自分の体について、どのくらい知っていますか? 自分をケアするためには、自分の体をよく知ることが必要です。また、他者とコミュニケーションを取る上でも、自分とは違う体について正しい知識をもっておくことが欠かせません。yoiでは、男性同士でも話題に上る機会が少ないという男性の体や性器にまつわる悩みやギモンを聞き込み調査。プライベートケアクリニック東京・東京院の院長である小堀善友先生にお答えいただきました。
Q30.高齢になるほど精子が劣化し、胎児に影響があるのは本当?
30個目のギモンは、【高齢になるほど精子が劣化し、胎児に影響があるのは本当?】。男性は精子が出る限りは生殖可能ですが、年齢を重ねるごとに受精に適した健康な精子は少なくなっていく。【Q29:精子の活動寿命はどれくらいですか?】の回答を踏まえ、精子の劣化や胎児への影響についても知っておきましょう。
A30.本当です
35歳を過ぎると男女ともに生殖能力は下がります
小堀先生:ヒトという動物は35歳を過ぎると生殖機能が低下していくため、女性と同じように男性も35歳を過ぎたら高齢と判断されます。男性機能の低下については個人差がありますが、【Q㉓:精液の量や濃さが変化する原因は?】で述べたように、1日に作られる精子の数と精液量は加齢とともに減少&精子の運動率は極端に下がるのです。また、高齢出産によって自閉スペクトラム症など発達障害のリスクや、小児がんのリスクが上がるといったデータも出ているため、何かしらの影響はあるという考えが広まっています。
男性が高齢になってからの子どもは、長生きする可能性がある!?
小堀先生:しかし近年は、発達障害やがんのリスクが上がる可能性はあるものの、子孫の健康状態にとっては悪いことばかりではないかもしれないという説もあるのです! 過去の研究論文で、精子の中にある「テロメア」の長さは、高齢になればなるほど長くなることが発表されました。テロメアは遺伝子の安定化を担っており、テロメアがなくなると細胞が死んでしまうため、細胞分裂の回数券のような役割が。つまり、長いテロメアを受け継いで生まれてくる子どもは長生きできるのではないかと考えられているのです。
しかし、基本的には男女ともに若いほうが、子どもができやすいことは事実であり、それぞれのライフスタイルに合わせて、子どもを望んでいる方々は男女ともに早めに検査を受け、妊娠に向けて最適な方法を選んでいくことをおすすめします。
プライベートケアクリニック東京・東京院 院長
日本泌尿器科学会専門医、日本性感染症学会認定医、日本性機能学会専門医、日本性科学会セックスセラピストなど多数の資格を保有。金沢大学医学部を卒業後、獨協医科大学越谷病院(現・ 獨協医科大学埼玉医療センター)の泌尿器科に勤務したのち、アメリカ・イリノイ大学に招請研究員として留学。2021年より、プライベートケアクリニック東京 東京院の院長を務める。主に男性性機能障害、男性不妊症、性感染症を専門にしており、ホームページのブログやSNSではメンズヘルスについての情報発信にも取り組む。著書に『泌尿器科医が教えるオトコの「性」活習慣病』(中公新書ラクレ)、『妊活カップルのためのオトコ学』(メディカルトリビューン)、『泌尿器科医が教える「正しいマスターベーション」』(インプレス)などがある。
取材・文/井上ハナエ 企画・構成/木村美紀(yoi)