『ニコラ』モデルとしてデビューし、タレントやラジオのMCとして幅広く活躍してきた三原勇希さん。2023年、第一子の妊娠と出産を報告し、SNSで発信する妊娠・育児のリアルな体験談が多くの共感を呼んでいます。インタビュー前編では、妊娠が判明した時の感情やマタニティブルーの経験を、赤裸々に語ってくれました。
妊娠を望んでいたはずなのに、いざ現実になると焦りました
——13歳でデビューして以降、芸能界で活躍してきた三原さん。結婚や妊娠、出産について、どのように考えていましたか?
20代後半になった頃から、「結婚願望はありますか?」と聞かれる機会が増えて。その質問自体も謎だな、と思いつつ(笑)、その時は特に結婚したいとは思っていなかったですね。家父長制的なシステムだとも思っていたので。とはいえ人生を一緒に歩めるパートナーは欲しいと思っていたし、将来を意識する恋人もいました。でも結婚という形が自分にしっくりくるのかはわからなかったですね。
出産については、5年ほど前に姉に子どもが生まれて、一緒に時間を過ごすなかで“子どもがいるってすごく豊かなことだな”と感じて。言葉にするのは難しいけれど、やっぱり人生において、うれしいことや感動することは人間関係のなかで得られることが多かったな、と思うから。未知の領域ではあるけれど、漠然と“自分の子どもを産んで育てるって、すごく素敵だな”と思うようになりました。
——妊娠が判明したときは、どのような感情を抱いたのでしょう。
望んでいたことではありましたが、いざ現実になった瞬間は、“やばい!”と思いました(笑)。人生が変わってしまう!と思ったというか。例えばキャリア面では、私の仕事は自分でコントロールできない部分も多いし、フリーランスだから産休・育休の制度もない。仕事が無くなったらどうしよう、ちゃんとその子の良いように育ててあげられるだろうか、そもそも自分に育児ってできるんだろうか、などと不安な思いが走馬灯のように駆け巡りました。
とはいえ勿論、産むことへの迷いはまったくなかったですよ。すぐに夫に伝えて、喜んでくれてからは、二人で“やるしかないっしょ!!”と気持ちを切り替えられて、不安は自然とやわらぎ、“何が起こっても、その状況でできる方法を考えていこう”と覚悟が決まって、日に日に楽しみになっていきました。
——妊娠前は、ランニングや山登りなど、フィジカル面でタフなお仕事も多かったですよね。
はい。それも妊娠したときの不安のひとつでした。そういうお仕事がしにくくなることはもちろん、自分のイメージが変わってしまうことへの抵抗も大きかったです。
でも私は幸い、つわりが軽く、自分で想像していた以上に妊娠中にできることが多かったんです。実際に「妊婦って体調悪いんでしょう?」と決めつけられてしまうような発言を受けたことが悔しくて、元気な妊婦もいるんだよ、と知ってもらうためにも、楽しんでいる様子を積極的に投稿していた気がします。
するとハードな運動を避けるようになってからも、「こんなにアクティブな妊婦さん見たことがない!」と言われることが多くて驚きました。マインドやライフスタイルでも元気なイメージを持ってもらえるんだ!というのは発見でしたし、“今までとは違う形でも、変わらずに好きなことをやっていこう”と、ポジティブに考えられるようになりました。
見た目の変化も、お腹がぽっこり膨らんだ姿って可愛いな、と思って結構アゲでした!(笑) あえて体のシルエットが引き立つ服を着たりして、妊婦ならではの体型を楽しんでいましたね。
妊娠を機にラジオ番組を降板。これっておかしくない?
