自分の体について、どのくらい知っていますか? 自分をケアするためには、自分の体をよく知ることが必要です。また、他者とコミュニケーションを取る上でも、自分とは違う体について正しい知識をもっておくことが欠かせません。yoiでは、男性同士でも話題に上る機会が少ないという男性の体や性器にまつわる悩みやギモンを聞き込み調査。プライベートケアクリニック東京・東京院の院長である小堀善友先生にお答えいただきました。 

小堀善友(こぼりよしとも)先生

プライベートケアクリニック東京・東京院 院長

小堀善友(こぼりよしとも)先生

日本泌尿器科学会専門医、日本性感染症学会認定医、日本性機能学会専門医、日本性科学会セックスセラピストなど多数の資格を保有。金沢大学医学部を卒業後、獨協医科大学越谷病院(現・ 獨協医科大学埼玉医療センター)の泌尿器科に勤務したのち、アメリカ・イリノイ大学に招請研究員として留学。2021年より、プライベートケアクリニック東京 東京院の院長を務める。主に男性性機能障害、男性不妊症、性感染症を専門にしており、ホームページのブログやSNSではメンズヘルスについての情報発信にも取り組む。著書に『泌尿器科医が教えるオトコの「性」活習慣病』(中公新書ラクレ)、『妊活カップルのためのオトコ学』(メディカルトリビューン)、『泌尿器科医が教える「正しいマスターベーション」』(インプレス)などがある。

Q.包茎の種類と特徴、デメリットはありますか?

A.大きく分けると、仮性包茎、真性包茎、カントン包茎の3種類

小堀先生:男性は生まれてから思春期を迎えるまで、ペニス全体が包皮ですっぽり覆われた包茎状態です。体の成長に合わせて包皮の内側と亀頭の癒着が徐々に剥がれてくると、包皮が柔らかく伸びて動かしやすくなり、亀頭が露出できるように。

二次性徴を迎える思春期に男性器が発達してくると自然に包皮が剥けて、平常時でも亀頭が露出した状態=包茎ではない状態になる人がいます。ただし、ほとんどは思春期を過ぎても平常時は包茎のまま! 成人男性の包茎は「仮性包茎(かせいほうけい)」、「真性包茎(しんせいほうけい)」、「カントン包茎(かんとんほうけい)」の3つに分類されます。

【仮性包茎】
普段は亀頭が包皮で覆われているが、勃起時には露出が可能な状態。排尿やセックスなど機能的な影響はほとんどない。

仮性包茎


【真性包茎】

先端の包皮口が亀頭よりも小さく、亀頭をまったく露出することができない状態。亀頭を露出できない原因によってタイプが分かれ、亀頭と包皮内側が癒着して剥くことができない「癒着型」、包皮口が極度に狭い「強度絞扼型(きょうどこうやくがた)」、強度絞扼型よりもさらに包皮口が狭くかろうじて排泄できる程度の穴しか開いていない「ピンホール型」、これらのいくつかが複合している「混合型」がある。
 

真性包茎


【カントン包茎】

医学的には仮性包茎の「強度絞扼型」に分類される状態。勃起時に亀頭を露出することはできるが、包皮口が極度に狭いために亀頭の下部を輪ゴムでギュッと締め付けたようになり、包皮が腫れて鬱血状態になると痛みを伴う。また、平常時が包茎である人が包皮を無理やり剥いて亀頭を露出し、そのまま放置したところ元に戻せなくなってカントン包茎の症状が出るパターンもある。

カントン包茎

小堀先生:真性包茎とカントン包茎に関しては、排尿やセックスに支障が出やすいため手術することをおすすめします。主な原因はペニスに対して包皮が長く、包皮口が狭いことにあるため、余剰な皮を切り取って亀頭を露出しやすくする手術が有効です。ほとんどのクリニックは自費診療ですが、日常生活や健康上に不便がある場合は保険診療が適用されます。

また真性包茎とカントン包茎は包皮が剥きにくいことから、包皮内側をきちんと洗えず、恥垢という白っぽい汚れが溜まって「亀頭包皮炎(きとうほうひえん)」が起きやすくなります。普通に生活しているだけなら他人に迷惑をかけるものではなく、気にしすぎなくてもよいのですが、セックスの際にペニスに汚れがついたままだと、不潔に見えて嫌がられる可能性はあると思います。

Q.陰嚢のサイズに左右差があるのは問題ないですか?

A.片方だけ徐々に大きくなってきたならば病気の可能性あり

小堀先生:精巣の高さは左右差があり、気温などによって移動します。また、陰嚢の大きさにも、もともと多少の左右差はあります。大きさ…というより片方の位置が反対側に比べて垂れ下がっていることに悩む人もいますが、これはお腹から精巣につながる精巣拳筋が原因かもしれません。精巣拳筋は精巣が精子にとって快適な温度を保つために、睾丸が伸び縮みする際に使われるインナーマッスルのこと。運動や性的興奮などの外的要因でも位置が上下するので、そこまで気にする必要はないでしょう。

しかし、今までよりもどちらかの陰嚢が明らかに大きくなっている場合、何らかの病気が潜んでいる可能性が。痛みの症状がない疾患もありますので、左右差が出て心配になってきたら泌尿器科を受診しましょう。成人男性において、可能性として考えられる病気をいくつかご紹介します。

