前人未到の17回連続で雑誌『Popteen』の表紙を飾るという記録を作り、カリスマギャルとして一時代を築いた“くみっきー”こと舟山久美子さん。「とにかく自分に自信がなかった」16歳の女の子が、ギャルマインドを得て本当の「自分」を取り戻すまでの歴史を語ってくれました。国際女性デーを記念したスペシャルインタビューとしてお届けします。

舟山久美子  くみっきー インタビュー

舟山久美子
舟山久美子

1991年生まれ、東京都出身。雑誌『Popteen』の専属モデルを6年間務める。2023年にスキンケアブランド「Herz skin」を立ち上げ、プロデュース業にも取り組む。二児の母。

自分のルーツに自信を持てなかった私が、「ギャル」になって自分を愛せるように

舟山久美子  くみっきー インタビュー 2

——くみっきーさんは、“平成ギャルの神”と呼ばれていたこともあり、ギャルブームを作ったお一人でいらっしゃいます。当時はどのような心境だったのでしょうか。

舟山さん:芸能界で活躍している方々は、モチベーションを持って、この世界に入られる方が多いと思うのですが、私はひょんなことがきっかけで迷い込んでしまったんです。

——ひょんなことというと?

舟山さん:全国のギャルサーが集まるコンクールのようなものがあったんです。私の知らないうちに友人がそのコンクールに応募してくれていて。そこでグランプリをとったことがきっかけで、モデルとしての活動を始めました。

モデルとしてあれよあれよと雑誌『Popteen』の表紙を飾るようになってからは、ファンの方々から「くみっきーの笑顔を見られたから学校に行けそう」とか「明日の手術頑張れそうです」といったメッセージをもらえるようになって。そのとき初めて、「モデルという仕事は、他人の人生にかかわれる素晴らしい仕事なんだ」と気づきました。

そこからは、求められているもの以上の結果が出せるように、無我夢中で走り続けてきた感覚です。当時は本当に忙しくて、カリスマギャルと言われて天狗になる暇もなかったです。

『Popteen』は私たちモデルも企画立案に参加できたので、一緒に雑誌を作り上げている気持ちになれて楽しかったし、達成感がありました。自分の名前が入った企画が読者に好評だったときや、人気モデルランキングで1位になれたときのうれしさはいまだに覚えています。

舟山久美子  くみっきー ポートレート

——「ギャルになりたい」と意識したのはいつ頃からですか?

舟山さん:小学生高学年か中学生になった頃から、ギャル雑誌を読み込んでいました。雑誌を参考にメイクをしてみたり、髪を切ったり、それをきっかけに友達ともコミュニケーションがとれるようになっていきました。当時は人見知りなうえに赤面症で人と話すことが苦手だったけれど、ギャルになることで強くなれている気がしたんです。

——自分に自信が持てなかったのには何か理由があるのでしょうか?

舟山さん:母がフィリピンにルーツを持っていることを同級生から揶揄されたり、父親が高齢だったのを気にしちゃったり。子どものときにまわりの声が怖くなって、どんどんコミュニケーションが苦手になっていってしまいました。苦手意識を持つと、さらにどんどん喋れなくなってしまって。自分に自信が持てなくなってしまったんです。

舟山久美子  くみっきー フェムケア

当時は「見た目で判断しないで!」という気持ちがあった。今、朝ドラの主人公がギャルなんて

——人とコミュニケーションを上手にとれず、自信がなかったくみっきーさんが、ギャルになることで変わっていったのでしょうか?

舟山さん:ギャルメイクをしていると自信が湧いてきて、引っ込み思案な部分が薄れていく感覚がありました。またモデル活動を通じて、読者の方からメッセージをもらえたことで、社会に還元できている実感を持てたのが大きかったんだと思います。

——NHK連続テレビ小説『おむすび』でもギャルが主役です。今、改めてギャルが注目されていることをどう感じていらっしゃいますか?

舟山さん:ギャルって、普通の枠から外れた人というイメージを持たれていたので、当時は「見た目で判断しないで!」と伝えたい気持ちがあったし、そんな世間のイメージを覆したくて頑張っていた部分もあります。なので、多くの方々が観る朝ドラの主人公がギャルなんて、と驚きました。こんなこともあるんですね。

舟山久美子  くみっきー ギャル

——「ギャルマインド」って、具体的にどのような考えなのでしょうか?

舟山さん:いろいろな考えがあるとは思いますが、「失敗を失敗と思わない」のがギャルマインドなんじゃないかな。後先考えずに、すぐ行動して細かいことはあまり気にしない。大人になって、行動力のある方にお会いして話を聞いてみると、元ギャルなことが多いんです(笑)。

——現在のくみっきーさんもそのギャルマインドはお持ちですか?

舟山さん:もちろん! 「迷ったらやる」がモットーです。今、化粧品の開発に携わっているので、肌にいいと聞いたものは後先考えずに試しています。

自信がなくておどおどしてて、大人の言いなりだった私が、どんどん見た目も派手になって、性格が明るくなり、行動も大胆になっていったので、家族はさぞびっくりしたと思います。

特に父は厳しい人だったのでギャルになることはもちろん、モデル活動をすることに反対していたのですが、『Popteen』の表紙を飾らせてもらえるようになった頃には、やっと認めてくれました。うれしかったですね。 

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撮影/原 楓 ヘア&メイク/金澤美保 スタイリスト/伊藤ミカ 取材・文/高田真莉絵 構成/渋谷香菜子