——実際にキャリア面では、2年以上パーソナリティーを務めてきたラジオ番組を降板するなど、変化がありましたね。
妊娠が発覚してすぐに局へ報告したところ、妊娠6カ月を目処に降板が決まりました。実力が足りないと言われるなら仕方ないけれど、妊娠を降板の理由にされたことは本当に理解できなかった。悔しさと怒りで涙が溢れ出てきました。
——当時、悔しさをSNSや番組内でも発信していましたが、とても勇気のいることだったと想像します。
番組のスタッフさんやマネージャーさんなど、多くの人の支えがあったおかげです。これまで生放送のラジオでも、いつでも正直に話してきたし、今後、同じようなことで悲しむ人を作らないためにも、社会を変えるためにも丁寧に発信しよう!と。もちろん不安もあったけれど、「おかしい!」と同調してくれる人がたくさんいましたし、“今後も疑問に感じたことは、声を上げていこう”と改めて思いました。
マタニティブルーで涙腺が崩壊。電車の中で号泣したことも(笑)
——今だから言える、つらかった時期のことも教えてください。
気分のアップダウンはありましたね。特に7カ月目くらいの頃は、マタニティブルーだったんだと思います。「育児は大変」みたいな記事やSNSをたくさん見すぎて不安になっていましたし、ある日電車で席を譲ってもらったときに号泣してしまったこともありました。
電車で立っているのがしんどくて、席を探し回る自分が惨めに思えてきたときに優しくしてもらって、ぶわーっと涙が溢れて出てきたんです。さすがに自分でもおかしいな、と思って調べたところ、“これはホルモンの影響だ。マタニティブルーだな”と。そうやって自分を客観的に見ることができたら、すうっとラクになりました。
——SNSでは、ご自身が参考にした書籍をご紹介なさっていますね。
妊娠して、自分に知らないことがこんなにあるんだ!と驚き、単純に面白かったんです。小説も医学的な本もエッセイも、さまざまなジャンルの本を読んでいました。そのおかげで、緊急帝王切開になったときも心の準備ができていたし、自分にしかわからない心と体に起きている変化を、パートナーに説明することもできたかなと思います。
一方で、個人的には、産後クライシスのことや子育ての大変なエピソードなど、あまり知りすぎても不安が募ってしまう、マイナスな影響もありました。振り返ると、あれほど不安になる必要はなかったなって。
例えばですけど、「電車で赤ちゃんが泣き止まずに、乗客から怒られることもある」という体験談の多さに身構えていましたが、今のところは経験していないですし、むしろ街中でも人に優しくしてもらうことのほうが圧倒的に多いです!
夫の影響で日記をつけ始めたら、感情が整理されて、伝えやすく!
——読書以外に、妊娠を機に新たに取り入れたことはありますか?
妊娠の時期ではないですが、夫と交際を始めてから日記をきちんと書くようになりました。夫が毎晩欠かさず書いているので、同じ時間に自分もつけるようになって。その日に何があったか、というよりも、何にどう感じたかを主に書いていますね。書き出すことで気持ちの整理がついて、人に伝える際に役立っていると感じます。
量は日によるのですが、特別なイベントがなかった日のほうが深く考えていたりして、面白い。しょっちゅう読み直しています。子育てが始まってからも、毎日の成長が凄まじいので、こんなに愛おしくて面白い一つ一つのこと、記録しておかなきゃ!と思って頑張って書いています。
——パートナーとのコミュニケーションをとても大切にしていることが伝わってきますが、妊娠中、パートナーとの関係に変化はありましたか?
先ほども少し触れましたが、妊娠中、うれしいことでも些細なことでもしょっちゅう泣いていたんですね。日記を書きながらエモーショナルになって泣くのは日常茶飯事で、夫に将棋で負けただけで泣いてしまったことも(笑)。その度に夫は、「今どういう気持ちなの?」とちゃんと聞いて、笑ってくれて。
心にすごく寄り添ってくれたことはもちろん、家事だったり、あらゆる面でサポートしてくれます。もともと不安はそんなにありませんでしたが、彼の優しさをより感じられて、もっと好きになりました。
——素敵な関係ですね! 妊娠中に経験したさまざまな変化や経験を振り返っていただきましたが、改めて感じたことや、伝えたいことがあれば教えてください。
妊娠中の体の変化も考え方も、すごく個人差があるなと改めて感じました。今の時代情報がすぐに得られますが、“こういうことも起き得るけど、人による”と、適度に客観視することも必要なのかな、と。最終的には、自分の感覚を信じるのがベストだと思います。
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撮影/岡本俊 スタイリング/藥澤真澄 ヘアメイク/蔵本優花 取材・文/中西彩乃 構成/渋谷香菜子