セックスにまつわるモヤモヤについて、助産師兼・性教育YouTuberのシオリーヌさんと考える連載『SAY(性)HELLO!』。前編に引きつづき今回も、小学5年生と2年生の息子を持つ読者の花田さん(仮名)をお招きし、家庭でのリアルなお話を伺いました。異性の子どもとのスキンシップはいつやめるべき? 性教育におすすめの本は? など、シオリーヌさんに相談します。
やめどきが難しい、母親と息子のスキンシップ
花田 息子たちは乾燥肌なので、小さい頃から私が肌にクリームを塗ってあげたり、その流れで肩のマッサージをしたりしていました。ただ、最近夫から「もう少し身体的な接触を減らしていったほうがいいんじゃない?」と言われたんです。異性の親との距離が近すぎると、家族からの愛情と異性からの愛情を混同してしまう危険性もあると聞いたことがあるようで、控えめにしてほしいと。今は私ではなく、夫が子どもたちの体のケアをすることが多いですが、「なんで今日はお母さんじゃないの?」と不思議がるので、距離の置き方が難しいと感じますね。
シオリーヌ 私も子育てを始めて、赤ちゃんを抱っこしたり肌と肌を密着させてお世話している状態から、スキンシップの境界線をつくっていく難しさを実感しています。よく「お風呂は何歳まで一緒に入ってもいいですか?」と聞かれるのですが、子どもの頃は一人で入れないから一緒に入浴するわけで、自分のことが自分でできるようになったら、必要のないプライベートゾーンへの接触はやめていくのが基本だと考えています。でも、手をつないだりハグをするなど、親子の信頼関係を深めることにつながるようなスキンシップもあるので、私自身もまだ探り探りな状態なんです。
花田 夫に任せると完全にはケアできていないことも多く、結局肌が荒れてしまう、というモヤモヤもあって…。
シオリーヌ このタイミングで、自分のことは自分でケアする習慣をつくるように促してもいいのかもしれないですね。「クリームを塗らないと肌が荒れて、荒れるとかゆくなるんだな」と、自分で気がつくのも大切な学びになりますし。
花田 確かに。そういうタイミングなのかもしれないですね。
パートナーと性教育の分担、どうしてる?
──家庭によっては「性教育についてパートナーが協力的でない」など、夫婦間の意識のギャップもよく耳にします。花田さんは家庭での性教育を、夫婦間でどのように役割分担しているのでしょうか?
花田 息子たちへのスキンシップや男性特有の体の変化に関しては、基本的には同性である夫に任せています。息子も、母親から直接的に性教育を受けるのには照れがあるかもしれないと思って。反対に、生理や出産など女性の身体についての話題は、私から話すようにしていますね。
シオリーヌ パートナー同士で役割分担ができているんですね。一方で、性教育のイベントに登壇して感じるのは、圧倒的に父親よりも母親の参加者が多いということ。男性のパートナーに相談しても「まだ幼いから大丈夫」「自然に学ぶものだから」と、性教育に後ろ向きな反応が少なくないと聞きます。
この差について私が感じるのは、女性のほうが性教育に危機感を持ちやすい背景があるのかもしれないということ。意図しない妊娠への不安や、性暴力を身近に感じたことのある経験などから、お子さんの性別にかかわらず、「加害者にも被害者にもなってほしくない」という課題感を抱きやすいのではないかと思っています。だからこそ、父親にも性教育の必要性を感じてもらうためのアプローチも、より考えていかなければいけないですよね。
シオリーヌさん推薦! 性教育におすすめの書籍5選
シオリーヌ 思春期の子どもに対して性の話を直接伝えづらいというときには、本をさらっと渡すという方法も。手に取りやすいマンガから、ジェンダーや人権についてじっくり学べる本までおすすめの5冊をピックアップしました。
『やらねばならぬと思いつつ〜超初級 性教育サポートBOOK〜 』
シオリーヌ 性の話に抵抗があったり、何から始めたらいいかまったくわからない方向けに作った1冊。「まずはこれだけ!」という心構えと、子どもから聞かれて困る質問への対応アイデア30個をQ&A形式で紹介しています。
やらねばならぬと思いつつ 〜超初級 性教育サポートBOOK〜 ¥1,650
シオリーヌ(大貫詩織・著)ゆままま(イラスト)/ハガツサ ブックス
『こどもジェンダー』
シオリーヌ 全編ひらがなとカタカナ表記で、小さなお子さんでも呼んでいただけます。自分の性のあり方や権利を大切にしてよいんだということを、わかりやすくまとめました。自分からは伝えにくい、というときにお子さんに渡してもらえたら嬉しいです。
こどもジェンダー ¥1,540 シオリーヌ(大貫詩織・著)村田エリー(絵)/ワニブックス
『おうち性教育はじめます一番やさしい!防犯・SEX・命の伝え方』
シオリーヌ 性教育を取り入れたい!と思ったときに手に取る「1冊目」におすすめ。親御さんが心がけるといいポイントを総ざらいしてくれているので、たくさんの学びが得られます。
おうち性教育はじめます 一番やさしい!防犯・SEX・命の伝え方 ¥1,430
フクチ マミ・村瀬 幸浩(著)/KADOKAWA
『これからの男の子たちへ「男らしさ」から自由になるためのレッスン』
シオリーヌ 「男の子」としてこの社会で生きていくなかで出会う困難について、じっくり学べる一冊。中高校生くらいにおすすめしたい内容で、親御さんが読んだあとに子どもに渡すのもよいと思います。
これからの男の子たちへ 「男らしさ」から自由になるためのレッスン ¥1,760
太田 啓子(著)/大月書店
『マンガでわかるオトコの子の性 思春期男子へ13のレッスン』
シオリーヌ 「包茎」や「マスターベーション」についてなど、思春期の男の子が抱えがちな悩みに、具体的な解決法を示してくれます。マンガでわかりやすく描かれているので、手に取りやすいと思います。
マンガでわかるオトコの子の「性 」 思春期男子へ13のレッスン ¥1,540
染矢明日香(著)村瀬幸浩(監修)みすこそ(マンガ)/合同出版
Conclusion
✔︎子どもが自分のことをできるようになったら、少しずつ境界線を意識して
✔︎パートナーと性教育の役割分担を話し合ってみる
✔︎性の話に抵抗がある場合は、書籍やマンガも上手く活用して
取材・文/平井莉生(FIUME Inc.) 撮影/REIKO MATSUNAGA 企画・編集/種谷美波(yoi)