健康的かつ満足感のある食事法として注目を集める、「地中海式ダイエット*」。SNSでも「#mediterraneandiet」のハッシュタグで、全世界の人がレシピや食事の写真をアップしています。ではそもそも、「地中海式ダイエット」とはどんな食事法なのか? 正しいやり方からメリット、おすすめの食材などを専門家に伺い、エディターが実践してみました!
*ここでは「食事法」の意味でダイエットという言葉を使います。
管理栄養士
10代で摂食障害を経験したことから、食べることと心の結びつきを体感し、管理栄養士に。栄養カウンセリングやレシピ開発、コラムの執筆など、食と栄養にかかわるさまざまな仕事に携わる。現在は、不妊治療中の女性に向けて食からのサポートを行う「生殖食事アドバイザー」として、不妊治療専門のクリニックと提携し、セミナーやカウンセリングを行っている。
「地中海式ダイエット」とは?
「地中海式ダイエット(食事法)」とは、南イタリアやギリシャなど、地中海沿岸の地域で伝統的に食べられていた食事や食事習慣のこと。日本では「ダイエット」と聞くと、“痩せる方法”を意味する言葉ととらえられることが多いですが、本来は「食事法」という意味です。アメリカのアンセル・キーズ博士によって、1950年代に提唱されました。
戦後のアメリカでは、肉やバターなど、動物性脂肪が中心の食事が多く、心筋梗塞などの動脈硬化を基盤とする心血管障害の患者が増えていたそう。一方、地中海沿岸では、心血管障害にかかる人が少なかったことから、その違いが研究されはじめ、結果としてこの食事法が見出されました。
日本では、1996年頃からオリーブオイルの輸入量が急増しているので、その頃から地中海式ダイエットが注目されはじめたことが窺えます*。現在も、世界中でさまざまな疫学研究に使われていて、「地中海式の食事をすることでどんな病気にかかりづらいか」などの科学的根拠が、きちんと実証されています。
*横浜関税 オリーブオイルの輸入
「地中海式ダイエット」の特徴は?
論文で定義されている、「地中海式ダイエット」の内容*は以下の通り。
*Willett WC, Mediterranean diet pyramid: a cultural model for healthy eating. Am J Clin Nutr. 1995 Jun;61(6 Suppl):1402S-1406S.
「地中海式ダイエット」の特徴
●植物性食品(果物、野菜、穀物、芋、豆、ナッツ)を多くとる
●デザートに新鮮な果物を食べる
●油脂類として主にオリーブオイルを用いる
●少量もしくは適量の乳製品(主にチーズとヨーグルト)を食べる
●魚や鶏肉は、少量から中程度の量を食べる
●卵の摂取は週に4個未満
●赤身肉の摂取はできるだけ少量に
●少量か適量のワインを食事と一緒にとる
日本人にも取り入れやすいように、榊先生が提案している「地中海式和食」では、オリーブオイル以外に「オレイン酸」などの一価不飽和脂肪酸が比較的多く含まれ、日本人が使いやすい、なたね油やこめ油を使ってもOK。またそのほか、デイリーに使う油として、魚の油に含まれている脂肪酸と同じ分類の「αリノレン酸」が多い、あまに油やえごま油(しそ油)を加熱をしない料理に使うのもおすすめ。
低炭水化物ダイエットが流行っていますが、しっかりと炭水化物を摂ることも地中海ダイエットの大切な要素です。ピラミット上にあるものほど摂取量が少なくていいもので、下にあるものほど健康な生活の基盤になるもの、という見方になっています。
榊先生が提案している、日本人にも取り入れやすい「地中海式和食」のピラミッド
今日からできる「地中海式ダイエット」のやり方
本場「地中海式ダイエット」の内容を踏まえて、日本食が多い方でも毎日の食事に取り入れやすい、具体的な方法を紹介します。
① 野菜350g(毎食、生の状態で両手に1杯)、果物200g(片手に1つ分)を目安にとる*
日本人が一日の平均で摂取する野菜の量は、20~29歳の女性で222.6g、30~39歳の女性で239.5g、果物の場合、20~29歳の女性で46.9g、30~39歳の女性で43.9gと、推奨されている量に達していないことがほとんど*。果物は、果糖を心配される方がいますが、ビタミンやミネラル、食物繊維も一緒にとれるので、適量であれば心配する必要はありません。価格的にも栄養的にも、季節の野菜や果物をとるのがおすすめです。
*厚生労働省, 国民健康・栄養調査(令和元年)
② 全粒粉穀物の量を増やす
