神奈川県生まれ。1982年「私の16歳」で芸能界デビュー。以降、歌手、俳優としてテレビや映画、舞台で幅広く活躍。2015年より代表を務める「株式会社明後日」では、プロデューサーとして舞台や音楽イベントなどの制作も手掛ける。文筆家としても定評があり、『黄色いマンション 黒い猫』では、講談社エッセイ賞を受賞。Spotifyオリジナルポッドキャスト『ホントのコイズミさん』にてパーソナリティを務める。新刊『ホントのコイズミさん NARRATIVE』発売中。https://303books.jp/hontonokoizumisan-narrative/
人生って仕事だけじゃない。ほかの楽しみで心を埋めてもいい
——仕事が忙しくなり、また歳を重ねることによって、よくも悪くも世間に対して諦めることが増えてきてしまいました。「20代の頃はもっと世の中にアンテナを張ることができていた気がするのに、私ってつまらない人間になってしまったのだろうか」と、悲しくなります。小泉さんはそんな経験ありますか?
小泉さん:ないです(笑)! 瞬間的に悲しくなったり、虚しくなったりみたいなのは、生きていれば誰でもありますよね。でも、私には幼い頃からずっと仕事があったからね。仕事のおかげで、その悲しい気持ちが長く続かずに済んでいたのかもしれない。
それこそお酒をバケツ一杯分飲んで、また浮上するっていう。あと罪悪感をよく利用していましたね。バケツ一杯分もお酒を飲んだら、当然次の日はつらいじゃないですか。だけど、それは自分が悪い。その罪悪感を利用して「ちゃんと生きなきゃ」と奮い立たせるんです。いつもふざけているような回答でごめんなさいね(笑)。
——普通に生きているだけでモヤモヤすることは多いけれど、30代はそれを上手に飲み込めるようになってきて、そこにまたモヤモヤしている気がしますね。
小泉さん:上の構造が変わらない限り、諦めるしかないってことがすごく増えちゃってますよね。昔はもっと日本も経済的に余裕があったから、いろいろかいくぐって面白いことができたけど。今は難しいかもしれないね。でも人生って仕事だけじゃないから。ほかの楽しみで心を埋めてもいいと思いますよ。推しがいたり、趣味があったりするだけでも人生ってちょびっと輝くから。推しのコンテンツが配信されただけでも、その日1日が楽しいよね。
「自分が楽しいと感じること」に真っ直ぐに生きる
——ラクなほうに流されず、つねに自分らしくいるために心がけていることはありますか?
小泉さん:自分らしくやっていると「変人」ってよく言われます。それに抗わず、受け入れることが一番のコツです。「だって、自分が楽しいと感じることをしていたいんですもの」という精神を持つことがとても大切。
あとは、自分が幼かった頃に楽しいとか、キレイだとか感じたことをひとつの指針にしてみるのも意外といいのかも。小さな頃、人魚姫を読んだときに、「死」という存在が怖いものではなく、とてもキレイなものに思えたんですね。だから、人生って死に向かっているけど、それは完成に近づいていると今でも思ってるの。そういう感覚を大事にしてる。
もちろん、流されたほうがラクだという局面では、流されたフリをしてもいいと思う。つねに自分をさらけ出す必要はないですよね。組織にはルールがあるし、その殻を破ることってとても難しい。
30代で踏み出した一歩は、20代の頃の自分も救ってあげられる
小泉さん:だから私、独立したんですよ。もう一度自分がやりたいことに向き合えば、のびのびやるチャンスは巡ってきます。50代でもまったく遅くない。独立してから、仕事がすっごく楽しい。個と個の関係で前に進んでいくし、自分でジャッジできる。せっかく独立したんだから、自分がやりたくないことや、制約があるような仕事はしないと決めています。自分が素敵だと思うものにしか出たくない。
「このゾーンを歩くぞ」って決めると、その土台がどんどん強くなってきて歩きやすくなるんです。横を歩いている仲間を、見つけやすくなりますよ。
——20代の頃は30代、30代になったら40代や50代と、ずっと未来の自分のために修行を続けている感覚です。人生これでいいのでしょうか?
小泉さん:そう、それでいいんです。人生は修行ですよ(笑)。生きている限り結果なんて出ないのよ。でも、30代の私が頑張って一歩を踏み出したら、20代の頃に頑張っていた自分を救ってあげられると思うんです。
時間軸は縦だけじゃなくて横にものびていると思うと、今の自分が勇気を出すことで、過去の自分もこれからの未来の自分もラクにしてあげられるんじゃないかな。そう考えると修行もすごく楽しくなってきますよ。
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撮影/松岡一哲 ヘア&メイク/石田あゆみ スタイリスト/藤谷のりこ 取材・文/高田真莉絵