【陰嚢水腫(いんのうすいしゅ)】
睾丸内にリンパ液が溜まる病気。痛みが出ることはほとんどなく、体への悪影響はない。小児に起こりやすいが、成人男性にも起こり得る。

陰嚢水腫 男性器


【精巣上体炎(せいそうじょうたいえん)】

精巣上体が細菌感染などで炎症が起きる病気。睾丸全体が大きく腫れ、痛みや38℃以上の発熱を伴うことがある。

精巣上体炎 男性器


【精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)】

精巣から心臓へ血液を戻す血管(精索静脈)の弁が何らかのきっかけで機能せず、鬱血してコブができる病気。精子を作る造精機能が低下し、濃度・運動量の低下やDNA断片化など精子の質の悪化につながり、男性不妊症の原因のうち約30%はこの病気が占めると言われている。ほとんどの場合は無症状だが、稀に痛みの症状が出る人もいる。

精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう) 男性器


【精巣がん】

精巣にできる悪性腫瘍で、睾丸に腫れやしこりが生じる病気。痛みが出ることはほとんどないが、腫瘍内部に出血や感染症が起こると強い痛みを感じることが。発症頻度はおよそ10万人に1人と極めて稀で、20〜40代の比較的若い男性に多いのが特徴。発症時期が若いと進行も早いため、早期発見と治療が望まれる。

精巣がん 男性器

Q.ペニスの形は人それぞれですが、形によって機能的な違いはありますか?

A.機能的な違いはないので気にしなくてOK

Q2.ペニスの形は人それぞれですが、形によって機能的な違いはありますか?

小堀先生:根元から亀頭にかけて徐々に細い、全体的に太くて短い、陰茎の中間だけ太い、陰茎に対して亀頭だけが大きい…など、これまで診察を通してさまざまなぺニスを見てきました。私が現在不妊治療を専門にしているからかもしれませんが、これまでペニスの形についての悩みや症状を相談されたことはありません。人それぞれの形があるのは当たり前のことですし、健康や機能面に悪影響はないので気にしすぎなくて大丈夫

とはいえ、自分の心と体が成長していく過程で、他人との違いに敏感になってしまう時期は男女関係なく誰しもありますよね。私の印象だと、男性の若い頃に多い悩みの代表格は「仮性包茎(かせいほうけい)」です。平常時のペニス全体が包皮で覆われていても、勃起すれば亀頭を露出することができます。排尿もセックスも問題なく行えるため、健康的にも機能的にも問題ありません。

Q.ペニスの包皮は早いうちに剥いたほうがいい? 適切なタイミングはあるの?

A.“剥く”よりも“洗って清潔にする”ことを目的に!

Q.ペニスの包皮は早いうちに剥いたほうがいい? 適切なタイミングはあるの?

小堀先生:幼児期から自発的に包皮を剥く行為としては、泌尿器科医の岩室紳也先生が提唱し始めた「むきむき体操」が有名です。しかしこれは早いうちに剥くことではなく、“包皮を剥いてペニスを洗う習慣をつけてきれいにしておく”のが目的!

剥くことを目的にしてよく起こるトラブルは、男児の包皮を剥いてそのまま放置したら戻せなくなり、亀頭が鬱血するカントン包茎のような症状が出てしまって夜間救急に運ばれてくるケース。その場合、可哀想ですが強い痛みを我慢してもらいながら包皮を元の状態に戻すしか方法がありません…。

あくまでもペニスを清潔にすることを目的に、無理のない範囲で包皮を剥き、洗ったら元に戻すことを忘れずに! ただし二次性徴を迎えても自然に剥けず、包皮口が狭いことで日常に支障が出ているようならば別問題。状態によっては手術する必要があるかもしれないので、一度クリニックを受診してみるとよいでしょう。

Q.包茎手術にかかる費用や時間、リスクなどが知りたい!

A.手術は短時間ですが、費用とリスクはピンキリです

Q.包茎手術にかかる費用や時間、リスクなどが知りたい!

時間・費用は…時間は1時間ほど、金額は1~100万円と幅広い
小堀先生:包茎手術では包皮の余剰な部分や狭窄している部分を切り取ります。状態によって手術方法はさまざまですが、たいてい1時間程度で終了。費用に関してはクリニックごとに提供しているサービスが異なり、自費診療で5〜100万円ほど。保険診療の日帰り手術だと初診料や投薬料などを含めても1〜2万円程度で済みますが、大学病院で受けると一泊入院になる場合があり、入院費が別途加算されることがあります。ただ、ほとんどのクリニックは自費診療で対応していて、包茎手術は美容医療的な位置づけになっている印象ですね。

リスクは…金銭トラブル、手術後の機能的な問題が多発中
小堀先生:トラブルに発展するケースが多いことでしょうか。とくに金銭トラブルが非常に多く、例えば10万円の手術に合意して署名したものの、麻酔をかけてもう後戻りできない状態からオプション代金がどんどん加算され、最終的に50万円以上かかってしまった…なんてことが。それ以外にも、手術後に排尿障害や性機能障害といった機能的な問題が発生するケースも多々あるので、くれぐれもクリニック選びは慎重に! 不安だったらカウンセリング時点で何件か回ってみるのも良いと思いますよ。

取材・文/井上ハナエ 企画・構成/木村美紀(yoi)