穀物はなるべく、全粒粉穀物をとるようにしましょう。穀物とは小麦や米などのイネ科の植物の種子で、「胚芽」「胚乳」「外皮」から構成されていますが、私たちが普段よく食べている白いご飯やパン、麺類は「胚乳」の部分だけの精製されたもの。「胚芽」や「外皮」が取り除かれていない、玄米や全粒粉を意識して食べるようにしましょう。最近よく見る、オートミールも、燕麦(オーツ麦)を丸ごと加工したもので、全粒粉穀物に含まれます。
【こんな置き換えが可能】
・白米→玄米、発芽玄米、分付き米(玄米を何割か精米したもの)、押し麦入り白米、もち麦入り白米などに
・パン→全粒粉パン、ライ麦パン、玄米パン、胚芽パンなどに
・ラーメン・うどん→そばに(なるべく小麦粉より、そば粉の多い物)
・パスタ→全粒粉パスタに
③ 肉よりも魚を意識して食べる
魚はどんなものでもかまいません。貝や甲殻類、タコやイカなどもよいでしょう。肉を食べる場合も、牛や豚より鶏肉のほうが好ましいとされています。
④ 大豆を意識してとる
日本人になじみのある納豆や、スーパーで簡単に手に入る蒸し大豆もおすすめです。カレーや煮込み料理、サラダなどにかければ、手軽に大豆を食べることができます。
⑤ おやつはお菓子よりもナッツや果物をとるようにする
お菓子には、バターやパーム油などの飽和脂肪や砂糖がたっぷりと含まれているものもあるので、小腹が空いたらナッツや果物をとるようにしてみましょう。会社や外出先では、手軽に食べられる冷凍フルーツやカットフルーツを利用するのも手です。
⑥油をオリーブオイルやこめ油、なたね油に切り替える
和食にオリーブオイルが合わない場合は、「オレイン酸」が比較的多く含まれる、こめ油やなたね油もおすすめ。魚の油に含まれている脂肪酸と同じ分類の「αリノレン酸」が多いあまに油やえごま油(しそ油)もよいです。
⑦ アルコールは多くてもビールのロング缶1本以内に
お酒を飲む場合は、ビールのロング缶一本以内程度に。厚生労働省*では、お酒を飲む量が1日平均純アルコール量20g=ビールのロング缶1本以上になると、生活習慣病のリスクが高まるとしています。
*厚生労働省, 習慣を変える、未来に備える あなたが決める、お酒のたしなみ方 女性編
「地中海式ダイエット」をエディターが実践!
ここからは、以上の方法を踏まえて、エディターの種谷が「地中海式ダイエット」を実践した様子をお届けします。料理は大変苦手でまったく凝ったものは作れないのですが…今回は、榊先生が提案する、日本食にも取り入れやすい「地中海式和食ダイエット」にトライしてみました!
① 野菜350g(生の状態で両手に1杯)、果物200g(片手に1つ分)を目安にとる*
野菜はなるべく季節の食材を、1日につき両手一杯分、とのことでした。スーパーにブロッコリーとカブがあったのでこちらを購入。オリーブオイルとニンニクで炒めました。
② 全粒粉穀物の量を増やす
普段の白米を、今回は『BIO-RAL』で購入した玄米と十六穀米ご飯に変更。レンジで温めるだけなので、ご飯を炊く時間がない日などは、こちらを愛用しています。
③ 肉よりも魚を意識して食べる
スーパーでメカジキを購入。バターをたっぷりと使いたいところですが、今回はオリーブオイルでソテーし、塩胡椒で味つけました。
④ 大豆を意識してとる
豆には納豆をセレクトしました。お味噌汁に豆腐を入れたり、厚揚げの煮物にしてもよいかもしれません…!
⑤ おやつはお菓子よりもナッツや果物を摂るようにする
普段、あまり果物は食べないのですが、「1日に片手一杯分のフルーツ」が推奨されているため、今回は旬の苺を購入しました。
⑥油をオリーブオイルやこめ油、なたね油に切り替える
オリーブオイルは、料理研究家の有元葉子さんが運営するオンラインストアで購入した、「マルフーガ DOP EXV オリーヴオイル 750ml」を使いました。青っぽい爽やかな風味が個性的で、どんな料理にもかけたくなるため、「地中海式ダイエット」向きかもしれません!
並べてみるとこんな感じ。想像していた“地中海の感じ”とは違いますが…でも、彩りもあって健康的な感じがします。
外出先では…
外出先では、会社の近くにあるスーパー『成城石井』で、先生のアドバイスに近いお惣菜を購入してみました。「あさりと春キャベツの十六穀米スープご飯」では、野菜、魚介類、全粒粉入りの穀物がとれます!
中身はこんな感じ。けっこうあさりがたくさん入っています。
小さいサラダも購入。気持ち程度に大豆がとれそうです!笑
「地中海式ダイエット」をやってみて
「地中海式ダイエット」と聞いて、“豪華でテクニックが必要な欧米の料理”というイメージがありましたが、①〜⑦の方法をいつもの食事に意識して取り入れるだけで「地中海式ダイエット」のいいとこ取りができるなら、毎日続けられそうな気がしました! 気になった方は、ぜひ試してみてください。
取材・構成・文/種谷美波(yoi) 画像/shutter stock