シャンプー中やドライヤーのときに、髪の毛がたくさん抜ける。なんだか最近、抜け毛の量が増えているようで気になる——。実はこんな声が、加齢による頭髪の変化を意識しはじめる40代50代だけでなく若年層にも増えているんだとか。頭髪治療を専門とする「Dクリニック新宿」の小山太郎院長によると、ストレス過多や睡眠時間の減少、生活習慣の乱れなどから、抜け毛や薄毛を気にする人が増加しているとのこと。『ロッテ』が実施した「ガム咀嚼と毛髪に関する研究」をもとに、薄毛・抜け毛対策として有効な方法を小山先生に教えてもらいました。

小山太郎 先生

Dクリニック院長

小山太郎 先生

2001年慶應義塾大学医学部卒。慶應義塾大学形成外科を経て2009年に「Dクリニック東京」(旧城西クリニック)に入職。以来、AGA(薄毛)の診療実績を積み上げてきた。診療の傍ら毛髪の研究に取り組んでおり、つねに最新の知見に基づいた診療を心がけている。2021年より「Dクリニック新宿」院長に就任。日本臨床毛髪学会評議員、日本メンズヘルス医学会幹事なども務めている。 

薄毛・抜け毛の気になる率は20代男女が最多!

現在、薄毛・抜け毛が気になるか?

チョコやガムなどのお菓子でおなじみの『ロッテ』は今年、全国の20〜50代の男女を対象にした「頭髪に関する意識調査」を実施しました。その調査結果によると、「現在、薄毛・抜け毛が気になりますか?」という設問に対して「とても気にしている」「気にしている」「少し気にしている」を合わせた“少しでも気にしている”人の割合は、20代男性がもっとも多く37.4%。ついで、20代女性が33.6%。意外にも、40代50代よりも若年世代のほうが、薄毛の悩み、将来的な心配を抱えている人が多いことがわかりました。

*【頭髪に関する意識調査】ロッテ調べ 調査方法:WEBアンケート調査(全国) 有効回答数:398名 調査対象:全国の20~50代男女 調査期間:2022年9月10日~9月11日

薄毛や抜け毛の予防、対策をどの程度おこなっていますか?

薄毛・抜け毛の予防、対策として年間にどのくらいの費用をかけているか

これまでは加齢に伴う悩みとして高齢者が気にするものと思われていた薄毛・抜け毛への不安が、世代を超えて若者にも広まっている一方で、「対策をまったく行なっていない」という人が半分以上という実態も判明。薄毛・抜け毛と聞くと、専用のシャンプーや育毛剤の使用が必要だったり、専門クリニックでの治療といった対策が思い浮かぶためか、経済的な負担を懸念して踏み込めない人が多いのかもしれません。

ガムを噛むことが、薄毛・抜け毛対策になる!?

薄毛予防に頭皮血流を上げることが重要という情報を知っていますか?

小山先生によれば「薄毛の初期段階では、頭皮の血流が低下している」ことが報告されているそう。頭皮血流の改善は、毛髪の健やかな成長につながり、薄毛も予防できる可能性があるのです。しかし、頭皮血流の改善が薄毛予防になることをそもそも知らない人も多く、今回の調査でも4割弱の人がこの情報を知らないという結果に。

「私は13年間、加齢に伴う薄毛の診療に携わっていますが、抜け毛の増加と併せて、肩こりや冷えといった末梢の血流低下を示唆する症状を呈する患者さまに遭遇することがあり、頭皮血流の低下は薄毛進行の一因となりうると考えています。また、頭皮血流の改善が期待できる頭皮マッサージによって、毛が太くなるという報告があることから、頭皮血流をよくすることが薄毛・抜け毛の予防に有用な可能性があると考えます」と小山先生。頭皮血流の低下は、薄毛や抜け毛だけではなく肩こりや疲れ目などにもつながる可能性があるため、日常でできる対策を講じる必要がありそうです。

ガム咀嚼の頭皮血流への影響

【研究方法】対象:25~53歳の健常な男女20名(平均年齢35.3±9.1歳、男性10人 女性10人) 方法:対象者全員がガム咀嚼時と無咀嚼時の頭皮血流(前頭部、頭頂部)を測定し、安静時からの変化を比較 薬理と治療(2022年50巻9号、1605-1609)

『ロッテ』が過去に行なった研究では、ガム咀嚼習慣が多い人は少ない人に比べて、頭頂部の髪の毛の太さ(毛髪径)が有意に太いという結果が出ました。その因果関係についてはまだ証明されていませんが、ガムを噛むことが頭皮の血流に影響するのではないかと考え、今回改めて研究を実施。25歳〜53歳の健常な男女20名に対し、ガムを噛んでいるときと何も噛んでいないときの頭皮の血流(前頭部と頭頂部)を測定したところ、ガムを噛んでいるときのほうが頭皮血流が増加することが確認されました。ガムを噛むことで咀嚼筋の収縮が起きたり、口腔まわりの刺激によって顎動脈の血流が増加した結果、頭皮の血流アップにもつながったと考えられます。つまり、ガムの咀嚼が薄毛・抜け毛予防になる可能性があるということ!

老若男女の顔イラスト

「手軽に行える頭皮の血流改善方法として、私自身は1日1回しっかりお風呂につかること、頭皮を傷つけない程度の力で頭皮マッサージをすることを実践しています。今回のロッテの研究成果をふまえて、いつでもどこでもできるガム咀嚼も今後注目していきたいと思います」(小山先生)

小山先生が提案する毎日しっかり湯船につかることや頭皮マッサージに加えて、ガムの咀嚼は通勤時やデスクワーク中など“ながら”でもできる簡単さが利点。もしも頭皮や頭髪に悩みがあるなら、自分のライフスタイルに合わせて気軽にできそうな薄毛・抜け毛対策(頭皮血流の改善)を取り入れて、健康的な髪をキープしたいですね。

構成・文/政年美代子 Illustration by KathrynSK / DigitalVision Vectors   資料提供/ロッテ