月経困難症などに用いられる「ピル」。言葉は知っていても、どんな薬なのか知らない人も多いのでは? 今回は、産婦人科医の高橋幸子先生に、知っておくべきピルの副作用について伺いました。

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Q.ピルを飲んでみたいけれど、副作用が心配です。どんなリスクがありますか?

お話を伺うのは…
高橋幸子先生

性教育産婦人科医

高橋幸子先生

埼玉医科大学医療人育成支援センター・地域医学推進センター助教、埼玉医科大学医学教育センター、埼玉医科大学病院産婦人科助教を兼任。「サッコ先生」の愛称で、全国の小学校・中学校・高等学校にて年間120回以上の性教育の講演を行う。著書に『マンガでわかる!  28歳からのおとめのカラダ大全』(KADOKAWA)『自分を生きるための〈性〉のこと-性と生殖に関する健康と権利(SRHR)編』(少年写真新聞社)など。

A.ピルには、吐き気や頭痛、血栓といった副作用の可能性があります

さまざまな利点があるピルですが、薬なので他の痛み止めなどと同様に副作用があります。

●吐き気、頭痛、むくみなど
ピルを服用し始めて最初の1〜3カ月は、吐き気や頭痛、むくみ、乳房の張りといった副作用が出ることがある。それらの症状は、ピルを飲み続けているうちに自然と治ることがほとんど。ただ、副作用には個人差があるので、気になる場合は無理をせず医師に相談を。

●血栓
血管を塞いでしまうような小さな血の塊ができる「血栓症」のリスクが少し上がる。ごく稀な副作用ではあるが、喫煙者はリスクが上がるため特に注意が必要な場合も。

覚えておきたいピルの副作用のサイン「ACHES」

ピルを飲む人は、飲まない人よりもほんの少しだけ血栓のリスクが上がりますが、起こる確率は産婦人科医としてそれほど心配する必要のない数字だと思っています。というのも、血栓症のリスクは出産後の女性も上がりますが、ピルを飲んだ場合のリスクはその確率よりも低いからです。ただし、次の場合は他の人よりも血栓症リスクが高いので、念のため避けたほうがいいでしょう。

●予兆のある片頭痛がある人
●高血圧の人
●たくさん喫煙している人
●家系に若くして血栓症にかかったことがある人がいる場合


また、血栓症にはACHES(エイクス)と呼ばれる自覚症状があるので、そのサインを見逃さないことが大切です。

A:abdominal pain(腹痛)
C:chest pain(胸痛)
H:headache(頭痛)
E:eye disorder(視野障害)
S:severe leg pain(ふくらはぎの痛み)

これらの症状があったときは、体のどこかに小さな血栓ができている可能性があります。血栓は血流にのって全身をまわるうちに大きくなり、脳に詰まると脳梗塞、肺に詰まると肺塞栓症へと発展します。もしそういう症状があれば、早めに「Dダイマー」という検査を即日できる大きな病院へ行くことをおすすめします。

ただ、このわずかなリスクを心配してピルの服用を諦めるのはもったいないと思います。ピルには卵巣がんや子宮体がんの発生リスクを下げるなどのメリットもあります。リスクとベネフィットをじっくり比較して、自分の体のための選択をしてほしいなと思います。

構成・取材・文/国分美由紀 出典/『マンガでわかる!  28歳からのおとめのカラダ大全』(KADOKAWA)