさなのかも

知らず知らずのうちに抱きがちな自分の固定観念を崩すために、友人や仕事仲間とのディスカッションを頻繁に行うようにしているという向井さん。その中で発見した“新しい自分”との葛藤を経て、よりセルフケアを意識するように。

「僕の人間関係は“心から信頼する人”と“知人”の2パターンで、ちょっと極端なんです。その数少ない親友と気持ちがすれ違ってしまうと、信頼しているぶん、ショックが大きくてすごく落ち込んでしまい…。意見を言い合う機会が増えるとともに、嫌な感情を抱くことも増えて、最近ずっと悩んでいました。

ある日、たまたま観ていた動画で、インフルエンサーの方が『アンチには期待していないから、何を言われても傷つかない』と言うのを聞いて、ハッとしました。友人に期待しすぎていた自分を知り、そんな自分が嫌になった。

好きな人に対してネガティブな感情を持っているときは気分も落ちるし、ネガティブな感情を持つ自分自身に対しても嫌になる。そうやって感情が乱れると、人に優しくなれず、ますます自己嫌悪に陥っちゃうんです。以前は“人に期待しない”って冷たい印象がありましたが、改めて考えると、人にも自分にも優しくなれる素敵なマインドだなって。セルフケアのためにも、人と自分を切り分けることが今の僕の課題です」

人から愛される自分でいることも、セルフケアのひとつ

楽曲でのストレートな感情表現は、人間関係でもしかり。イライラしていると感情的に言葉を発してしまい、後悔することもしばしば。「感情的な自分が好きでもあり、イヤでもある」といいます。

「特に音楽に関しては感情的になりがちで、バンドやチームのメンバーに対してキツい口調になってしまうことがあるんです。そういうときは素直に非を認めて、きちんと謝ることを自分に課しています。自分の行動を振り返るだけでも恥ずかしいし、精神的にしんどいプロセスですが、大切な人を失うほうがよほどつらいので。

“自分らしさ”をさんざん語ってきましたが、他人と一緒に生きている以上、自分らしさを100%さらけ出して生きるのは難しいと思うんです。自分らしくあることは大切だけど、他人への配慮をもたなければ、単なるエゴイズムになってしまう。人から愛される自分でいることも、セルフケアのひとつです。

イライラや落ち込むことが続いたときは、自律神経を整えるBGMを流してリラックス。心が敏感なときはリリックに気分を左右されてしまうので、僕が大好きな“感情を綴った曲”は聴かないようにしています。本当に落ち着くので、ぜひ<自律神経>などのワードで検索してみてください。外出自粛が続いた2020年は、よく聴いた曲のランキング上位を占めていました(笑)」

向井太一さん

“自分らしさ”とは、自分のための選択ができるということ

以前、yoiで披露してくださったバッグの中には、こだわりの美容アイテムがぎっしり。その時々で音楽を含めた趣味嗜好がコロコロ変わるという向井さんらしい美容ケアの変化や、美容がアーティスト活動に与える影響などを語ってくれました。

「コスメの色や香りを服や気分で選ぶように、ケアもこまめに変えています。特に肌は季節や体調で変化しやすいため、毎朝、肌環境を確認するのが日課。肌のコンディションがよかったり、メイクがうまくいったりするとモチベーションも上がるので、日頃からいい状態を維持しておきたい。特にライブでは、パフォーマンスに気分が顕著に表れるので、メイクもしっかり盛ります(笑)。

先ほども言ったとおり、僕は好きなもの・ことがコロコロ変わりますし、チグハグなことも多い。“本当の自分はどれ?”と聞かれることもあるのですが、その時々の気分で選択し、変化する生き方が僕には合っていて、それはつまり自分らしさでもあると思います。

よくファンの方にも伝えているのですが、家族や友達、環境など、自分で選べないことは何ひとつなくて、人生は選択次第でいくらでも変えられる! というのが持論。例えば、家族が自分自身のことを受け入れてくれなくてすごく悩んでいるときに、家族に受け入れてもらうために自分を偽ったり、戦い続けたりしなくていいと思っています。逃げていいし、離れていい。どこかに家族を感じられる、そんな気持ちになれる人がいれば、それが自分の選択する家族だと思うんです。

“自分らしさ”とは、自分のための選択ができるということ。そうしていくことで、 “自分が自分でよかったな”と思えるようになる。セルフラブって、そういうことなんじゃないかなと思います」

向井太一さん

「Be You フェス 2022」のアーカイブはこちらからご視聴いただけます!

撮影/梶 祐輔 取材・文/中西彩乃 企画・編集/木村美紀(yoi)